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【レポート】逆参勤交代実現に必要な「一歩を踏み出す勇気」

丸の内プラチナ大学逆参勤交代コース DAY2(2018年7月18日開催)

8,9,11

新たな学びと挑戦をしたいと考えるビジネスパーソンをサポートする「丸の内プラチナ大学」が今年もスタート。先陣を切って始まったのが、地方での期間限定型リモートワークを行う「逆参勤交代構想」コースです。7月18日、3×3Lab Futureにて本コースの導入講座が開催されました。

これまでにも座学や1泊2日で地方に赴いて働き方を考える催しは行われてきましたが、今年はさらに一歩進み、3つの市町村に行き、それぞれ3泊4日のフィールドワーク「トライアル逆参勤交代」を実施します。働き方改革と地方創生という2つの大きな社会課題を解決する取り組みに興味を示す人は多く、導入講座の段階から、参加者の課題意識と熱量が伝わるものとなりました。

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新しいシェアリングエコノミーの形「逆参勤交代構想」

新しいシェアリングエコノミーの形「逆参勤交代構想」

海を望む離島。起床後に朝釣りをして、近所からおすそ分けしてもらった朝採れ野菜を朝食に。週に3日は生活拠点から徒歩5分の場所にあるオフィスで本業である東京の企業の仕事をこなし、残りの2日は地元市役所の観光ガイドの手伝いや地元の高校生に家庭教師をする。そして休日には家族とともに南の島のレジャーや観光を楽しむ−−これが、逆参勤交代構想のイメージです。

逆参勤交代構想とは、都市部のビジネスパーソンが期間限定で地方に赴き、週に数日は本業を、残りの日にはその地域のために働き、地方と都市で人材を共有するというもの。人口減とそれに伴う担い手不足に悩む地方自治体にとっては関係人口の増加や消費の増加、イノベーションへの期待などを持つことができ、働き方改革に取り組む企業にとっては、社員の育成やメンタルケア、さらには地方創生ビジネスの推進などを実現できます。そして社員にとっては、普段とは違う環境で働き、生活することで、心身のリフレッシュやモチベーションアップ、ワークライフバランスの確保やセカンドキャリアのきっかけ作りといったことを望むことができるという、多面的なメリットがある新しいシェアリングエコノミーの形です。

本コースの講師を務める松田智生氏(三菱総合研究所 プラチナ社会センター 主席研究員、丸の内プラチナ大学副学長、高知大学客員教授)の試算では、逆参勤交代構想が実現すると1000億円の消費が生まれると考えられています。

「首都圏と近畿圏の大企業の従業員約1,000万人の1割である100万人が年に1ヶ月地方に逆参勤交代をすると、100万人÷12か月で約8.3万人、それは2014年の全国の移住者約1.2万人の約7倍にあたる人が地方に移住するのと同等の意味を持ちます。年間消費額を124万円とすると総額で1000億円超になります。そして、江戸時代の参勤交代によって江戸に藩邸ができ、街道が増えて整備されたように、逆参勤交代者を受け入れる地方自治体ではオフィスや住宅、インフラの整備なども必要となるため、多面的な経済効果を期待することができます」(松田氏)

この逆参勤交代構想には、目的や期間によって多様なモデルがあります。松田氏が提唱するモデルは次の5つです。

①ローカルイノベーション等、新規事業のプロジェクトチームの集中合宿を行う「プロジェクトチーム型」
②高業績社員のモチベーション向上や、メンタルヘルス予防などに活用する「リフレッシュ型」
③将来の経営幹部が、地域の課題解決に参画する「武者修行型」
④育児や親の介護対応のために実家近隣で就労する「育児・介護型」
⑤シニア社員のセカンドキャリアに活用する「セカンドキャリア型」

