ステークホルダーとの対話を通して、大丸有のありかたを見直しています。
未来のエネルギーとモビリティ
1000年つづく持続可能なまちづくりには、今後どのような技術を適用すればいいのか。特にエネルギーとモビリティについて、歴史を振り返りながら、未来のテクノロジーを見つめながら、どんな技術をどう利用すべきか。
5名の様々な分野の専門家の方々に、膝を詰めてご議論いただきました。(開催日:2009 年3月23日、開催場所:丸の内「エコッツェリア」

参加者プロフィール(敬称略)
- 青山俊介
- (株)環境構想研究所 代表、(社)日本プロジェクト産業協議会(JAPIC)環境委員長、(株)エックス都市研究所取締役特別顧問。環境技術のプロフェッショナルとして、大丸有のCSR活動を盛り上げるプロデューサーを務める。
- 飯田哲也
- NPO法人環境エネルギー政策研究所所長、(株)日本総合研究所主任研究員。自然エネルギーや省エネルギー推進についての政策提言など、自然市場におけるイノベーターとして活躍。主著に『北欧のエネルギーデモクラシー』など。
- 石川英輔
- 作家、江戸文化研究者、写真・印刷技術研究者。SF作家として独自の作風で活躍する一方、江戸時代の資源、エネルギー問題の研究者としても多数の著書がある。著書に『大江戸えころじー事情』『大江戸ボランティア事情』『SF西遊記』など。
- 岸村俊二
- (株)キシムラインダストリー 代表取締役。太陽光発電を利用した設備やモニュメントの企画・デザイン・設計・販売などを手がける。
- 小林重敬
- 東京都市大学 教授、NPO法人 大丸有エリアマネジメント協会 理事長。大丸有地区再開発計画推進協議会において、まちづくり計画に携わり、その実践や育成、メンテナンスなどのマネジメントを手がける。著書に『協議型まちづくり』など。
これからのエネルギー利用
「悪いエネルギー」と「無害なエネルギー」
モビリティとエネルギー
「エネルギーの構造を変える」
- 岸村:
今、太陽電池で電気自動車を充電するステーションの話をアメリカで進めています。
電気自動車の充電は、今の急速充電システムで充電するには、実は基本電力料が上がってしまいます。それよりも、常に太陽エネルギーで充電を満タンにしておいて、足りなければ10A、20Aの予備電源でチャージするような仕組みにすれば、基本電力料を上げることなく素早く充電できます。
私はそういった形の電気自動車システムを作りたいと思っているんですが、現在は現存の電力ありきのシステムなのでなかなか難しいですね。- 飯田:
電気というソースがエコだけでないということだけでなく、日本は電力というソースのシステムや組織構造が変わりにくいということも問題ですよね。
アメリカが急速に進めているスマートグリッド*2 も、日本ではあまり成功しないのではないかと思います。スマートグリッドは、グーグルが参入しているようにオープンソースのネットワーク構造でなければ成立しませんが、今の日本は直下型で支配的な構造をもっています。実は今、東京都がソース自体を変えることと、日本のエネルギー構造を根本から変えることを始めています。東京都は2020年までに、自然エネルギー比率を全電力使用量の20パーセントまで引き上げるという目標を打ち出しています。東京都は今まで他県につくられた原子力発電所を頼って自分達の電力をまかなっていましたが、地域の自然エネルギーを使用し、その地域に経済的リターンを戻すことでエネルギーを変えていこうとしています。
エネルギーを選ぶことで、エネルギーを変えていきましょうと。このように地方自治体からエネルギーの在り方を変えていくような形が出てきています。
*2 スマートグリッド=エネルギー安全保障や地球温暖化問題への対策を目的とし、情報技術によって電力伝送をおこなう技術のこと
- 石川:
- 私は、日本が乗用車文明を維持することはないと思うんです。私が今乗っている車は1500CCのいわゆる小型乗用車ですが、1.1トンの重量があるんですよ。70キログラム程度しかない人間が移動するのにそんなにも巨大な金属が動いている。高速道路なんか走っていると、世の中にこんなに無駄なエネルギーの使い方があるかと思いますよね(笑)。
- 小林:
- 東京都心の整理された公共交通機関網とその定時制は、世界に冠たる仕組みです。それを上手に活かしていくことが重要ですよね。東京都市圏の各沿線の駅拠点に多くの機能を集めて人々が暮らすようにすれば、公共交通機関だけで、かなりの交通がまかなえるんです。
まちのマネジメント
「現代の家守(やもり)として」
- 小林:
- リガーレ*3 で行っているエリアマネジメントは、実は江戸で展開していた仕組みなんです。
江戸時代に、たくさんの店を所有し貸していた大家さんは、そのエリアの管理はしていませんでした。建物の管理や、そこに住む人の面倒を請け負ってマネジメントするのは、家守(やもり)または家主と呼ばれる人たちでした。明治以降はそのような制度がなくなっていき、ひとつのビルをひとりの権利者が所有し管理するようになりました。
しかし、行幸道路の風の道などの大きな環境についての話は、大丸有地区全体としてビルの建て方を含めて考えていかなければ、個々のビルオーナーがおのおのいくら頑張って実現はできません。
また、もう少し小さな単位の環境の話では、古いビルを新しく建て替えるとエネルギー効率が上がりますが、それを個々にやっていたのでは最新技術を導入するにあたって限界があります。そこで、街区全体のエネルギーを背負う設備を整え、古いビルをサポートする仕組みをつくることによって街区全体としてのエネルギー効率を上げるという議論がされ、実践が始まっています。
そういう大丸有地区全体の環境と街区単位の環境を、ひとつのまとまりを持ってマネジメントしていく事の必要性を、私たちは江戸時代の家守から学んでいるんです。*3 リガーレ=NPO法人大丸有エリアマネジメント協会
- 青山:
