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株式会社グランマ 本村 拓人さんインタビュー(後編) -「アポなしで人に会いに行くのもアリだと思う。」

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―とてもエネルギッシュな本村さんですが、その行動力や実行力の秘訣は何でしょう?「やりたい」と言うのは簡単ですが、それを実際に実現させるためのハードルは低くはないはずです

無意識にやってしまっている部分は多いのですが・・・・・・。
まず、自分たちがやりたいことをやっていなければならないと思っていて、そこに嘘がないかどうか、わくわくしているかどうかを大事にしています。これまでのプロジェクトを振り返っても、私たちは初期衝動を継続させられているものしかアウトプットできていないですね。

今回は、プロダクトに出会って、それをつくっている人たちの思いや熱さに触れた。ビジネスとしての可能性を感じた。それを、「私たちが知っているだけじゃ面白くないけれど、もし六本木を歩いている普通の若者がこのプロダクトを指差しながら私と同じような熱さで友達に語りかけているような社会になったら、すごくわくわくするよね!」という誰にでも浮かぶようなイメージが、私たちがこのプロジェクトをやっているモチベーションの源です。

―そのイメージや初期衝動を継続させるのが難しいと思うのですが
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ATERIER MUJIで開催された『世界を変えるデザイン展2』にも沢山の人が訪れた

自分たちがなぜそれをやりたいのかということを、常に考えているんです。何度も何度も仲間と話すし、寝る前やお風呂に入っているときにも考えます。すると、またわくわくし始めてそれが次の行動の原動力になっていくんですね。やっぱり、強く疑問を感じながらやっていることは継続的に考え続けてしまいます。

みなさんも、多かれ少なかれそういうものを持っているはずなんです。でも、世の中には初期衝動を阻害するきっかけががたくさん転がっている。会社だったり、上司だったり、社会の目だったり。たとえば、「明日バーベキューをやって100人で泥警をやろう!」と思ったとする。でも、その行動を起こす前にいろんなことを考えちゃうんですよね。

私はよく、「どうやったらそんなに馬鹿みたいに行動できんの?」なんて聞かれたりします(笑)。私が思うのは、むしろみんな計画を立てすぎなんじゃないかということですね。もっと偶発性のものを受け入れてはどうでしょうか。私は無計画なんです。特に世界を変えるデザイン展のように営利目的ではない活動では、そこまで細部まで決めこんで動いてはいません。それよりも、私自身とつながってくれている仲間達の直感を大切にしています。

もちろん、無計画は怖いですよ。リスクもあります。でも、想定外の出会いこそプロジェクトに後々大きなインパクトを与えたりしますし。行き当たりばったりだからこそ阻害されない思いや気持ちがあります。どちらが正しいとは言えませんが、少なくとも私たちが偶発性や初期衝動を大切にしていることは間違いありません。

また、その勢いがあると、意外とたくさんの人たちを巻き込めたりするんです。『世界を変えるデザイン展』に関しても、計画性も、スキルも、知名度もないからこそ盛り上がったんだと思います。私たちにあったのは、10年このテーマを追い続けるという事、そして10年かけてこのプロジェクトを完成させるという志です。それ以外では、「みんな絶対知ったほうがいいよ!」という今回のテーマに対する自信、それらを伝えていくことに対するわくわく感、そして勇気だけです。

―そうですね。何かをやりたいと思っても、「でも・・・」と制約ばかりが浮かんで、なかなか踏み出せない。でも、恐れずとにかく勇気をもって一歩踏み出すことだ、と
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竹製の自転車など、ユニークなプロダクトが並ぶ

アウトプットを速く出すという気概を持つという事は大切かもしれません。通常世の中で善とされているのは、ちゃんと企画書を用意することだと思うのですが、私はそれよりもアウトプットの速さを重視しています。

今回の話も、まずは六本木で開催された『世界を変えるデザイン展』に、良品計画の土谷さんにお忙しい中わざわざ来ていただいて「世界を変えるプロダクトを本格的に開発したい」とお伝えした。すると、土谷さんも「そうだね。僕もそう思っているんだけど、意義のあるテーマだから、良品計画一社でやるよりも、もっと多くの人や企業を巻き込めないかな?」と言ってくださった。そして有楽町ATELIER MUJIでの『世界を変えるデザイン展2』が実現しました。また、もっと多くの人を巻き込むために企業も消費者も集まれるような場を貸してほしいと土谷さんに相談したところ、すぐに大丸有さんをご紹介してくださいました。

大丸有のご担当者にも非常に前向きにお考えいただき、「既存の活動と連動させながら、継続的にプロジェクトを進めていこう」と言ってくださいました。私の企画書は、そういった数々の対話を経て、それらを"後で"まとめたものなんです。でも、多くの人は構想をまず紙に落としてシナリオを全部書いちゃうんです。坂本龍馬が新しい国家の体制をまとめた船中八策も、連続的な対話と想像の繰り返しで仕上げたものですよね?

