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【丸善松丸本舗BookNavi】8月号 「残暑のクールな過ごし方」 ―吉村順三『小さな森の家―軽井沢山荘物語』、高野秀行『世にも奇妙なマラソン大会』など

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松岡正剛氏が大胆にプロデュースし、書店のあり方の可能性を広げたとして、各種メディアから注目を集める丸善本店 松丸本舗と、サステナビリティを考えるまちメディア丸の内地球環境新聞がコラボレーション。その季節にピッタリの本をナビします。

BookNAVI8月のテーマは「残暑のクールな過ごし方」

今回お話を伺ったのは、この方々。
・松丸本舗ブックショップ・エディター 森山智子さん(以下 森山
・松丸本舗 山本佳子さん(以下 山本

○ 8月のオススメ本

  • 『フレーバーウォーター』福田 里香 (著)/文化出版局
  • 『小さな森の家―軽井沢山荘物語』吉村 順三 (著)、さとう つねお(写真)/ 建築資料研究社
  • 『世にも奇妙なマラソン大会』高野 秀行 (著)/本の雑誌社
  • 『空間感/杉本博司 スター建築家の採点表』杉本 博司 (著)/ マガジンハウスCASA BOOKS

アクビ: 世間では"スーパークールビズ"が話題になった今年の夏。扇子や打ち水など昔からの方法が見直される一方で新素材の衣料や現代風の素麺アレンジなど各分野で涼をとるための新しい方法が生み出されています

残暑厳しいこの季節、松丸本舗ならどんな過ごし方をオススメしてくれるのでしょうか。今回は「残暑のクールな過ごし方」をテーマに本を紹介していただきます。丸の内地球新聞からは私アクビこと永野と、次回からこのコーナーを担当する平尾が参加します

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山本: 私からまず紹介するのは『フレーバーウォーター』

アクビ: 見るからに涼しげな本ですね!

森山、平尾: 美味しそう~!

山本: 水をベースにして果物や野菜、しょうがなどを使って水に香りづけをした"フレーバーウォーター"の本です。ジュースとはちょっと違うんですよね。薬効的に身体にいいからというのもありますし、ジュースの本はよくありますが"香りの水(フレーバーウォーター)"というものはめずらしくて、よく売れているんですよ

アクビ: 野菜も漬けるんですか!?

山本: はい。きゅうりのフレーバーウォーターなんかもありますよ

森山、平尾: きゅうり!?

アクビ: 美味しいんでしょうか...

平尾: あれ、みなさんテンションダウン...(笑)

森山: でも、ほら、この本にあるみたいに、きゅうりって皮をとったら見た目はキウイっぽい。味も瓜のような感じですよね

山本: 材料は、きゅうりとレモンと水ですね

森山、平尾、アクビ: へ~~

森山: なんか美味しそう

アクビ: けっこう簡単にできちゃうんですね

山本: 手軽な素材を漬け込むだけです。暑いと火をあまり使いたくないからいいですよね。果物などを煮て、コーディアルという素をつくって、それを水や炭酸水で割るフレーバーウォーターあります。...って、私もまだ自分でつくったことはないんですけどね(笑)

アクビ: そうなんですか(笑)。暑いと清涼飲料水をとってしまいがちですけど、そういうものばかり飲んでいるとバテますからね。こういうものならいいですよね。その上おしゃれ!

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山本: 以前、喫茶店でりんごとミントとレモンが入った水が出てきて、ものすごく美味しかった記憶があるんです。本当にただそれだけの水なんですけどうっすらと香りが付いていて...

森山、平尾、アクビ: 美味しそう!

アクビ: "大根、しょうが、はちみつのフレーバーウォーター"なんていうのも美味しそうだなあ。秋は果物の旬も多いので、自分でアレンジして漬け込んでもいいかも。"ぶどうのフレーバーウォーター"というのも載っていますね

山本: もう一冊は『小さな森の家―軽井沢山荘物語』といって吉村順三さんという建築家の軽井沢のお家の写真集なんですね。戸袋に窓などがすべて入ってしまっていて緑の中に浮いているみたいなんですって。風の吹き抜ける感じがなんとも...

森山: 見ていて涼しいです

山本: そうなんですよ。こんなに緑が溢れている中でフレーバーウォーターを飲めたらいいな、と。写真を見て涼んでいただくのに良い本だなあと思います。秋の紅葉や、冬の暖炉の火など、季節それぞれ気持ち良さそうなんです

森山: 私からは無理やり涼をとるような本を集めてきました(笑)。風が吹いていても「暑い」と思っていると風を感じなかったりするじゃないですか。意識をそっちに向けるというのはなかなか難しいんですが、「ここまでいけば今は涼しいなと思える」という一冊。『世にも奇妙なマラソン大会』という本でサハラ砂漠でマラソン大会をするという...

