シリーズコラム

【さんさん対談】私が私らしくあるための、最初の一歩

小崎亜依子氏(株式会社Waris ワークアゲイン事業統括/Waris Innovation Hub プロデューサー)×田口真司(3×3Lab Futureプロデューサー)

5,8,10

働き方改革において、「女性」のキャリア形成に対するアプローチは非常に重要なパートを占めています。3×3Lab Futureでももちろん「女性」をテーマにした内容は多く取り上げられてきましたが、一般的な「女性活躍推進」とは少しニュアンスが違うところがあるかもしれません。女性が本当に働きやすい社会とはどんな社会なのか、その本質を捉えなおそうとしています。今回のさんさん対談に登場する小崎亜依子氏は、株式会社Waris(ワリス)で女性の復職支援に取り組んでいる人物で、その方向性は3×3Lab Futureと非常に近いといえるでしょう。今年度の丸の内プラチナ大学で「わたしブランディングコース」を開設することになったのも、そんな親和性ゆえのことかもしれません。今回のさんさん対談では、3×3Lab Futureプロデューサーの田口が小崎氏の足跡をたどりながら、女性活躍推進、働き方改革のこれから、そして丸の内プラチナ大学のコースの意義を考えます。

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ヒエラルキー社会とフラットな社会

ヒエラルキー社会とフラットな社会

田口 小崎さんとも考えてみれば結構長いお付き合いになるんですが、いつもその自然なお姿が素敵だなと感じていまして、どうしてそんなに自然でいられるのかということもお聞きしていきたいんですけど、まずは小崎さんが今何をなさっているのか。Warisでどんなお仕事をされているか教えていただけますか。

小崎 今私は週4でWaris、週1で鎌倉サステナビリティ研究所で仕事をしています。Warisで今主に担当しているのは、「Warisワークアゲイン」という再就職支援の事業です。再就職支援自体は珍しくないですが、私たちの事業の特徴は、もう1回キャリアを再構築するということにあります。復職率は上がっていますが、復職しても、その年収は平均すると100万円台で、以前のような額に戻ることはほぼ無いのが現状です。そこで私たちは、もうちょっと稼ぎたい、もう少しキャリアを再構築したいという人のために、「再就職」をゴールにするのではなく、そこから階段を上がっていけるような、そんなコンセプトで2016年にこの事業を立ち上げました。

田口 辞めるきっかけはやはり出産育児が多いんですか? 「M字カーブ」という問題が取り沙汰されていましたが。

小崎 M字カーブは徐々に解消されてきていると言われていますね。ただ私たちは復職後の賃金がこのままでいいのかという問題意識があるということ。辞めるきっかけは、パートナーの転勤というのも多いです。あとはお子さん事由。アレルギー疾患など、いろいろあります。また、最近は以前に比べると企業の福利厚生がしっかりしてきているので、出産育児で辞めることが減っていると思います。

田口 Warisに登録されている方は今どれくらいなんでしょうか。

小崎 Warisワークアゲインは4000人。もうひとつの事業「Warisプロフェッショナル」のほうは8000人になっています。この事業は、持っている強みや経験を活かしてプロとして働きたいフリーランス人材と企業のマッチングを行っているものです。

田口 出口側、つまり就職先の企業もネットワーキングされていると思いますが、募集するのは大変じゃないですか。どうやって増やしているんでしょう。

小崎 Warisの設立は2013年ですが、立ち上げ当初は立ち上げメンバーが持っているありとあらゆるネットワークを使って集めたようです。その後は、口コミを中心に大きく広がりました。現在のクライアントの6、7割がスタートアップで、ファンドや金融機関からご紹介いただくこともあります。

Warisプロフェッショナルに登録しているのは、人事・広報・マーケティング等のビジネス系フリーランスがほとんどです。ビジネス系のフリーランスは企業サイドもあまり活用経験がないので、「こういうお手伝いができますよ」と事例をご紹介して、間を取り持つようにしています。

田口 今、小崎さんはWarisでどんなポジションでいらっしゃるんですか。

小崎 Warisはほぼフラットな組織なので上下関係はないんです。3人の代表のほか、事業部ごとに責任者がいて、私はワークアゲインの責任者という形です。上下関係というよりも、各人の役割を明確にしています。

