シリーズ知恵ブクロウ&生きものハンドブック

街に住むミツバチから教えられること

『ミツバチ』と言ったら、何を一番初めに思い浮かべますか?
「ハチミツ」「働き者」「ハチは刺す!」「虫はキライ!」など、いろいろでしょう。

ミツバチ、好き?キライ?

2006年に銀座でミツバチを飼うとき「ハチに刺されたらどうするの?」と、周辺の人たちは心配されたようです。多くの人にとって「ミツバチ=ハチ=刺す=怖い」というイメージがあるからでしょう。確かに、日本にはスズメバチなど"刺されたら怖いハチ"が生息しているからかもしれません。しかし、ミツバチが刺すときはそれなりの理由があるのです。通常は人間のことなど気にせず、ミツバチたちは自分の仕事に専念しているだけなのです。

銀座の環境をいただく

私が銀座ミツバチプロジェクトのメンバーになったのは2008年。
それまで、"ハチミツ"が好きで、世界各国のいろいろなハチミツを集めていました。プロジェクトに参加した理由の一つには「自分でミツバチを飼って、採ったハチミツは最高に美味しいだろうな!」と、飼い方を習得したいという動機もありました。

幸いにして「ミツバチ=刺す=怖い」というより「ミツバチ=ハチミツ」という平和なイメージを持っていたので、ミツバチを触ることは特に抵抗ありませんでした。初めて採れたてのソメイヨシノの香り漂うハチミツをいただいた時は「最高!!」と感激したのを覚えています。さらに、採蜜の度、違う味のハチミツを味わえるのは、ミツバチを飼う醍醐味だと、ハマっていったのでした。副理事長の田中さんが「このハチミツの味は、この場所(銀座)からミツバチの行動範囲3~4kmの環境を味わっているんだよ。」と、教えてくれたことがとても印象に残っています。ひとつの花の蜜を求めるのではなく、その時その地域に咲く花の蜜から作られたハチミツを味わうことができるなんて、素敵なことだと思いました。

ミツバチは女子力の塊

チョウやカブトムシは卵からかえった幼虫は一匹で餌を食べて生存競争に勝ち抜いて成虫になりますが、ミツバチは1匹では生きられません。1匹の女王蜂とたくさんの働き蜂が群で生活しています。春から秋口まではオス蜂もいます。女王蜂もメス、働き蜂もメス、ミツバチの世界は女子力で成り立っています。女王蜂はシーズン中には1日約2,000個産卵するといわれ、幼虫はお姉さんである働き蜂に育てられるのです。働き蜂は、巣の中の掃除、幼虫の世話、貯蜜、巣作り、門番と一通り巣箱の中の仕事をこなしてから、花形の外勤蜂になり体重の半分の重さの花蜜や花粉を集めに出かけます。私たちが花で見かけるミツバチは、実はキャリアを積んで、残り20日ほどの命の働き蜂なのです。働き蜂の一生は約40日程度、1mgも満たない小さな体でたくさんの花をめぐって、花蜜を貯める蜜胃を満たして巣箱へ帰り、何度も花と巣箱を往復します。

ミツバチからいただく恵み

ミツバチ1匹が一生に集めるハチミツは、ティースプーン半分ほどと言われています。ハチミツはミツバチの食料ですが、短い命をつないで、一匹一匹の小さな営みが蓄積されたものを人がいただいているのです。私たちが食べている野菜や果物もミツバチの受粉の成果をいただいているものがたくさんあります。実は、ハチミツ以外にも身近なところでミツバチには大変お世話になっているんですね。

「緑豊かな田園風景の中で飼ったほうが、ミツバチにとっても幸せじゃない?」と、思われるかもしれません。しかし、銀座に住むミツバチは、「ここで生きていくんだ!」と、毎日せっせと一匹一匹ができる仕事をしています。ビルの屋上から地上を見ると、人がひっきりなしに行き交っています。一方で、ビルの屋上から空を見上げると、ミツバチが行き交っています。さらにこの季節は、ミツバチを捕食するツバメが飛んできます。ミツバチを飼うと、人はミツバチのために蜜源になる植物を植えたくなります。そして、実がなるとそれをついばむ鳥が来て、いろいろな生き物が集まってきます。都会の中で"ミツバチのための緑が増えていく優しさ"や、"人も自然中の一部なんだ"と思う気持ちも、ミツバチからの恵みのひとつだなと、つくづく思う今日この頃です。

山本 なお子
山本 なお子(やまもと なおこ)

静岡県静岡市生まれ。2008年から銀座ミツバチプロジェクトに参加。現在は養蜂スタッフとして、毎日ミツバチと一緒にいる。一度は巣箱の横で寝てみたい。好きな食べ物 ハチミツと肉。特に好きな生きもの ミツバチと牛。将来は、My巣箱を持つのが夢。
銀座ミツバチプロジェクト

おすすめ情報