>日の丸リムジンが3月25日から大丸有エリアでスタートさせた「ゼロタクシー(ZeRO EMISSION TAXI)」。
排気ガスを出さないEV(電気自動車)を使ったタクシーとしては都内初*!ですが、注目のポイントはそれだけじゃありません。
まちの人から直接ニーズを拾い、まちに合わせてサービスを組み立てたという点でも「業界初」。しかも乗った人は高い確率で記念撮影したくなる、されてしまう!?という、相当ユニークなタクシーなのです。
ゼロタクシーに使用する車種は、三菱i-MiEV(アイミーブ)。軽自動車でありながら広い室内、そして静かでなめらかな走りが評判です。常時2台が大丸有エリアを流し走っているので、もう目にしたという人も多いはず。
実際に乗ってみると、後部シートの横幅こそ軽自動車のそれですが、天井が高いので窮屈さは感じません。「わ、結構広い」という感じ。電気自動車ならではの音の静かさと振動の少なさによる快適な乗り心地も評判どおりです。
加えて、運転するのは大丸有エリアを知り尽くした女性ドライバー。歩行者や自転車にも気配りが行き届いた細やかな走りと和やかなトークで、楽しく安心して乗っていられます。「おすすめのスイーツ店に連れてってください!」なんてワガママにも応えてくれそうです。
* 写真 液晶モニタには大丸有の最新情報が
ところで、ゼロタクシーはどんな経緯で生まれたのでしょうか?
日の丸リムジンの富田和宏さん、今井德行さんに聞きました。
富田 : 大丸有エリアでは環境に配慮した交通を実現しようということで、国なども支援する「環境交通社会実験」が行われているのですが、その中にアイミーブを使ったコミュニティタクシーを走らせるという提案が挙がったのです。最初は「軽自動車でタクシー!?」と驚きましたが、2009年の2月と11月に試験的に走らせてみると、利用者からは思いのほか好評だったんですね。それなら本格的にやってみようということで、国土交通省とも協議を重ねて、今回、事業としてのサービス実施にこぎつけました。
サービス実施に際しては、まちにフィットしたものにするために、丸の内OLを対象にアンケート(200人)と座談会(20人)を行い、どんなサービスが必要か調査を行いました。その結果、30~40代を中心にエコで安全、安心なタクシーへの要望が高いことがわかりました。
書類を抱えてハイヒールで歩くことも多いOLのみなさんにとって、タクシーは仕事の移動に欠かせない交通手段というだけでなく、清潔で使いやすい快適な場であってほしい。「タクシー乗車時はハイヒールを脱げるとよい」、「アロマオイルを焚いてほしい」など、女性ならではの視点は非常に参考になりました。ゼロタクシーの「ZeRO」には、ゼロエミッション以外にも、生活者目線での公共交通の原点(ゼロ)に戻るという意味も込めているんです。
今井 : 今後の課題は、やはり急速充電ステーションの設置の充実ですね。もっと増えると、充電の心配なくサービスを提供できます。とはいえ、丸の内から横浜に行く程度でしたら1回の充電で十分にカバーできますから、どんどん利用してください(笑)。
これまでのタクシーとゼロタクシーが大きく違うのは、まちに対してよりフレンドリーなことですね。アイミーブは一般的にはなかなか見られない車だということもあり、このゼロタクシーは乗客や歩行者から記念撮影を求められることがよくあります。こんなことは、今までのタクシーにはありませんでした。乗務員にも運転しやすいと好評です
考えてみれば、エコというだけでなく、まちの在り方やそこで生活する人の視点からサービスを考えたタクシーというのは「ありそうでなかった」もの。でも、考えてみると、まちにあるものを、まちに合わせてつくるのは、当たり前の在り方かもしれません。私たちがこういうものだと決めてかかっていたタクシーへの先入観を、ゼロタクシーは軽やかにくつがえしてくれます。「まちに選ばれる個性的なタクシーを目指します」と話す富田さんと今井さんのお話は、いい意味でタクシー会社らしくなくて新鮮に感じました。
ゼロタクシー、あなたも一度乗ってみませんか?
* 国内では、2009年7月より、柏崎市、松山市、岡山市で電気自動車タクシーが運行しています
「新丸ビルの北側の向かい、日本工業倶楽部会館は趣がありますね。大正9年の建設当時から受け継がれた柱や像に、建物が負ってきた時代が感じられます。エントランスは、日本工業倶楽部の会員でなくても入ることができて、オススメですよ」
(富田和宏さん)
* 写真左 富田さん、写真右 今井さん