田口 なるほど。今組織をお尋ねしたのは、これまでの仕事と比較してどうなのか、ということをお聞きしたかったからなんです。小崎さんは大学卒業後、どういう遍歴を重ねてこられたんでしょうか。

小崎 大学では金融工学を学んで、ストックオプションの価格の付け方などをやっていたものですから、卒業後は大手の資産運用会社に就職し、株式ストラテジストの支援やリスク管理などを4年担当しました。それから結婚し、夫のアメリカ留学に伴って一緒に渡米。その後帰国するときに妊娠していたので、そのまま子どもを2人生んで、3年くらい専業主婦をしていました。

それから復職しようと思ったときに、まずはネットで検索して、ソーシャルイノベーション・ジャパン(現 ソーシャルビジネス・ネットワーク)に、週3回、1日5、6時間のアルバイトから始めました。そこで1年くらい経験を積みながら、アメリカで学んでいた社会問題と公共政策に関する知識を活かそうと思い、金融と社会問題を扱う仕事をあらためて探し始めました。

そんなときに、ある大手シンクタンクで募集していたESG投資の求人にエントリーしたら採用されたんです。よくこんなブランクのある主婦を採用したなあと思って聞いたら、「ESGをやりたいという人が小崎さんしかいませんでした」って(笑)。2007年のことでした。

田口 こうして伺うと大手ばかりですよね。そこが質問ポイントだったんですが、大手企業はいまだに男性社会で、ヒエラルキー構造な部分があるじゃないですか。そこから今のフラットな組織というのは、ずいぶん変わられたんじゃないかと思うんです。どっちが良い悪いではなく、どんな違いがあるか。小崎さんは結構自由に動いている感じがするのですが、いかがでしょう。

小崎 シンクタンクも比較的自由で、放牧地帯みたいな感じでした(笑)。売上もやることも自分自身で決めながらやらせてもらってましたね。ただ、社内稟議のようなものが沢山あったので、それがなくなった今はすごく楽になりました。

田口 いいなあ(笑)。

小崎 企画書を書いて、これはうちがやる意味はあるのか、どれだけ売上が立つのかとか。どんな企画でもやらなければいけない"決め"のものなんですが、書類を作ってから関連する人を説得して、どうしても一週間くらい掛かっちゃうわけです。でも今は、ぱぱぱっと書いて、メッセンジャー等でぴーんと送っちゃって、と。すごく調整が少ないんです。会議に掛けないといけないとかそういうのもあまりないですね。

田口 逆に旧来型のピラミッド構造、ヒエラルキー組織の良さって何かあると思いますか。ピラミッド型のほうが良かったと思うようなこと。

小崎 私はないですね。でも人によってはどうかな。決めるのが不安な人、決めることに慣れていない人は、上司が決めて自分はサポートのほうがいい、ということもあるかもしれませんね。

田口 分かるなあ。僕も前職がメーカーの通信系SE部門だったんです。

小崎 えっ! SEだったんですか!? 初めて知りました(笑)。

田口 一応理系の情報処理屋で、ネットワークエンジニアだったんですよ(笑)。機械と機械をつなぐのが仕事だったんですが、今は、人と人をつなぐ。「つなぐ」というところは同じですね。

ネットワークエンジニアの仕事って不具合をどれだけ起こさないようにするか、稼働率を究極まで探求していくような世界なんですね。そういう世界から、ある日親会社に出向になって、そこの部長が「フラットな組織を作るぞ」と言い出した。当時はそんなことを言う人がまだまだそんなにいない時代だったので、先見の明があったなと思うんですが、そこで初めてフラットな組織を経験したらすごく動きやすいわけです。各人が仕事内容を決めて自由に動いて半期ごとに報告する。そんな経験をして、初めてプロのビジネスマンになれたなって思えたんです。

一方で、仰る通り、フラットな組織が嫌だ、苦手だという人もいます。「もっとちゃんと指示してよ」という人ですね。例えば、金融や社会インフラのシステムを構築するような仕事は、階層化された組織で段階的に作業をし、何重にもチェックする構造をとったほうが効率的だと思いますし、そういう構造が好きで向いている人もいる。それは、社会にとっても重要なことだと思うんです。

