イベント丸の内プラチナ大学・レポート

【レポート】生の地方創生の現場に直面した上級編(前編)

丸の内プラチナ大学逆参勤交代コース 熊本県南阿蘇村フィールドワーク(2018年9月6日(木)~9日(日)開催)

8,11,15

「東京で学び地方で輝く」をテーマにした丸の内プラチナ大学「逆参勤交代」コース。それは地方創生という日本の大きな課題に取り組むとともに、自分自身を見直し、新たな生き方を模索するものでもあります。2018年は、東京での座学の後、3泊4日の地方フィールドワークを岩手県八幡平市、茨城県笠間市で実施。昨年の「ヨソモノ街おこしコース」から名称を変更し、フィールドワークの期間も1泊2日から3泊4日に延ばしたことについて、講師を務める松田智生氏(三菱総研、丸の内プラチナ大学副学長)は、「社会に実装すべき時期に来ているから」と説明しています。

「政策検討の文書でも『明るい逆参勤交代』という言葉が入るようになり、着々と政策化に向けての動きが進んでいる。本気の受講生たちを集め、社会に逆参勤交代を実装させるための一歩を踏み出したい」(松田氏)

そして、9月6~9日、熊本県南阿蘇村で2018年最後のフィールドワークが実施されました。

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上級編だった南阿蘇村フィールドワーク

上級編だった南阿蘇村フィールドワーク

2日目の意見交換会にて松田氏

松田氏は、南阿蘇村でのフィールドワークを振り返り、「上級編だった」と感想を述べています。

これまでのフィールドワークの舞台となった地域は、比較的課題が整理されており、地域のステークホルダーとの関わり方もある程度示唆されているなど、ある意味で「地ならし」がされた状態でした。一方、今回の南阿蘇村は、その地ならしがされる前。いわば「生」の状態であったと言えます。

今回の丸の内プラチナ大学との連携で中心的な役割を果たしているのは、南阿蘇村の民間企業「阿蘇ファームランド」。ここに、南阿蘇村の行政、観光協会、道の駅・温泉などの施設運営業者などが加わったのが、今回の地方側の座組みです。

阿蘇ファームランドは、テーマパーク型宿泊施設として九州では良く知られていますが、新たな需要を喚起するために「健康」をテーマにした体験型宿泊に大きく舵を切り、その認知拡大、誘客などの課題解決として、丸の内プラチナ大学に期待しています。

一方、行政や観光協会、その他の観光施設などでは、「阿蘇山の火口頼みの観光からの脱却」(関係者)に軸足を踏み変えたところで、「コト」による体験型の観光を中心にした地方創生を模索している段階です。

今もいたるところに地震の爪痕を見ることができる

そして、両者に共通している背景が2016年の熊本地震です。今もなお仮設住宅で暮らしている人もおり、交通インフラの復旧も遅々として進んでいません。震災後観光客が激減し、観光産業が大きな打撃を受けるとともに、震災をきっかけにした人口流出で労働力不足も顕在化。特に阿蘇ファームランドでは近くにあった東海大学農学部のキャンパスの撤退によって、学生アルバイトがいなくなったことが大きな打撃になっています。

このようにいろいろな状況と問題と思惑が入り混じり、ステークホルダーそれぞれの課題と期待がパラレルになっているところもあるなど、ライブな感覚にあふれていたのが今回の3泊4日のフィールドワークでした。参加した受講生たちも「想像していた以上に、現場のピリピリした空気を感じることができた」「一筋縄ではいかない地方の現状を知ることができた」と話しています。一体どんなフィールドワークだったのか、3泊4日をダイジェストで振り返ります。

阿蘇ファームランドの「健康」を考える

<1日目・9月6日(木)>阿蘇ファームランド体験(健康チャレンジ館、GENKIスタジアム)、懇親会

▼自分の健康を知る

熊本空港に降り立ったのは、講師の松田氏を筆頭にスタッフ含め総勢10名、うち受講生は8名です。年齢も20代から50代まで幅広い一行です。

初日は、投宿した後早速今回の阿蘇ファームランドのテーマ「健康」のメニューを体験します。まずは体の状態をチェックする「健康パビリオン」へ。ここでは、セルフチェックでの検査が8項目、スタッフサポートのつく計測が3項目、看護士による測定が3項目の14項目を測定することができます。