「例えば①のモデルの逆参勤交代を実施すると、その地方には社員を受け入れるためのミニオフィスや住宅需要の増加、ホテルや交通の稼働率が向上するなどの経済効果が生まれます。また、都心のビジネスパーソンの知恵やノウハウを活用することで、地方企業の販路開拓や、廃業問題を解決する策などを見出すことができます。また②であれば社員のリフレッシュを促すものになるため、健康経営が推進され、企業価値を高めることにもつながります」(松田氏)

同時に松田氏は、「実際に逆参勤交代をして地域の担い手になったとしても、"自分のキャリアを自慢する人"や、"口は動くが手は動かない、手は動くが足は動かない人"というのは地域で嫌われてしまう傾向にあることも理解しておくべき」と、注意を促しました。

こうした形で逆参勤交代を実現していくことができれば、CCRC(Continuing Care Retirement Community。継続的な介護が提供される高齢者向け共同体)との相乗効果も期待できます。

「リタイアしてから住む地域を変えるのは遅すぎますが、現役時代に10回逆参勤交代に行けば、そこが第二のふるさとになります。例えば集合住宅を活用して、低層階に高齢者、中高階層に逆参勤交代社員や学生が居住すれば、みんなで一緒にご飯を食べたり、近隣の学校で学んだり、地元の企業等で働くという多世代型CCRCが出来上がります」(松田氏)

実現の鍵は「プラットフォーム」と「一歩を踏み出す勇気」

一方、逆参勤交代構想を実現する上で、「自治体や企業のコスト負担」「企業と自治体のマッチング」「費用対効果」「経営トップの理解」といった課題も存在します。さらに、こういった新しい挑戦をしていく中では、「できない理由や論理的な批判が得意な"否定語批評家症候群"」「計画ばかりを繰り返す"PPPP症候群"」「挑戦者が少しのミスで叩かれる"やったもん負け症候群"」「酒の席では雄弁で、会議では沈黙する"居酒屋弁士症候群"」といった不条理な症候群が発生するとも、松田氏は言います。だからこそ、この構想を実現するための官民連携のプラットフォームを作ること、そして何よりも「一歩を踏み出す勇気」を持つことが重要だと、氏は訴えました。

「官民連携でマッチングの円滑化や費用軽減・効率化、効果測定や検証を行えるプラットフォームを作り、健康データや地域への経済波及データというエビデンスを測定する。そして、まずはトライアル逆参勤交代という形でスモールスタートをしていき、成果や課題の集約・共有を行うことが大切です。そのために、今年は岩手県八幡平市、茨城県笠間市、熊本県南阿蘇村という3地域でトライアル逆参勤交代を実行していくのです」(松田氏)

「逆参勤交代は、社員・企業・地域の三方一両得なものです。また逆参勤交代によって増加する関係人口は、地域に風を起こし、水を与え、土を耕す人です。実現には綿密な準備が必要であり、それをこの逆参勤交代コースで学びましょう。私たちが生きているこの社会には一歩を踏み出すチャンスが数多くあるので、ぜひとも皆さんが一歩を踏みせば、それは大きな一歩になるはずです。」(同氏)

ツナゲル、関係人口増、集客...各地域が逆参勤交代に掛ける期待

続いて、今回トライアル逆参勤交代を行う3つの地域の関係者が登壇し、各地域の特徴や魅力、抱える課題、そして逆参勤交代への期待を語りました。

まず登壇したのは、岩手県八幡平市企画財政課 地域戦略係長の関貴之氏。2005年、西根町・松尾村・安代町という3つの町村が合併して誕生した八幡平市。岩手山や安比高原スキー場、国立公園八幡平、そして最近話題となった八幡平頂上付近の鏡沼の雪解けの様子が龍の目のように見える「ドラゴンアイ」という現象の効果などもあり、2017年には県内1位のインバウンド観光客数を記録するなど、岩手でも有数の観光地です。しかし一方で「"はちまんたい"ではなく"はちまんたいら"と読まれることもまだまだ多く、シティセールスやプロモーションがうまくいっていない」地域であり、「高齢化や少子化、若者の都市部への流出など、皆さんが思いつく地方の課題はすべて持っている状態」でもあります。