しかし、今社会全体で複業(副業)が解禁し、プロジェクト型の仕事が増えている中で、組織はフラット化していくでしょう。また、イノベーション人材、クリエイティブ人材といったキーワードで働いてもらうなら、ある程度その人の裁量を認めた働き方が重要になっていくだろうと思うんですね。

小崎 分かります。階層というより役割なんですよね。仕事の難易度でお給料は違うかもしれませんが、そこに上下関係はないほうが実は生産性が高いと思っています。何より、楽しく働けるんですよね。

プロフェッショナル人材のこれから

田口 なるほど。そして、もうひとつの事業の「Warisプロフェッショナル」は、まさに自分で決めて自分で動くという、その先の働き方を実現しているように思います。そういう方々は、フリーにならざるを得ずそうなったのか、フリーランスの働き方が好きでそれを選んだのか。どちらなんでしょうか。

小崎 立ち上げ当初は、育児等との両立からフリーランスが最善の選択肢だった人が多かったようです。100%のフルコミットだと両立が難しく、かといってパートタイムでは難易度や時給も下がってしまう。難易度、時給は下げずに、量で調整するという、育児との両立に悩む方にとってはベストな選択だったというところです。

しかし、最近では若い方が自らフリーランスを選んでいることが多いように感じます。会社で階段を上がっていくのではなく、「私」の名前で仕事をしたい、あるいは早いうちからフリーランスに挑戦したい。そういう方が増えています。

田口 組織側は、いまだに「時間」と「仕事の質」を切り離せないですよね。高い質の仕事はフルタイムでないといけない。パートタイムの場合は簡単な仕事だけというような。

小崎 そうですね。日本はパートタイムとフルタイムの賃金格差が、諸外国と比較しても開いているそうなんです。それもそういうことを示しているのかもしれませんね。

田口 企業側のそういう姿勢を、どうご覧になっていますか。

小崎 私たちとしては、できるだけ賃金格差のない形を目指しています。この仕事は通常頼んだら年収800万円になる、そうであれば、時給は4000円じゃないとおかしいですよ、という交渉をする。しかし、残念ながらパートは時給1500円までなので難しいです、というところも多くて(苦笑)。前者の条件で成立しないときは、業務委託でどうかと交渉することもあります。業務委託の場合は人事の管轄外になるので、単価を上げやすくなるんですね。

田口 実際に成立している賃金はどれくらいなんでしょうか。

小崎 プロフェッショナルのほうは平均で時給3000円くらいで、上は1万円程です。企画系の仕事が多いので、平均は高めになっています。

田口 登録者の中で男性もいらっしゃいますか。

小崎 実はとても少ないんです。今は1割もいません。

田口 でも複業解禁などもあって、これから男性も増えるんじゃないですか。

小崎 増えると思います。例えば、50代前半の元CFOなどは、スタートアップ企業で活躍しています。一旦離職して再就職しようとしたけど、他のエージェントで希望通りに行かなくて、それでWarisに来たという方々。基本的な能力が高くて、スタートアップの「よろず相談」というか、バックオフィス全般を担当してもらっています。

田口 そういう仕事のマッチングって、企業側・働く側ともに期待値に対して見合わない、ということがあるのではないでしょうか。どっちが「合わない」ということが多いんでしょうかね。

小崎 どっちが、ということはないですね。できるだけそういうことがないように期待値調整をしています。ただし、ひとつ思うことは、企業側の発注が不明瞭なことがあるなということ。それが要因で仕上がってきたものがイメージと違ってしまう場合に、それをフリーランスのせいにするのはちょっと違うかなと思います。

田口 それは分かりますね。私も仕事をしていて、ちゃんと発注できる人が少ないと感じることが多いです。

小崎 それは日本の課題ですよね。思い立ったときに、「よし、これやっといて!」みたいな(笑)、そういうのが多いですね。毎年、Warisの登録者にアンケートを取っているのですが、フリーランスの方が企業に一番求めているものは、「対等なパートナーとして扱ってほしい」ということ。そうしたほうが絶対成果は出せるはずなんですよね。