<セルフチェック>体成分分析、脳年齢測定、体内糖化度(AGEs)測定、血圧&血行動測定、鉄分・貧血傾向チェック、血管年齢&ストレス測定、肌年齢測定、立ち上がりテストでロコモチェック
<スタッフサポートチェック>歩行姿勢年齢測定、姿勢身体バランス測定、足裏健康測定
<看護師による測定>肺機能&肺機能測定、骨密度測定、内臓脂肪測定

最先端の技術を投入した検査もあり、一部の測定では、スポーツメーカー、健康器具メーカー、研究機関などと提携し、開発されたものもあります。この日は、セルフチェックとスタッフサポートチェックの11項目を全員が体験し、自分たちの健康度合い、体の状態を確認しました。受講生の8名は「実年齢より上でショック! でも現実受け入れないと!」「血圧すごい高いよ、安静にしてないと」「脳の力が若い!(喜)」と、結果に一喜一憂。自分ひとりだけだとシビアな問題でしかない健康も、こうしてみなで向き合うとエンタメめいて見えるのかもしれません。ロコモチェックのような体力的なものになると、男性陣が妙にムキになるのも面白いものでした。

▼男性陣愕然!?の肉体年齢チェック

それぞれ実年齢とのギャップを思い知らされた後、「ゲンキスタジアム」へ移動し、肉体年齢の測定へ。こちらは、阿蘇ファームランドがオリジナルで開発している7つの競技(ゲーム?)で、反射神経や柔軟性、瞬発力、脚力など8項目で肉体年齢を測定します。

一例を挙げると、4本の柱にランダムに点灯するランプボタンを叩く「ツイスター」。ボタンの点灯から叩くまでの時間から、反射速度と瞬発力、柔軟性などを測定するというもので、装置はもちろん、解析プログラムもオリジナルで開発しているとのこと。

<GENKIスタジアム>ツイスター、リングストレッチ、フットストレッチ、ライトバランス、メモリーステップ、リンボーウェーブ、プッシュプル

これらのゲームは、運動強度を「メッツ(「Metabolic Equivalents」の略。METs)」で示しており、例えば掃除などの家事と比較してどれくらいの運動量かを分かりやすく解説しています。これによって日常の動作との比較し、意識的な運動を喚起し、行動変容を促すものだとしています。どれも運動強度はそれほど高くはありませんが、2分もトライすると結構な負荷。最初は軽いノリでチャレンジしていた受講生たちでしたが、次第に汗ばんで真剣な表情になっていきました。

ゲーム開始時には、IDカードを読み込ませ、最後に一人ひとりに結果のレポートもアウトプットできるようになっています。18歳の平均的な運動能力・肉体年齢を100点として、現在の年齢を減点方式で表示。実年齢より若い人もそうでない人もおり、悲喜こもごもの結末。

しかし、このGENKIスタジアムに対する評価は「すごく楽しい」。普段やらないような運動、活動ということが単純に楽しいということもあるし、「質の高い、インタラクティブなゲームをやっている感じ」という高評価も。その一方で、ひねりや回転の動きが多いことから「三半規管に来る」「目が回る」という声も聞かれました。

▼懇親会でキーパーソンと対峙

そして汗を流した後は、懇親会で地元のキーパーソンのみなさんと相まみえました。

南阿蘇村からは、吉良清一村長、産業観光課倉岡英樹課長、同課下田朱美課長補佐、同課工藤真寿主幹。そして、東京での座学にもご登壇いただいた村議会議員の太田吉浩氏(総務常任委員会委員長)。
南阿蘇村の民間事業者では、みなみあそ村観光協会代表理事の河津謙二氏、同事務局長の久保尭之氏、道の駅「あそ望の郷くぎの」代表の藤原健志氏。河津氏は地震による土石流で大きな被害を受けた地獄温泉「青風荘」の副社長でもあります。

