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人と社会をつなぐ「家」、日本の未来を家から探る「HOUSE VISION 2013 東京展」

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大丸有はたくさんの高層ビルで構成されています。それは大丸有がオフィス街という特色を持っているからです。しかし、大きく「まちづくり」というものを考えた時には、オフィス街で働く人たちが住まう場所、家のことも考えなければなりません。都会であれば集合住宅、田舎であれば一軒家というようにライフスタイルにあわせて作られる家。最近ではシェアハウスなんていうのも増えて来ましたが、これらの「まちづくり」を考える時、いったいどのような「家」を私たちは建てればよいのでしょうか?そんな「これからの家」を提案する展示会「HOUSE VISION 2013 東京展」が青海で開催されています。

HOUSE VISION

この「HOUSE VISION」は「家」についての日本の潜在力を具体的にビジュアライズする試みとして約2年前にはじまりました。これまで建築家やデザイナー、企業、行政などと研究会やシンポジウムを重ね、様々な可能性を探ってきたのです。その2年間の成果として開催されているのが今回の「東京展」なのです。

原研哉さんと隈研吾さん

開催に先立って行われたプレス説明会で展示会ディレクターの原研哉さんは今回の展覧会についてこう説明しました。「家というのはこれからあらゆる産業の交差点になっていくだろうと思っています。しかし、日本では未だ家を金融商品的な発想で見ることが多く、欧米では8割がリノベーションなのに日本では新築が7割となっています。この現状からそろそろ脱して、自分らしい家を実現するとともに、日本の美意識を未来資源として発露させていくべきだと私は思っています。この展覧会は未だかつて見たことがないような家を企業と建築家が共同で作ろうというものです。これは日本の美意識の具体案を実寸大で提案するもので、どれもわくわくするような見事なものです」。

そして、会場構成を手がけた建築家の隈研吾さんもこう言います。「建築分野で日本人がこれからどうやったら世界で勝負できるかということを考えると、高層建築や都市計画は向かないが、住まいに関することは圧倒的に上手だと思うのです。素材や灯り、身体に対する感覚がダントツに優れています。しかし発信が下手なので、この展覧会でうまくパッケージ化して発信する事が出来れば、これから大きな武器になるはずです」。

つまり、「家」というのは日本が世界と戦えるフィールドであり、実際に戦うためにトップの建築家とトップの企業が組んで全く新しいものを創りだそうというのがこの「HOUSE VISION」だというわけなのです。そして、この会場で提案されている「家」は本当に「見たことのないようなもの」ばかりで、しかも単に斬新というわけではなく、未来や環境をしっかりと考えた技術にも裏打ちされているのです。では、実際にどのような家があるのか見てみましょう。

「住の先へ」。土間にバーベキューもできるテーブルが。

今回展示されている「家」は全部で7軒。1軒目はLIXILと伊東豊雄さんの「住の先へ」。広い土間を採用することで半屋外という空間を作り、そこでバーベキューなどができるという家。中と外が連続していて「自然と共生している」という感覚を強く覚えます。2軒目はHondaと藤本壮介さんの「移動とエネルギーの家」。家の中を座ったまま移動できる移動体「UNI-CAB」が行き来しているというまさに近未来的な家。バリアフリーのさらに一歩先を行っていると感じました。

「地域社会圏」。広い共用部にはカフェや保育施設が。

3軒目は未来生活研究会(メックecoライフ(三菱地所グループ)、三井不動産レジデンシャル、野村不動産、ミサワホーム、東芝、ローム、KDDI研究所、日本ペイント、昭和飛行機工業)と山本理顕さん、末光弘和さん、中俊治さんの「地域社会圏」という集合住宅のモデル。共有部が非常に広く取られていて集合住宅と言うよりは巨大なシェアハウスのようで地域コミュニティの新しい形を提案するものと感じました。

4軒目は住友林業と杉本博司さんの「数奇の家」。建築家ではなくアーティストが設計したこともあり、住まいの新しい形というよりはリノベーションの可能性を追求しアートにまで高めたという印象を受けました。5軒目は無印良品と坂茂さんの「家具の家」。7軒の中で最も「家らしい家」で、家具が家を支えることでスペースを有効に活用していて、「今すぐにでも住みたい」ような家でした。

「極上の間」。壁から床まですべてが緑で覆われたトイレ。

6軒目はTOTO、YKK APと成瀬友梨さん、猪熊純さんの「極上の間」。徹底的に「トイレ」にフォーカス。日本のトイレは世界中で評価されており、日本の文化資源、産業資源とも言えるもの。その「極上」を追い求めた結果はほんとうに驚くようなものでした。最後7軒目は蔦屋書店と東京R不動産の「編集の家」。家のリノベーションを「編集」と捉え、住む人が好みに合わせてパーツや工法を選んで自分好みの家を作り上げていく過程と可能性を提示しています。まさにこれからの都会住まいのカタチですね。

この展覧会で、「家」を提案するということはつまりライフスタイルを提案することなのだと強く感じました。原さんも「自分らしい家」ということを言っていますが、新築建売郊外型住宅ではなく、家もそれぞれが自分らしく「編集」する、そんな時代が訪れようとしているのではないでしょうか。そして、さらにその家というのが中と外を隔てるものではなく、中と外をどう関連付けるかを決めるメディアになっていくという方向性も見えました。一方に「家」があって、他方に「社会」があるのではなく、家も社会の一要素としてそこに関わっていく、これからはそんな風にして新たな「まち」が育っていくのではないでしょうか。


左)「家具の家」のキッチン。右)編集の家のリノベーション素材サンプル。

会場
東京都江東区青海2-1
会期
2013年3月2日(土)~24日(日)
展覧会ディレクター
原 研哉
企画コーディネート
土谷貞雄
主催
HOUSE VISION実行委員会
制作・進行
日本デザインセンター 原デザイン研究所
後援
過去のニュース産業省、国土交通省、環境省
会場構成
隈 研吾
参加企業・建築家
LIXIL×伊東豊雄|Honda×藤本壮介|住友林業×杉本博司|無印良品×坂 茂|TOTO・YKK AP×成瀬友梨・猪熊 純|蔦屋書店×東京R不動産|未来生活研究会 [メックecoライフ(三菱地所グループ)|三井不動産レジデンシャル|野村不動産|ミサワホーム|東芝|ローム|KDDI研究所|日本ペイント|昭和飛行機工業] × 山本理顕・末光弘和・仲 俊治
垂直環境緑化
サントリーミドリエ×東 信
家具
カッシーナ・イクスシー
展示・会場設営
TSP太陽
制作協力
日本ペイント|サンエムカラー|竹尾|東芝|YKKファスニングプロダクツ
店舗出店
代官山 蔦屋書店|スターバックス コーヒー ジャパン(株)|源太郎そば
問い合わせ先
HOUSE VISION事務局