アクビ: イヤです(笑)

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森山: イヤでしょう?(笑) 作者の高野 秀行さんは、小学生の男子がそのまま大人になったらこういう感じだろうなあというような方で、すごく笑える話がいっぱい載っているんです。マラソンをしに行くのに「イスラム圏はお酒が飲めないからお酒をたくさん持っていかなくちゃダメだ」、なんて言って、あれもこれもと用意していたら集合時間に30分遅れて...。これだけでも暑苦しい話ですよね(笑)

砂漠なので道があってコースが決められているわけではなくて、前を行っている人が右に行ったら右へ。帰ってきても帰ってこなくてもチェックされないみたいだし、42.195キロメートルを履歴で誰も助けてくれない中で走らなきゃいけないらしくて

平尾: そんなマラソン大会があるなんて初めて知りました

アクビ: もしかして給水所もないんですか!?

森山: 全部自分でやらなきゃいけないんです。...と、詳しいところは読んでいただいてから。私より暑い人がいっぱいいるんだと思うだけでも涼しくなる気がしませんか?

アクビ: それよりマシだな、と思うと涼しくなる気がします(笑)

森山: 砂漠だと木陰も全然ないから、それを想像してちょっと木陰を歩いてみようなんてことを考えてみたり。暑いのにあんまり我慢しすぎても良くないんですけど、気持ちをそらすような技を身につけて、涼しさの感度を上げるきっかけになったらなあと思います

東京でも、風鈴の音が一瞬かすかに聞こえてきただとか、夜の風が涼しくなってきたり、種類はわからなくても虫が鳴いていたり。秋が深まっていけばそういう発見も増えていきますよ

...と、一番暑いところまで感度を振っておいて...、

今回このテーマをもらって、谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』にヒントがあるんじゃないかと思って。本をパラパラとめくっていたら、「夏は暗めの照明にするのがいい」とあって。電気を明るくしていると実際に照明から熱が出るというのもありますしね。あと、"手ぶら"っていうのもいいと思うんです。手ぶらで扇子一つだけ、とか

アクビ: 粋ですね

森山: 粋だし、荷物を持たない分汗をかかない。でも、手ぶらってなかなか難しいですよね、特に仕事をしていると。整理をしつつ減らしていくという意味で佐藤可士和さんの『超整理術』や、やました ひでこさんの『新・片づけ術 断捨離』なんかも、いかに手ぶらになるかということなどを考えるのにいいと思うんです。私、先週家の物を45リットルゴミ袋で15袋分物を捨てたんです。そしたらすごく部屋が広くなったんですよ

アクビ: ええ!すごい!そんなに何を捨てたんですか?

森山: 洋服を1/3に減らして、書類やコピーなどの紙類は全部捨てました

アクビ: わたし捨てられないんです。引越し以来の開かずのダンボールがあったり...

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森山: 3年くらいそのまま放っておかれているダンボールとか、ありますよね...。そんなの、もう絶対いらない(笑)。そういう時に、さっきの吉村 順三さんの軽井沢の家だとか、この『空間感/杉本博司 スター建築家の採点表』という本がオススメです。『空間感』は杉本 博司さんというアーティストが、現代美術の展示をしたいろいろな場所についてまとめた本なんです

アクビ: 端正な写真が暑さを忘れさせてくれそう。安藤忠雄やレンゾ・ピアノなど有名建築家の空間が並んでいますね

森山: 家が片付いた時に一瞬、この本にある写真の雰囲気になったりするじゃないですか(笑)。そういうのを忘れないためにこの本をめくる、と。ちょっと照明を暗くして、物が少ない状態というのはかなり涼しいだろうと思うんです。整理術の本もたくさんあるんですけど、ノウハウの前にイメージをつけてはどうかということで、この本を選びました

アクビ: それってすごく大切だと思います。イメージできないとそこにはたどり着けないというか、強くイメージさえできれば案外たどり着きやすいというか

森山: 本当は一ヶ月間外国に行くくらいの荷物で一生暮らせちゃうのかもしれない

アクビ: そうなんですよね! 9割のいらないものに囲まれて生きているような気さえします

森山: いらないものを抱えるために、エネルギーをすごく使っていたりするんですよね

アクビ: 手荷物なんて、わかりやすくエネルギー(体力)を使いますよね。でも、鞄の中のものを一日全て使い切るかというと...、使わない

平尾: いろんなものを持ち運びしやすくなった分、「これも持って行こう」って荷物を増やしちゃったり

森山: 江戸時代の人なんて普段ほぼ手ぶらなんです。前にテレビで見たんですが、深澤 直人さんの事務所も佐藤 可士和さんの事務所も机の上に何もなくて整っていてね。クーラーもよくききそう(笑)。捨てたものはどこに行くんだという話もありますが、まずは自分の身の回りをスッキリさせてみてはどうでしょう

アクビ: 空間があいた分をまた消費するのではなくて、空間を保つように無駄が出ない消費の仕方を考えていくといいかもしれませんね。それにしても、おしゃれな森山さんがよく2/3も洋服を捨てられましたね!捨てた後に「ああ、あれ捨てなきゃよかった」みたいなことってありません?

森山: それが、あるんですよね~。でも、他のもので補うように頭をつかうようになりました

アクビ: あいた空間は知恵で補うってことですね!

森山: そうそう。この秋冬は洋服のアレンジにカラータイツをたくさん買おうかな、なんて♪

アクビ: あれ、結局ものが増えているのでは...? お後がよろしいようで(笑)

丸善本店 松丸本舗

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