そして、阿蘇ファームランド社長室長の竹田知子氏、同営業部長の中司竜一郎氏、同渉外部長の竪山裕史氏、同企画広報部次長の森山千鶴、阿蘇ファームランドの宿泊施設である「大自然阿蘇健康の森」の小西正哉支配人。

懇親会に先立ち、吉良村長は「震災がなければ、温泉があり山があり、風光明媚な村を楽しんでいただけた。復旧復興も進んでいるが、まだまだこれから。今日は懇親を深めて村を理解してほしい」と期待を語りました。懇親会では、キーパーソン、受講生全員が自己紹介をし、それぞれが本プログラムに取り組む胸中を語りました。

懇親会は終始なごやかな雰囲気で、受講生たちは南阿蘇の歴史や文化、料理について、また、復興の課題、地方創生の問題などをキーパーソンから詳しく聞くことができたようです。村長も35年無農薬で稲作をやってきた経験をもとに、世界農業遺産に認定された草原と生きる阿蘇の農業システム、そして傾斜地に緩やかに広がる水田が3000年の時をかけて豊かな湧水を育てたことなどを熱く語り、「この豊かな南阿蘇を2000年、3000年先に残すことに努めなければ」と意気込みを語っています。"飲みニケーション"でなければ聞くことのできない情報や思いを聞くことができました。

また、宴席には、「あか牛」のステーキをはじめ地元特産の料理が並びましたが、とりわけ美味だったのがファームランドの「阿蘇健康農園」で作っている野菜類でした。葉物野菜のほか、きのこ類の栽培も盛んで、特殊なものもあります。この農園については3日目に詳しく視察することになります。

観光の現状を紐解いていく

<2日目・9月7日(金)>阿蘇大橋跡→南阿蘇村役場→村内視察(長陽駅→白川水源→道の駅→旧久木野庁舎)→意見交換会→南阿蘇中学校

▼倉岡課長が語るこれからの「みなみあそ観光」

2日目は、南阿蘇をもっと深く知るためのツアーが中心となりました。その皮切りとして、まず南阿蘇村役場で、倉岡課長から、南阿蘇村最新の観光産業の状況をお聞きしました。

倉岡課長

南阿蘇村はもともと阿蘇の火口や白川水源、温泉などを資源とした観光産業が盛んで、2013年には年間720万人の観光客が訪れています。しかし、熊本地震で観光客は激減。現在6割程度にまで回復していますが、宿泊も含めいわゆる復興需要によるもので、本格的な回復ではないとしています。
「南阿蘇は火山の影響もあるし、豪雨、地震と自然災害に翻弄され続けてきた。今までは火口頼みの観光で、情報発信やインフラ整備も立ち遅れてきた。言ってみれば震災で南阿蘇村の一人負けがはっきりしたようなもの」(倉岡課長)

こうした現状を打破すべく、村で採っている方針が「モノからコトへ」の体験型観光の開発です。雲海、南阿蘇鉄道のトロッコ列車などを活用したもの、トレッキングや冬季の雪山の体験、シンボルキャラクター「かなばあちゃん」を活用したもの等、現在、さまざまな体験型メニューの開発やトライアルを進めています。
「キーワードは『いまだけ・ここだけ・あなただけ』。そう考えると、復旧工事中の阿蘇大橋も『今』だけのもので、復興ツーリズムも可能性がある。山に星を見に行くナイトツアーのトライアルも評価が高かった。いろいろなメニューを考案したい」(同)

また、村の新総合計画では「観光客V字回復プロジェクト」を重点プロジェクトとして設定しており、地域資源にヨソ者の視点・情報をかけ合わせて、ソーシャルインパクト、社会的価値の創出を目指すことを目標に掲げていることも紹介されました。