田口 手前味噌になりますが、僕らがこうした対談記事の取材制作を外部にお願いするのは、自分たちにできないからのはずなのに、そういう人に対してどうして上から言えるのかがすごく不思議なんですよ。お願いするべき立場なのに。

小崎 リスペクトがないといけませんよね。そのほうが、良い関係ができて、良いアイデアや意見も出てくるはず。

あともうひとつ、個人と契約できない企業が多いのも日本の課題。以前、「出産育児で一度一線を離れてしまった方や、パートナーの転勤で海外にいる方と業務委託契約を結んでチームを作ったら、コストも抑えられるし、優秀な人が集まりやすい」と思って動き始めたことがあって。そうしたら、途中で会社から「個人と契約するな」と言われてしまったんです。何の機密情報もM&Aの情報もやり取りしていない、だから万が一どこかでノートパソコンを落としても何のリスクもないですって説明したんだけど、もう「ならぬものはならぬ!」と全然ダメで。

田口 慣例的にダメだからダメという。理屈じゃないんですよね。

小崎 外国のフリーランスの方に聞くと国連でも個人と契約するのは当たり前で、これってもしかしたら日本だけなのかなって思いました。

田口 かもしれないですね。しかし変わってくると思いますよ。これだけフリーランスが増えて、企業側もフリーランスに発注せざるを得なくなっている時代ですから。

あと、僕が思うのは、サラリーマンは自分の市場価値を知らない人が多いなということ。今もらっている年収はこれくらいだけど、本当にそれに見合っているのか、客観的に自分を評価できていないですよね。その点フリーランスの方は、外に出て、自分の市場価値で勝負している。

小崎 それはすごく大事な点です。1カ月後に仕事があるかどうかはその人次第というところがあるので、本当に毎日が戦場みたいなもの。でもその分、成長カーブを見ていると、皆さん本当に伸びるんですよ。伸びる人だと1年の変化が本当に大きいです。

無批判な働き方改革はNG

田口 そこに大企業の良さを感じる点があるんですよ。大企業は、入社年次の少ない時点でいろいろな経験をさせてくれる。これが後々の個人の市場価値を高める契機になっていると思うんですよね。入社したてのころはある意味でその人の市場価値はゼロ、もしかしたらマイナスかもしれない。そこでいろいろな経験を与えて成長させていくというプロセスがある。

しかし、今言う「プロフェッショナル人材」の枠に、卒業後すぐの若手が参入していってしまったら、できる仕事の幅が小さくなってしまうと思うんです。市場価値が高まっていかないわけです。

小崎 そうですね、小さくなっちゃうと思います。

田口 そういう意味では、ある程度組織にいて、自分の経験値を広げることも重要なのかなと思っているんです。

小崎 それは私たちもそう思っています。やはり10年位会社経験があったうえでフリーランスになる方が多いんですけど、企業と仕事をするには、企業側のロジックとかコミュニケーションのとり方を理解しているほうがうまく行くんですよね。

それに、アンケートを取ってみると、企業経験がある方のほうが健康状態が良かったり、仕事をしながら自分のスキルをさらに磨いていくということができているようなんです。それができない人は、自分の「スキルの貯金」を使い果たすだけになっちゃう。やはり熟練工は貯金を使いつつもちゃんと貯金をしていくものなんですね。

田口 僕は30代がまさにそんな状況でした。社内でいろいろなプロジェクトに呼ばれるんですが、一度やったことのあるものばかりなんですよ。呼ぶ側としては、だからこそ呼ぶわけだし、安心もできるんでしょうけど、こちらはこのままじゃ成長できないんじゃないかとすごく不安になりました。外部評価は高くなるんですよ。クオリティも担保されるし。でも、このマーケットだけでずっと生きていくわけにはいかないと思ったことをすごく鮮明に覚えています。

ある程度まで行ったら、仕事をしながら幅を広げることができるようになるはずで。そこまでいけば、フリーランスになって、業務をこなしながら成長していくという過程に入ることができるんでしょうね。

