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丸の内で"都産都消"実現へ!あの名店のシェフと行く東京農園ツアーレポート

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小坂農園の赤大根

畑から引き抜かれた真っ赤な大根!これはいったいどこの畑?どこかの山村部? と思いきや、ここは紛れもなく、東京都です。11月のある日、丸の内の名店で腕を振るうシェフたちの姿は、この農園にありました。果たしてその目的とは!?

きっかけは、8月に丸の内で行われた丸の内シェフズクラブと農家の「お見合い」と称した試食会でした。これは、三菱地所「食育丸の内」が『都市・東京の地産地消』をテーマに取り組んでいるプロジェクトの一環として、シェフと農家を結ぶために行われたものですが、今回はその続編。シェフたちが丸の内を飛び出し、実際の生産現場である農家に出向く視察ツアーを開催しました。今回は流通業者やフードスタイリストも同行し、様々な角度から"都産都消"の可能性を探るツアー。目的地は東京を代表する2軒の農家です。さっそく気になる現地の様子をレポートでお届けしましょう。

小坂農園(東京都国立市)

〜エコファーマー認定、江戸東京野菜も育てる都市農業の第一人者が育む食の宝庫〜

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右)小坂良夫さん、中)畑の様子、右)黒大根

2haにも渡る広大な農園を持ち、堆肥に東京競馬場の馬糞を使うなどの工夫で減農薬に取り組む小坂農園。エコファーマー(持続性の高い農業生産方式として都知事の認定を受けた農業者)の認定も受けている農園主の小坂良夫さんは、都市農業を守り育てる市民との共同で、年間100種類もの野菜を栽培しています。イタリア、ブラジル原産の珍しい品種にチャレンジする一方、江戸東京野菜と呼ばれる伝統的な野菜を作り続ており、希少な固定種の保護にも貢献されています。

小坂農園の野菜、その種類の豊富さはご覧の通り!土の中に眠っていた色とりどりの根菜類の中には、見たこともないものも。シェフたちは、採れたてのみずみずしい野菜をその場で味わい、品定めをしていきます。

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そして時はちょうどランチタイム。農園内のビニールハウスにて、小坂さんの奥様お手製、野菜たっぷりのお食事をいただきました。甘辛く味付けしたウドやきんぴらごぼう、色とりどりのお漬け物、温かいけんちん汁、などなど。素材の味を生かした"お袋の味"に、シェフも大絶賛!生産地の、まさにその場で味わうなんて、一番贅沢な野菜の食べ方。参加者一同、心のこもった農園ランチを心行くまで堪能しました。

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櫻井農園(東京都武蔵野市)

〜なんと9代目。若手ファーマーが手がける住宅街のオアシス〜

101118_0201.jpg国立市からバスで移動すること約30分。住宅街のど真ん中に、突如緑の大地が現れました。ここは、古くから受け継がれ、現在9代目の櫻井敏史さんがご両親と共に運営する櫻井農園です。有期系肥料やコンポスト(武蔵野市で進めている循環型肥料)などを使って減農薬を心がけ、年間40〜50品目の野菜を栽培しています。若手生産者として注目を集めている櫻井さん。ご覧の通りのさわやかな笑顔で私たちを出迎えてくれました。

櫻井農園では、この時期、色も形も異なる多品種の大根を育てています。今回は、そのうち合計5種の食べ比べをさせていただきました。
食べ比べ用に供された大根は、写真の左から、辛味大根、紅丸大根、青首大根フクホマレ、味一番、聖護院大根。

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それぞれの甘み、辛み、歯触り、水分量などの違いをシェフたちも自らの舌で確かめます。何よりも、生で味わうみずみずしさ、そして醸し出される甘みには、感嘆の声があがっていました。

そしてお楽しみの収穫体験!直径20センチ以上にもなる大根(味一番)を大地から引っこ抜くには、かなりの力を要します。土に根ざして生きる根菜の重みからは、豊かな大地の恵みを感じ取ることができます。キャベツもご覧の通り、水を弾くほどのみずみずしさです!右の写真は春に実るうど畑。イタリアンのシェフが、独特の苦みを持つ「うど」について熱心に質問する姿が見られましたよ。何やら新しい野菜料理が生まれそうな予感です!

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"都産都消"は実現できる?

さて、今回のツアー中、畑や移動のバスの中では、関係者に熱心に質問したり、相談したりといったシェフたちの姿が見られました。今回の目的はシェフと農家の「お見合い」。その成果は果たしてどうだったのでしょうか。参加されたシェフ、そして農家のみなさんに、今回の感想を聞いてみました。

とにかくフレッシュな野菜の味に感動。初めて見る江戸野菜も非常に興味深かった。朝採った野菜をそのままディナーで提供することも、東京都なら可能。その味は、どんな京野菜も適わないはず。旬のものをダイレクトにレストランで提供できる方法を一緒に考えていきたい。 - 「イル ギオットーネ」井之上靖さん

これまでローマから輸入していたイタリア野菜を育てていると知り驚いた。旬の新鮮な食材を取り入れるため、リアルタイムにお互いの情報交換ができるとうれしい。 - 「アンティカ・オステリア・デル・ポンテ」ステファノ ダル モーノさん

自分が作ったものをシェフの方に喜んでもらえて感動している。野菜の旬はわずか一週間で、少しでもずれたものは出荷できない。売り先が決まってから作る方式で、希望に近づけるようにがんばりたい。 - 「小坂農園」小坂良夫さん

野菜を見た目にも美しく食べるためのアイデアや、うどの食べ方など、シェフの声は非常に参考になった。 - 「櫻井農園」櫻井敏史さん

東京で採れる野菜は、やはりその数量の確保が難しく、安定供給が困難であるというレストラン側から見ると大きな懸念があります。しかし一方で、通常は収穫から最低3日はかかる流通の現状を考えると、生産地と消費地、この距離の短さはやはり最大の魅力。様々な課題に対し、農家とシェフ、そして流通など関係者が情報を共有し、一体となって取り組んでいけば、"都産都消"も夢じゃない! そんな一歩先行く都市の食のカタチが見えたツアーとなりました。

確実に前進し、成果を現し始めた『都市・東京の地産地消』への道。大丸有エリアの食への取り組みに、今後も注目です!

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