▼震災の爪痕と復興の兆し――村内視察

村内の各所を巡るツアーでは、観光資源を体験・視察するとともに、いまだ色濃く残る震災の爪痕と、それに立ち向かう人々の活動を見ることができました。

朝一番は、役場への道すがらで阿蘇大橋が崩落した現場へ。現在は2020年の完成を目指し、工事が始まっています。ここは東海大学の入り口にも面しており、付近は学生向けのアパートなども多く建っていますが、現在はすべて空室。ここでは阿蘇ファームランドの竪山氏が解説をしてくれ、発災後から現在の工事についてのほか、学生たちとの交流のエピソードも紹介しています。
「アルバイトに来てくれる子も、農学部でおとなしい子が多かった。亡くなった学生もいて、震災後に親御さんから『ここでのアルバイトのおかげで明るく話すようになった』とお礼を言われたことがある。地震の後に気付いたこと、教えられたことがいっぱいある」(竪山氏)

震災前は常時100人の学生アルバイトがいましたが現在ではゼロ。その人手不足を補うために、人員補強の施策を講じたり、作業効率性アップの工夫を重ねたりしているのが現在の状況です。

久永氏

役場の次に訪れた「長陽駅」では名物店長・久永操氏との面談。長陽駅は南阿蘇鉄道の無人駅ですが、久永氏が駅舎を借りて土日祝日限定のカフェ「久永屋」を運営しています。駅から見える風景に惚れ込んで移住して2006年にオープン、震災で一時中断しましたが、「人のつながりが大事」と再開し現在に至ります。

「鉄道はまだここまで開通していないが、線路の草刈りボランティアに来てくれる人も大勢いる。外国人のバスツアーの皆さんも来てくれる。これからも観光スポットとして、そして地域の人たちが集える場所として、しっかりと役割を果たしていきたい」(久永氏)

カフェでは名物のかき氷や無添加のシフォンケーキ、コーヒーを楽しむことができるほか、地元の野菜や特産品なども販売しています。名物をいただくことはできませんでしたが、ウクレレで謳う「長陽駅の歌」でお見送りいただき、一行は長陽駅を後にします。

白川水源次に訪れたのは「白川水源」。こちらは毎分60トンもの湧水量を誇る、水郷・南阿蘇の象徴的な存在です。怖いくらいに澄み、とうとうと湧き続けるさまは、確かに人智を超えた神の存在を感じさせるほど。すぐ脇に水の神を祀る吉見神社があるのにも納得です。水源地ではペットボトルを購入して水を汲むこともできるほか、「水まんじゅう」など、水を使った名物もありました。

続いて訪れた道の駅「あそ望の郷 くぎの」では、懇親会にも参加した藤原社長が自ら施設の概要説明と、震災時の応対・活動について解説してくれました。

発災後、すぐさま炊き出しを始め、2015年に駅に隣接してオープンしたアウトドアショップ「モンベル」の協力で、避難してきた人のテントを提供し、駅内で利用してもらったほか、「災害時には情報が不足する」と気付いたことから、敷地内に掲示板を立てて、行政や店舗などの情報を避難者に案内するなど、多様な支援活動に取り組みました。

藤原社長

「地震を引き起こす断層の動きによって、被害の地域差が大きいことが分かった。結局、地震は発災後3日はなんとか自力で生き残らなきゃいかん。喉元過ぎればなんとやらだが、それはこれからも肝に命じなければならないだろう。今は10月に秋祭りと前後して『復興祭り』も開催するようになった。震災を忘れずに地域の中心地のひとつとして活動を続けたい」(藤原氏)

道の駅からの眺望は、阿蘇五岳に向けて緩やかに田んぼが広がって立ち上がっていきます。「このロケーションが売り」と藤原氏。受講生からは、この道の駅を使ったサテライトオフィスの可能性を尋ねる声が上がったほか、藤原氏が手がける水ビジネスや、観光協会の久保氏が始めた「田んぼカヤック」についても意見交換が行われました。