もっと言うと、アポなしで人に会いに行くくらいのスタンスもアリだと思う。そりゃ図々しいとは思いますし失礼なのは承知していますが、そちらの方が偶発的なものに出会える可能性があります。それを毎回やってちゃダメですけど(笑)、でも100回やっているうちの1回や2回はやってもいいんじゃないのって、思うんですよね。

私は海外出張の際にアポイント無しで行動することも多々あります。新鮮な情報に出会うと新たな視点が増えてきて、また新しい誰かに会いたくなるんです。物理的な制限がある場合にはかなり失礼にあたりますが、それでもノーアポイントで人に会います。
......これは、あまり真似はしない方がよいかもしれません(笑)。

―話は変わりますが、今の社会についてどのようにお感じですか?
消費社会に寄与するデザインもありますし、「企業のPRでしょう?」と切り捨てられてしまうようなCSRもありますが

sekaidesign5.jpg私たちがデザインやCSRの本質は、そこに関わっている人たちの本心にあると思っています。
デザインやCSRはとてもセンシティブなものです。例えば、企業のCSR活動は企業が何かことを成す上で、そのプロセスに関わっている人、モノ、環境に対してどれだけ思いやりをもって行動しているかが問われます。

また、企業の理念や伝統からその企業がこれまでにどのような社会的な欲求に答えてきたのか、原点に立ち返る行為も非常に重要だと思います。企業がこれまでに伝統的に紡いできた価値観や理念を理解すればするほど、本質的に解決すべき社会的課題が見つかるはずです。

CSRは、トレンドでやることでも、知名度をあげる為だけにやるものでもありません。企業の本来の姿というのは社会的な課題を見つけ、それらを特殊な技術を用いて解決することだと思います。現在のCSRは、利益活動とつながっていないものが多いからなんでしょうか、どこか回りくどいというか本心でやっていない活動が多いと思うんです。

私は、同じことをデザインにも感じています。展覧会を通して多くのデザイナーと対話してきましたが、世の中には本心でつくりたいと思ってつくっていないものが多すぎると思います。今回『世界を変えるデザイン展』が、なぜデザイナーたちに響いたか。彼らの多くは、そもそも"世界を変えるデザインを手掛ける"ためにデザイナーを志したはずなんです。その志が間違っていなかったと思える世界のニーズを展覧会で目にすることができたからではないでしょうか。そう考えると、もっと多くのデザイナーが自身の初期衝動に忠実に行動できる環境をつくる事も大切なのだと思います。

―今後そのような状況は変わると思いますか?また、先ほど「10年かけて」というお話がありましたが、今後の『世界を変えるデザイン展』および株式会社グランマはどのように活動していく予定なのでしょう?

状況は変わっていくと思います。インターネットによって個人の意思を世の中に表明できる環境が広がり、個人の意思の影響力が大きくなり始めています。会社の看板がなければ生きていけない時代はとうに終わっていて、大きい母体がなくても、スキルがなくても、意思を持つことが個人の生きがいになるというか、意思を持っていないとある意味生きられない時代になるというか。

もの作りのトレンドも少品種大量生産から多品種少量生産というトレンドに徐々にシフトしてきていますよね。また、生活や働くことに対する価値観が変わったことで、"組織"が重視されていた時代から"個人"の時代へと、ものすごいスピードで重点が変わりつつあるように感じてます。そんな時代ですから、デザインにもCSR活動にも、もっと個人の本心や想いを乗せやすくなるはずです。そうなれば、必然的にすべては改善されていくのではないかと思います。

現に、個人の思いが会社を動かした社会貢献プロジェクトの事例も多くなってきていますよね。デザインについても、1年前では話題にもならなかった低所得者向けのプロダクト開発が始まっていたりします。

sekaidesign6.jpg私たちの活動については、今から3年間は主にアジアを活動拠点にしながら、現地の課題を徹底的に集めて行こうと考えています。日本でも今回のような展覧会やイベントなどを通じて、なかなか表に出てきにくい社会課題を、デザインを通じて伝えていきたいと思います。

その後は4~5年をかけて協力者を集めながらプロダクト開発に乗り出したいですね。といっても主役は私たちではなく、あらゆるプロジェクトは課題をもっとも身近に感じている"ローカル"な人たちを中心として進めていきます。10年後に、私たちは誰かの世界を変えるプロダクトの設計者になろうと思っています。そのころにはCSRもデザインもまったく違ったものになっているかもしれませんね。


「衝動を大切に」と言いながらも、くっきりと描かれた10年後の姿に向かって確実に歩を進める本村さん。そのポジティブな勢いには、いつの間にか周りの人間にも一歩を踏み出させているような力があるようです(筆者実体験)。
本村さんなどがパネラーとして出演するトークイベントは11月19日(金)にエコッツェリアで開催されます。デザイン、CSR、まちづくり、消費など自分なりの観点で、みなさんも参加してみては?今後の大丸有とのコラボレーションにも注目ですよ!

前編はこちら
株式会社グランマ 本村 拓人さんインタビュー(前編) -『世界を変えるデザイン展』が大丸有を変える!?

世界を変えるデザイン展のその後
~作ってみたいから、作ります。プロジェクト~

ゲスト :
 大和証券 河口真理子
 オープンハウス/東京造形大学教授 益田文和
 良品計画 土谷貞雄
 株式会社グランマ 本村拓人

日時 : 11月19日(金)19:00~21:00
場所 : エコッツェリア(東京都千代田区丸の内1-5-1新丸の内ビルディング1008区)
料金 : 1,000円
定員 : 80名
主催 : エコッツェリア協会 / 株式会社Granma

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 宛先 : info@granma-port.jp (担当:熊坂)
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