小崎 熟練工になると、「この領域は好きだから、面白そうだから安くてもやろう」とか「通常時給5000円だけど、これだったら3000円でもやろう」とか、伸びていくために投資をするんです。「学ぶ」というのは何もスクール等に行くばかりじゃないですよね、仕事の中で新しいことをやることも立派な学びです。あとはボランティアやプロボノというのも良い手だと思います。

「あなた」が、「ちょっと」変わるきっかけに

田口 最後にプラチナ大学の講座「わたしブランディングコース」のことをお聞かせいただけますか。プログラムではどんなことをやるのでしょうか。

小崎 Warisの12000人の登録者が抱えているキャリアの悩みに触れる中で感じたのが、「目指すべき先」を持てる人が少ないということでした。

2016年にギンカ・トーゲルさんの本を翻訳して出版したのですが(『女性が管理職になったら読む本』日本経済新聞出版社。ギンカ・トーゲルはスイスのローザンヌにある国際経営開発研究所の教授)、そこで訴えているのは自分のありたい姿やキャリアビジョン、遠くに自分のゴールを設定して、そこに向けてコンフォートゾーンを脱出して鍛えていこう、「そこ」に向かっていこうという話なんです。でも、その「そこ」がない。ビジョンやゴールをうまく持つことができない人が多いんだなということです。そもそも自分に何ができるのかさえ、よく分かってない人もいます。衝撃的だったのは、30年働いている方が「私なんのスキルもないんです」と仰る。そんなこと絶対ないんです。

キャリアビジョンというと、「途上国の労働条件を改善するためにこんなビジネスを立ち上げました」というような、壮大でかっこよくて美しい話をよく聞かされるじゃないですか。でも、みんながみんな、メディアに出てくるような美しいビジョンを描けるわけではないし、描く必要もないでしょう。パッとビジョンを描いて踏み出す人は、そもそも支援を必要としていないじゃないですか。大多数の人は、自分に何ができるか分からないけど、なんか胸の中にモヤモヤしたものを抱えていて、なんとか一歩を踏み出したいと思っている。そういう大多数の人を支援することをやりたいなというのが、今回の講座のコンセプトです。

ただ、小難しいことはひとまず置いて、気軽におしゃべりをしたり、レゴで遊んだりしながら、私こういうことが好きだったんだな、というような気付きが得られるようなところから始めたい。

あと、日本ではまだキャリアカウンセリングに対して馴染みが薄いんですが、何も転職時だけに関わるものじゃなくて、長いキャリアの伴走者だということも知ってほしいと考えています。仕事で悩むことがあっても上司には話せない、家族にも相談できない、同僚にも打ち明けにくい、という方が結構多いのですが、豊富な経験を持つキャリアカウンセラーなら、さまざまなキャリアパターンを知っているから相談しやすいんですよ。例えば、あなたってこういうスキルあるんじゃない?ということを教えてくれたりする。

モヤモヤしてなかなか未来を描けなくても、いろいろな人の力を借りながら自分を掘り起こしたり、キャリアカウンセリングで自分を話してみてフィードバックをもらったりして。最後には、もしかしたらこんなことが好きで、こんなことをやりたい......かもしれない、くらいでいいと思っていて。

でも、その小さな一歩があるだけで、日々の仕事が、仮に90%がルーチンだったとしても、自分の好きに対する自覚があるとそのプロセスをこうしようとか、そういう前向きな気持ちが生まれるようになるんです。それが積み重なっていくと、上司から「○○さん、今度こういう仕事をやってみない?」、と次のステップが生まれてくるんじゃないかなと思います。自分を変えるために、何も突然インドに行ったりする必要はないんです。小さな変化を意識することで見方も変わりますし、それが続けば周りの評価も変わって違う明日を拓いていく。それの繰り返しで、まったく違う10年後になると思うんです。

「自分を知る」から変わる未来

田口 今のお話を伺って、自分のことを理解していない、というところが、先程の発注の話と共通するところがあるなと思いました。発注や、あるいは社内の誰かに何かを頼むのもそうですけど、自分に何ができるのか、そして自分あるいは組織に何が足りないのかを明確化する意識があれば、発注も依頼もきちんとできると思います。一方で、自分の領域を明確化していないときちんと頼めない。それと同じように、仕事を人に頼めない、甘えられない、抱え込んでしまう、というような状況に陥りやすいんじゃないでしょうか。