そして最後に訪れたのが、旧久木野庁舎です。南阿蘇村は2005年に長陽村・白水村・久木野村の三村が合併して成立。以来、旧村の村役場を活用した分庁方式をとっていましたが、2017年4月に新庁舎が完成し統合。現在旧久木野庁舎は、一部の業務が残っていますが、ほぼ利用されておらず、この活用も課題のひとつになっています。

昼食には、久木野庁舎横の「久木野そば道場」でお蕎麦をいただく。「あか牛 肉そば」は、あか牛の柔らかい肉をふんだんに使ったメニュー。九州らしい甘いタレが特徴的。この事業は減反政策への対応で、代替作物にそばを植え、名物化しようと試みているもの。ふるさと創生1億円を使って立ち上げた。来年度には道の駅に移転し、販売強化を図るというここでは、産業観光課商工観光係主幹の工藤氏が合併から庁舎利用のあれこれを解説してくれましたが、受講生の目は庁舎に掛かった「結婚相談所」の看板に惹かれ、工藤氏から村が主催した「山コン」の話題を聞き出すことができました。
「2015年から年に1回開催しているもので、山を舞台にしたいわゆるコンパ。昨年は40組の参加枠に460名の応募があるほど、なかなかの人気となった。一番のポイントはそのカップル成立率の高さ。昨年は約5割の19組のカップルが成立し、その一部の方は村の式場で結婚を挙げてくれた」(工藤氏)

これも地方創生を考える受講生にとっては良い材料になったようでした。今年は11月3日に紅葉する外輪山を舞台に開催されるとのこと。これをお読みの独身の方、いかがでしょうか?

▼地元キーパーソンとの意見交換

昼食後は、再び役場に戻り、役場職員のみなさんはじめ、昨晩の懇親会に登場したキーパーソンのみなさんとの意見交換の場となりました。

まず受講生側から視察での気づき、感想などを述べたうえで、地域側から課題、困っていること、現状についてなど、ざっくばらんにお話しいただきました。

上から久保氏、河津氏、藤原氏、岩下氏「リソースやコンテンツはあるが、回す仕組みがないことが課題。誰が経営的なことを担うのか、誰が投資するのか。事業を始める『プレイヤー』が決定的に欠けている。一方で、無作為な観光誘引がオーバーツーリズムを招き、サステナブルなツーリズムができなくなる可能性も危惧している」(久保氏)

「村全体の収入の7割が観光に依存しているのに、観光客を迎えるウェルカムマインドがなかなか村に根付かないことが問題では。また、宿泊業で働くことがその後のキャリアッププランと結びついていない現状が、雇用の際のネックになっていると思う」(河津氏)

「人手不足が『厳しい』以上の段階に突入しており、外国人も視野に入れなければならないのかと考えている。70、80代の高齢者でも頑張って働く人はいるが、例えばレジ打ちができないなど、技術的な問題があり、簡単にはいかない」(藤原氏)

この意見交換会から参加した南阿蘇村商工会の岩下雄二氏は、産業活性化のため移住定住を促進したいものの、住宅等の整備が整っていないことを課題として挙げています。 「震災復旧が進み、インフラが整わないと既存企業の事業もままならない中、移住定住者に必要な、住宅や通信設備などのインフラも整備することができていない。サテライトオフィスの検討もしているが、集積できる拠点をどう作るかが問題だ」(岩下氏)

倉岡課長は、自身田畑を持つ兼業農家で、また、関西圏の修学旅行の農家民泊の受け入れなどもしていることも踏まえ、「地方の人たちはやることが多すぎる」と話しています。 「普段の仕事に加えて、自分の畑の仕事もあるし、地域の活動もある。季節によっては草刈りなどの入会地での仕事もあって、そうした地域の仕事に参加できないと摩擦を生む原因になったりもする」(倉岡氏)

こうした課題を聞いた後は、「どうすればもっと良くなるか?を自分主語で考えてながら議論してほしい」と松田氏から呼びかけがあり、双方積極的に質疑応答、意見交換をする場となりました。受講生側もまだまだ情報不足のところがあり、積極的に質問するとともに、ブレスト的にアイデアを出して状況を深掘りしたり、双方の視点の違いを修正したりと、予定調和ではない、迫真の議論となりました。

