大丸有(大手町・丸の内・有楽町)と同じ千代田区内、秋葉原にある3331 Arts Chiyoda(以下3331)は旧練成中学校を改修して2010年6月に誕生したアートスペースです。展示スペースに加えてアーティストやクリエイターのオフィスも入居するこの建物の屋上にこの夏、レンタル菜園がオープン!大丸有周辺の都市農園の事情が気になる丸の内地球環境新聞としては、行くしかない!
ということで、3331におじゃまして、3331 Arts Chiyodaプログラムマネージメントディレクターで菜園も担当されている宍戸遊美さんと、菜園を借りているASYLの谷陽子さんにお話を伺いました。
菜園に行く前に、まずは3331を見学させていただきました。建物の前に広がる公園からつながる入口は開口部が大きく、すごくオープンな雰囲気。それもそのはずで、入ってすぐのテーブルや椅子が並んだスペースはだれでも自由に利用することができるフリースペースになっています。 その隣にはカフェがあり、営業時間以外は入居者もレンタルでき、料理家たちとのコラボレーションイベントなどに活用できるそうです。
訪問させていただいたのは午後だったのですが、親子連れの方がたくさんいらっしゃっていて賑やかなこと!その子どもたちのお目当てはフリースペースの奥にあるたくさんのおもちゃです。このスペース「かえるステーション」はアーティスト・藤浩志氏のプロジェクト「kaekko」の一部をなすもので、子どもたちは遊ばなくなったおもちゃをそこにある好きなおもちゃと交換できるのです。 さらに、奥には作業スペースがあり、使えなくなってしまったおもちゃなどを使って新しいものを作るワークショップも計画中だとか。そのスペースの横には使えなくなったおもちゃを使った恐竜のオブジェも展示され、これも子どもたちの人気を集めていました。
1階奥には3331が注目するアートシーンを展覧会として公開するギャラリーがあり、現在は日比野克彦さんの個展を開催中です。展示スペースは海外の美術館などを参考にし、壁の裏に人が入れるスペースをつくるなどして、電源などを必要とする現代アートにも柔軟に対応できるようになっているそうです。
2階、3階にはアーティストやクリエイターのオフィスがあり、4階の屋上がいよいよ目的の菜園です。
宍戸:ご覧になってわかるように、今年は先例がないこともあってやや不作になってしまっているんです。9月に入っていただいた方はいいのですが、8月に入られた谷さんたちの畑は暑さがやわらいだ頃にやってきた虫にやられてしまっています。
谷:(9月に入った利用者の畑を見て)ほんとだ!青い!カブとかすごく大きいじゃないですか。すごい!
一同:笑
左)8月入居の畑、右)9月入居の畑
谷:何といっても虫ですね。とにかく虫がいっぱい出て、本当に憎いくらいです。
谷:これが今までで一番の収穫なんですよ。8月に始めたばかりだということもありますし、いままでは本当に虫にやられて全然できてなくて。だから収穫祭もできていないんです。
谷:当社は立ち上げ時から3331に関わっているので、菜園ができるならせっかくだから借りてみようと思いまして。
左)大収穫のインゲン豆、右)谷さん
宍戸:今、22区画が借りられているんですが、2区画が入居者で、他はみんな一般の方です。近隣の就業者で借りている方々は昼休みと仕事終わりに来られたり、家族で借りている方は週末に、近所のお年寄りの方々は朝早く来られたりしますね。
宍戸:ここに入居しているデザイナーさんとかは皆さんお忙しいので、やりたいと思ってもなかなか難しいのではないでしょうか。やってみれば大変ですが、楽しいんですけどね。私も自分たちの区画の世話をしているんですけど、楽しいですね。
宍戸:この施設自体がサステナビリティを意識して運営していますので、環境面も考えて有機に挑戦したいという気持ちがありました。
しかし、やはり有機での栽培は、素人には難しいので、指導員に月に一度来ていただいて、有機の規定に沿う種などもある程度選んで決めていただいています。有機以外のものを植えると隣の畑に影響を与えたりするので、この農園での活動を保証できなくなってしまいます。ですので、全員に対して均等なサービスが提供できるようにするためにも、こちらである程度のガイドラインを設けさせていただいています。自由に好きなものを植えていいというところまでいければいいんですが、今の段階では難しいですね。
谷:私は、下の階に職場があるので、暇な時にちらっと野菜を見に上がってきたりするんですが、やっぱり気分転換になりますね。
宍戸:パンを持ってきて、野菜を摘んでその場でサンドウィッチにして食べている方もおられたとか。こちらでもテーブルなんかを設置して憩いの場になるようにしていきたいと思っています。皆さんが自分でつくった野菜でランチをとるようになったりしたら素敵ですよね。
3331は施設自体もオープンなもので、菜園も入居者よりも周辺の住民が多いということで、入居者と周辺の住人の境界がない施設だと感じました。千代田区という土地柄、そこで働く人とそこで暮らす人の間には壁があるというか交流があまりないという印象がありますが、この3331にはその壁がないと感じました。
今年は残念ながら不作ということですが、運営側と入居者と周辺住民が経験を重ねていくことで、年々菜園としての形ができていくのではないでしょうか?千代田区という東京のど真ん中の菜園にはどんな可能性があるのか、その可能性を探求する一つの例として今後も注目していきたい場所でした。