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「外堀」ってどこのこと?東京の歴史と魅力は「○○城」にあり!

sotobori-top.jpg突然ですが、質問です。
日本で最大のお城って何城でしょう?
大阪城?姫路城?
いいえ、どちらも違います。
......
それではヒント。大丸有地区でお勤めの皆さんは、必ず毎日目にしているはずです。
......

分かりませんか?答えは、江戸城です。
江戸城???

ピンとこない人もいるかもしれません。今は「皇居」と呼ばれることがもっぱらですが、その実はまさしくお城です。その証拠に、今も江戸、もとい、東京の各所に地名や通りの名前で残っています。「内堀通り」「外堀通り」「赤坂見附」「溜池」「桜田門」「半蔵門」などです。

ichigaya-gomon.jpg「内堀通り」は江戸城内堀沿いに作られた通り、「外堀通り」は外堀沿い、もしくは外堀を埋めてできた通りです。「赤坂見附」の「見附」は見張りの門のことで、「外堀」から江戸城内に入る堅固な門がここにありました。他に、「見附」と呼ばれる地名としては、「四谷見附」「市谷見附」などがあります。「溜池」はその名が示す通り、「外堀」の一部として作られた人工的な池でした。明治時代に入り、各所で堀が埋められ水の流れが澱み、衛生上の理由から埋められたと言われています。「桜田門」「半蔵門」は、ともに「内堀」から江戸城中心部(「内郭」と言います)に通ずる門が現存しています。

forum.jpg少し前置きが長くなりました。去る3月28日(日)に、アルカディア市ヶ谷で、「史跡江戸城外堀跡再発見フォーラム」が開催されました。千代田区主催、港区教育委員会と新宿区が共済、後援は東京都教育委員会と、各自治体が連携して取り組んでいます。

外堀は、総延長14kmに及ぶ長大な堀でしたが、明治以降の開発で多くが埋め立てられました。そのうち、赤坂門から牛込門に至る江戸城西方堀と、虎ノ門周辺に点在する石垣が国の「史跡」として認定され、歴史文化資産を守っています。

外堀が完成したのは寛永13年(1636年)のこと。外堀完成400年を迎える2036年を見据えて、千代田区・港区・新宿区の三区が、外堀の保存・管理・活用の方針を平成20年(2008年)3月に「史跡江戸城外堀保存管理計画書」としてまとめました。今回のフォーラムの目的は、その計画を市民に広く伝えることと位置付けられています。

フォーラムの登壇者は、計画策定にも携わった各方面の専門家の先生方です。先生方の貴重な話を聞きに、100人の定員を超える大勢の人が集まりました。江戸城への関心の高さがうかがえます。

sotobori-tsuribori.jpg当時の形を復元すればいいというわけでも、今残るものをそのまま保存すればいいというわけでもない。景観、水系、ヒートアイランド対策など、現代の都市で必要とされる機能を持たせながらも、歴史資産をどのように後世に受け継いでいくかが課題。
このように、登壇者の方々が口を揃えて発言していたのが印象的です。

江戸城とて、歴史の変遷の中でその姿や役割を変えてきたのが実情です。時代の変化や時代の要請を無視した文化財の保護は成り立たない、ということです。

sotobori-kobutetsudo.jpgたとえば、神田駅を出てお茶の水駅の手前から四ツ谷駅を超えた辺りまで、外堀の土手を走る中央・総武線。明治期に甲武鉄道として開設されたこの鉄道路線も、明治の新首都・東京が、多くの開発スペースと、近代的な輸送手段を必要としたために生まれたものでした。

高層ビルが立ち並ぶ21世紀の東京・大丸有地区。高度に集積した世界でも有数のビジネス・センターの麓には、400年の歴史を誇る巨大な城郭がどっしりと構えています。先行きの不安ばかりが喧伝される昨今ですが、皆さんの足もとにある確かな歴史を忘れてはいませんか?ノスタルジックに過去に浸るようではちょっと問題ありですが、歴史が、東京の新しい魅力や可能性に気付かせてくれることもあるはずです。近くて遠かった、かもしれない江戸城に、新しい時代を切り開くヒントを探してみてはいかが?

*写真1枚目: 会場・アルカディア市ヶ谷から望む外堀
手前が城内。防御のため、城外(外堀通り側)よりも城内(靖国通り側)の方が高くなっています。

*写真2枚目: 市ヶ谷の交番脇にある市ヶ谷御門橋台の跡
江戸時代、ここには立派な城門がありました。

*写真3枚目: 当日の会場の様子
100名の定員を超す大賑わい。皆さんの関心の高さが窺えます。

*写真4枚目: 市ヶ谷橋から望む外堀
橋の袂の「釣り堀」は、まさしく「堀」でした。

*写真5枚目: 外堀の土手を走る中央・総武線(旧・甲武鉄道)
東京の大動脈は、江戸城外堀の土手を走っています。

「史跡江戸城外堀跡再発見フォーラム」

開催日:3月28日(日)
◎第1部 10:00~12:10

  • 個別報告「江戸城外堀跡の特性と文化財保存状況」:後藤宏樹氏(千代田区立四番町歴史民俗資料館
  • 個別報告「江戸遺跡の保存と活用」:谷川章雄氏(早稲田大学人間科学部教授[考古学])
  • 個別報告「外濠の歴史的景観を創造する」:窪田亜矢氏(東京大学都市工学科都市デザイン研究室准教授[都市計画])
  • 個別報告「歴史遺産とまちづくり」:毛利和雄氏(日本放送協会解説委員)

◎第2部 13:10~16:00

  • 主催者あいさつ:石川雅己氏(千代田区長)
  • 基調講演「日本100名城と惣構」:新谷洋二氏(東京大学名誉教授・元日本都市計画学会会長・財団法人日本城郭研究会常務理事[土木史・都市計画])
  • トークセッション:報告者・講演者

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