岩手県八幡平市企画財政課 地域戦略係長の関貴之氏。岩手県内有数の観光地である八幡平を知ってもらい、「関係人口増加を目指したい」と話した

そうした課題解決のヒントを探るため、関氏は以前からプラチナ大学に関わり、過去には八幡平体験・視察ツアーなども実施しています。その際にはビジネスプランを提案したり、地元住民とのワークショップを行い、互いに良い刺激を与え合ったという経緯があり、今回のトライアル逆参勤交代の実施地の1つに選ばれました。

「今回のテーマは"ツナガレ逆参勤交代、ツナガル八幡平!"です。プラチナ大学の受講者の皆さんと八幡平がつながるというのはもちろんのこと、市民同士がつながることも重要だと考えています」(関氏)

関氏がこのように語るのは、「他地域の人とつながることを恐れている人が意外と多い」ことや、「"外から来た人たちが何をしてくれるの?"と考える人もまだまだいる」からです。そうした状況の中で、いくら行政が旗を振っても効果は出ないため、「市民の方や地元の事業者の方と関わっていただき、"一緒に何かをやろう"という雰囲気を作り出してもらいたい。そのために、"ツナゲル"尽力をしたいと思っています」と、関氏は訴えました。

茨城県笠間市役所 市長公室 企画政策課 課長の北野高史氏。「地域活性化の鍵は関係人口の増加」と語り、現在の取り組みについても紹介を行った

東京駅から電車で約1時間強で到着することができ、茨城県央に位置する茨城県笠間市からは、同市役所 市長公室 企画政策課 課長の北野高史氏が登壇。笠間市は、日本三大稲荷のひとつに数えられる稲荷笠間神社や、200軒以上の陶芸家・窯元・地元販売店などが集う陶器の祭典である笠間の陶炎祭、モネやドガ、ゴッホといった世界に名だたる画家の絵画等を収蔵する笠間日動美術館などを持つ、茨城県内有数の芸術・文化都市です。人口は約7万5000人で、病院等も充実しており、「安心安全を提供できる都市」でもあると、北野氏は説明します。

しかし「課題は山積み」の状況であり、2000年頃を境に人口減少が続き、2030年以降は65歳以上の高齢者層の人口も減少に転じることが危惧されています。そうした中で、同市は「人口減少を抑制すると同時に、人口構造の変化に対応したまちをつくる取り組みをしている」と言います。その中で、,二地域居住者など笠間に思いを持つ方が,東京圏や市内で活動しており,これらの関係人口にも注目しています。

「産業再生や事業継承も課題になっています。優良な中小企業や、私が子供の頃から当たり前にあった商店が、担い手不足などでなくなっています。そうした店舗等があった場所が更地などになると、自分にとっての街のプライドがなくなるんです。このプライドが文化であるのかなと感じるので、そういった商店の事業継承などもアイディアをいただき、まちの活性化につなげたい」(北野氏)

そして最後に、北野氏は「今回のトライアル逆参勤交代では,提案だけではなく"実行と実現"をテーマに取り組んでいきたい」と、意気込みを語りました。

熊本県南阿蘇村からは、自治体関係者ではなく、今回の逆参勤交代の宿泊先でもある民間企業・阿蘇ファームランドの執行役員 社長室長の竹田知子氏と同渉外部長の竪山裕史氏、同村の議会議員 総務常任委員会 委員長の太田吉浩氏が登壇。阿蘇ファームランドという企業の魅力や課題、南阿蘇村という地域の魅力と課題がそれぞれ紹介されました。上から阿蘇ファームランドの執行役員 社長室長の竹田知子氏、同渉外部長の竪山裕史氏、同村の議会議員 総務常任委員会 委員長の太田吉浩氏。阿蘇ファームランド、南阿蘇村に共通する課題は「プロモーション不足」。「阿蘇ファームランドの集客が南阿蘇村の復興と活性化につながる」と松田氏も指摘した