小崎 そうですね。若い女性はノーと言えない人が多いです。そういう子にいっぱい出会ったことがあります。優秀な子ほど「できます、できます」と言って、気付くとすごくいいように使われてしまって、体を壊して辞めていくということが多いんです。

だから、自分がやりたいことを考えたことさえなかった、という人もいるんですよ。この会社で何をやりたかったんだっけ、とか少し立ち止まって考えるだけで、「いや、キャパフルなので無理です」と断れるようになったりすると思います。

田口 自分を知ることがその第一歩ということですね。以前、マインドマップで自分を探求するワークショップを実施したことがあったのですが、それで分かるのは、自分が考えている自分の価値と、人から見た自分の価値が違うということ。そういう経験から結構ポジティブになったりします。

小崎 「わたしブランディングコース」は、まさにそういうところからやる予定です。ちょっと得意なこと、褒められたことを掘っていくところから始める。好きだから得意なのか、得意だから好きになるのか。お見合いで結婚して好きになるのも、好きで結婚するのもどっちもハッピー。どっちでもいいじゃないって(笑)。

田口 小崎さんって本当に自然ですよね。どうしてそんなに自然でいられるんですか。

小崎 会社を辞めたからかなあ。アルバイト時代、シンクタンク時代、そして今のWarisの仕事へ移り変わる中で、周りの人からの目も変わっていきました。でも、人ってどうしても肩書や立場で評価しがちになりますが、「私」という人間は変わらないんですよね。そうやってフラットな状態でいろんな物事を見ることができるようになって、価値観ががらっと変わりました。

成功し続けていて、人を立場で評価するということをメインストリームでずっとやっていたら、絶対にそこに気付けない。だから1回降りたほうがいい。それは男性も女性も関係ないと思うんですよ。離職したり、1回引きこもってみたり、世界一周したり、そういう経験も、もっともっと価値観を広げるきっかけになるんじゃないでしょうか。

田口 うん、なるほど。分かります。僕が小崎さんと作りたいのは、そういう社会かもしれないです。

仕事においては、いまだに圧倒的男性社会で、働き方改革、女性活躍推進といっても、そこで活躍している女性というのは、やはりどこか男性的な意味で活躍しているということは否めない。

小崎 そうですね、男性社会のシステムに沿って活躍しているということですよね。

田口 男性/女性で分けるつもりはないんですけど、男性システムだけじゃなくて、女性システムというのがあっていいんじゃないかと思うんです。男性がそこで活躍してもいい。つまり、システム自体を、男性型・ヒエラルキー/威張ったおじさん型ではないような......

小崎 どっちが上か見定めるようなマウンティング型とか(笑)、そういうのじゃないような社会ですね。

田口 そうそう。男性も女性も、もっと自然に自分らしくいられる社会。そういう社会のシステムを、働く現場から作れたらいいなと思っています。今日は長い話になってしまいましたが、ありがとうございました!

小崎亜依子(こざき・あいこ)
株式会社Waris ワークアゲイン事業統括/Waris Innovation Hub プロデューサー

金融・資産運用会社を経て、留学・出産育児で5年のキャリアブランク後、NPOでのアルバイトで復職。2007年から金融系シンクタンクで企業のESG側面の評価分析を担当。その後、2015年からWarisに参画。
自身の経験を活かし、キャリアブランクのある女性を対象としたインターンシップ事業を手掛けるとともに、プロフェッショナル女性を対象としたプロジェクト型ワークの創出や多様化推進のためのコンサルティングを行う。明治大学「女性のためのスマートキャリアプログラム」講師、日本テレワーク学会会員。著書に『バックキャスト思考とSDGs/ESG投資』(共著・同文舘出版)、『女性が管理職になったら読む本』(翻訳・構成を担当。日本経済新聞出版社)、『スチュワードシップとコーポレートガバナンス』(共著・東洋経済新報社)、『子どもの放課後を考える』(共著・勁草書房)などがある。

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