これは、受講生にとっては、事前のインプットや視察では分からなかった点を埋めていき、地元側に歩み寄る作業でありましたが、逆に地域側にとってはヨソ者との接点・インターフェイスをどう作るのかという作業であったのかもしれません。

▼ゲストティーチャーとの勉強会 南阿蘇中学

丸の内プラチナ大学では、プラチナ受講生たちが「先生」となって、地元の中高生たちに自分たちの経験を語るキャリア教育的な場を持つようにしています。これは地域の中高生のためのものではありますが、同時に受講生たち自身のためのものでもあります。地方という現場で自分たちの経験、キャリアを振り返り語ることが、改めて自分を見つめ直す機会となるのです。「教えることで学ぶ」、つまり福澤諭吉の言う「半教半学」の現場がここにあります。

2日目の最後は、南阿蘇中学の3年生およそ80名たちに進路について話す、半教半学のセッションとなりました。熊本地震が起きたときは中学1年生だった皆さんも、今は3年として進路を考えるときに来ています。プラチナ受講生たちは、自分がどんな高校生で、どんな高校時代を過ごしていたのか、そしてその後どのようにして進路を決めていったのかを学生に話します。プラチナ受講生は2人ずつの組になり、およそ20名ずつに分かれた4つのグループを順に回って体験を語りました。

ビジネスの世界では百戦錬磨の受講生たちですが、こうして「先生」として語るのはめったにないこと。みな、最初は緊張して話も堅苦しい感じでしたが、話しているうちにだんだんとこなれてきて、冗談を交えたり、落ちを付けたり、楽しげな様子になっていきました。話す内容は、部活のこと、勉強のやり方、進路の選び方等、多岐に渡りました。

質疑応答も交えながら、1セッション約15分。すべての受講生が4グループを回って終了となりました。学生を代表して最後の挨拶にたった村上さんは、大学までの進路を考えるうえで参考になったことに謝意を述べるとともに、「話を聞いて、誇りを持てる人間になりたいと思った」と話しています。災害は大きな悲劇ですが、それを糧に人生を切り拓く若者たちの姿は、神戸でも、東北でも見ることができました。熊本の皆さんも、このセッションを通じて何かを得てくれることを願ってやみません。

今回のセッションを積極的に受け入れてくれた駒澤伸寿教頭先生は、東京のビジネスマンが来て話すことの意義を次のように話しています。

「南阿蘇のようなところでは、学生が田舎だということに引け目を感じてしまうことが往々にしてある。しかし、今日東京から来たみなさんが、自分の出身地の話をし、中高学校時代の経験を話してくれたおかげで、学生たちの心の中で、変化が生まれたと思う。日本中どこでも、世代を超えて共通していることがあるんだ、生きるということでは同じなんだと、共感を覚え、前向きになることができたように思う」(駒澤教頭先生)

▼2日目の終わりに

阿蘇ファームランドへ戻り、夕食はファームランドのスタッフの皆さんと囲む席となりました。この日も各テーブルでは、南阿蘇村、阿蘇ファームランドをテーマにした会話に花が咲きましたが、中締めとして挨拶に立った最高齢の受講生の言葉が印象的でした。

この日、村役場での意見交換会の際に、職員の皆さんから「プロとしての意見をぜひ聞きたい」「斬新なアイデアに期待している」とプラチナ大学への期待が語られたのですが、「そこに囚われてしまってはいけないと思った」そうです。

「プロだから、素晴らしいアイデアに期待していると言われたが、あくまでも、1人の個人として、南阿蘇で見つけた魅力や好きなことを伸ばす提案ができればいいんじゃないかと感じた」(受講生)

丸の内プラチナ大学は、言うまでもなくコンサルティングをするものではありません。自分自身を主語として、その地方にどう貢献できるのか、活躍できるのかを見出すためのもの。講師の松田氏がよく言うように、常に「自分自身の物語」なのです。受講生の言葉は、その決意を新たにするものとなりました。

後編へ続く


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