松田氏も「楽しみ、リフレッシュをしながら健康診断を受けることができ、宿泊してとても面白かった」と評する阿蘇ファームランドは、「学んで、知って、体験する健康づくり」をコンセプトに、世界でも類を見ない健康テーマパークです。そんな同社が逆参勤交代構想に賛同しているのは、次のような理由からです。

「私たちの取り組みは十分に広報ができていません。そのため、ターゲットに対して的確に広報し、集客につなげられるアイディアをいただいたり、スタッフのインバウンド対応のノウハウや知恵をいただきたいと思っています」(竹田氏)

この阿蘇ファームランドがある南阿蘇村は、もともと人口の減少と流出、少子高齢化の加速などの課題を抱えていたことに加え、2016年の熊本地震で非常に大きな被害を受け、震災後の2年間で約1000人の人口減少が起こりました。村議の太田氏は「熊本空港から自動車で30分という立地の良さや、恵まれた自然という強みがある一方で、他の自治体よりも10年ほど早く危機が迫っています。ぜひ色々な知恵や経験、客観的な視点をいただき、南阿蘇村の復興プランに知恵をお貸しいただきたい」と訴えました。

人口減という国家的な課題はもちろんのこと、関係人口の少なさやプロモーション不足、地域内での連携の未整備といった課題も抱えるだけに、各地域の逆参覲交代構想へ掛ける期待の大きさはひとしおであることを伺わせました。

逆参勤交代は働き方改革と地方創生のターニングポイントになるか

講演に続いて、ミニパネルディスカッションと参加者からの質疑応答が行われた

各地域の紹介が行われた後、松田氏を交えてパネルディスカッションが行われました。松田氏が投げかけた最初の質問は「どんな人に逆参覲交代に来てもらいたいか」というもの。この質問への回答で印象的だったのは、笠間市の北野氏が答えた「東京の暮らしで困っている人に来てもらい、"笠間に来たら元気になった"という人を増やしたい」という回答です。これはまさにリフレッシュ型の逆参勤交代モデルであり、松田氏も「空気や水が美味しい地域に来ると、ローカルイノベーションを起こすことだけではなく、自分自身を取り戻し、健康になれる魅力がある」と説明しました。

その逆に、「困ってしまう移住者のタイプ」という質問に対して、南阿蘇村の太田氏は「補助金を期待して来ていただくと、希望に添えない場合もある。生計は自分で立てることを意識してもらいたい」と語りました。また竹田氏は「私たちは誘致企業の立場なので、地元の方々からすると"なぜ国立公園の中にあんな建物をつくるんだ"、"雇用を奪っているのではないか"と見られ、ご理解を得られていない部分はある」と実情を吐露しました。その地域の内部での連携不足を感じているのは八幡平市でも同様で、関氏もまた「移住者に困ることはないものの、行政内部の無関心は課題に感じている」として、「いかにそうした職員を奮い立たせるか。そして市民を奮い立たせるかが重要になってくる」と語りました。こうした現実があるからこそ、外部から訪れた人間が潤滑油になることが、地域の視点から見て逆参勤交代に求めていることの1つだと言えるのでしょう。

最後に松田氏は次のように話し、今回の導入講座を締めくくりました。

「逆参勤交代のような話をすると、部長レベルまではスムーズに行くものの、役員や経営者まで話が行くと細かい部分へのつっこみが入り、話が止まってしまうことが往々にしてあります。それを突破するにはやるしかないと思っています。既成事実を作り、良かったことや課題を共有する。そしてローカルイノベーションを実現して、改めて経営陣を説得していく材料とすることが大切です。そうした狙いを持って、今回のトライアル逆参勤交代を行っていきたいと考えています」(松田氏)

これから行われる3つの地域でのトライアル逆参勤交代が、日本における働き方改革と地方創生のターニングポイントになるのか。期待と注目が大いに集まります。

プログラム終了後、各地域から提供されたお酒と料理で懇親会


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