- まちのマネジメントについて考えを進めた時、入居の企業や店舗、ビルのオーナーといった人たちと、どういうまちづくりをするのか、エリアマネジメントはどうするかをまちがつくられる段階から一緒に考えていかなければならないと考えています。
しかし、今はそういった話し合いがまちにどう反映されるかという面がまだまだ弱く、利便性や国際的な競争力の方が当然のように優先されてしまいます。逆に50年後の国際競争力とはなんなのか、ということを私たちから語ることができれば、その視点からまちづくりへも影響を及ぼせるとも思っています。
大丸有はビルや街区の中で何をやっていくかという枠組み作りについて、基本的な視点が出せていません。江戸の家守と現代技術の間で、そういったものを今後私たちから発信できるようになると良いですね。 - 岸村:
- ここ数年、特に去年からニューヨークで、グリーンビルディングがずいぶんと意識され、建築やリニューアルが進んでいます。
日本でグリーンビルディングを建てるとなると、LED照明など局所的なものに注目しますが、アメリカのグリーンビルディングの発想は、地下鉄を降りたらどのようにそのビルに入るか、から始まります。歩いてビルに入れると移動のCO2排出量は0キログラム、タクシーやバスを使う場合はCO2排出量は何キログラム、というところからランク付けされ、グリーンビルディングの評価が始まるんです。その上で採光システム、遮断、断熱、太陽光発電や、雨水、用水の利用など様々なプログラムを組み込んで評価を高める。
またビルをリニューアルする際に投資を集める場合は当然の条件としてLEED*4 を掲げなければなりません。こういったものを応用して地域全体での評点をつくり、オリジナルな枠組みにできるといいですね。
*4 LEED(Leadership in Energy & Environmental Design) 建造物の環境配慮基準
- 小林:
私たちは、時代に合わせて柔軟性を持ったまちづくりを展開していこう、と言っています。大丸有では、時代に合わせてまちづくりは変わっていくんだということを、地権者の皆さんが合意し協力してくださっています。これはとても重要なことです。
また、まちづくりにおいては多様性がとても大事です。大丸有のようなまちづくりが全部同じようにあっても、持続可能性はありません。いろんなタイプのまちがあって、それぞれがお互いの足りないものを付け合わせていくことで都心部の持続可能性につながるのではないでしょうか。大丸有がその発信地になっていけるといいですね。





















エネルギー問題というとたくさんありますが、要約すると人間の体にとって「悪いエネルギー」と「無害なエネルギー」の2つに分かれると最近考えています。かつては「老人病」と呼ばれ、60歳以降に現れていた動脈硬化、高血圧、糖尿病などの症状がどんどん若年齢化している。この原因は、1に高カロリー高脂肪の食事、2に運動不足、3に不規則な生活、にあります。この3つともエネルギーを過剰に使わないとできないことなんですよ。
1の食事については、今私たちは食べたいものを食べていますが、上質な食事をするためには、大量のエネルギーが使われています。日本は世界一フードマイレージ*1 の高い国で、大雑把な計算ではありますが、食べたものにはそのカロリーと同じくらいか、それ以上の運搬エネルギーが使われています。
2の運動不足に関しては、ここ約10年の間に駅にエレベーターやエスカレーターがどんどん設置され、まるでエネルギーを使って体をだめにする方向に社会を挙げて努力しているかのようですよね。
3の不規則な生活だって、電灯料金が10倍になれば、みんな早く寝るようになって解消されますよ。そんなに遅くまで起きている必要はありません。こういった、人間にとって過剰なエネルギーが「悪いエネルギー」です。体を悪くするためのエネルギーはできるだけ減らすべきです。
一方で「無害なエネルギー」というのも、いくらでもあります。デジタルカメラは良い例ですね。フィルムは、製造にも現像にも現像液の処理にもたくさんのエネルギーが必要です。ところがデジタルカメラは電池を充電するだけで記録ができますし、パソコンのハードディスクに保存しておけば必要なとき必要なだけプリントすれば良い。アルバムの整理も必要なくフィルムカメラの何百倍も便利であるにもかかわらず、消費するエネルギーは微々たるものです。
人間にとって有害なエネルギーをなるべく減らすことは、環境のためではなくアナタのためだ、と最近私は言っているんです。
*1 フードマイレージ=「食料の(=food)輸送距離 (=mileage)」を表し、輸入相手国別の食料輸入量重量×輸出国までの輸送距離で算出する。
これからは、電気自動車やハイブリッドカーでエネルギーを減らすのか、それとも人が歩くことや自転車のシェアリングといった行動からエネルギー消費を変えるのか、どちらの選択肢もあると思います。それをまちづくりでどう実現していくのかが、テクノロジーの腕の見せ所です。
私は、エクストリーム(極端)に何でも電気で機械化しすぎてしまった日本人が、そういったエクストリームさに対して「ほどほど感」を持つことが大切だと思います。
自動ドアをつけるとなれば、どの扉にもとことん自動ドアをつけてしまう。そのような状況に反対して、なんでもバリアフルにした方が良いと言えば、今度は人間中心主義ではない反論も出てくる。過剰に便利な日本と、人間に不便で優しくない日本とが奇妙に共存しているように感じています。
暖房技術において、日本はダルマストーブの時代に薪ストーブの技術を放棄し、電気によるエアーコンディショニングに変えてしまいました。しかし、北欧や北米の一部では薪ストーブを洗練させ、熱効率の高いものに進化させていきました。
私たちは、吹きさらしでは暮らしていけませんが、適度に外気を取り入れ、適度に外気から守るという「ほどほど感」と、人間の目線を持ったマニュアル感を取り戻し、見直していくことが重要だと思います。