現在、三菱一号館美術館では「奇跡のクラーク・コレクション―ルノワールとフランス絵画の傑作」を開催中です。"奇跡"とうたわれるそのゆえんについて、クラーク美術館シニアキュレーターのリチャード・ランド氏を迎えたプレス発表会で聞いてきました!
三菱一号館美術館「奇跡のクラーク・コレクション」
日本でも人気の高い印象派。今回、ルノワールを中心とし、ピサロ、モネ、シスレーといった印象派の画家の他に、コローやミレーなど誰もが知る画家によるフランス絵画傑作73点を一挙公開、しかも、その3分の2が本邦初公開です。こんな"奇跡"が実現されたのは、クラーク美術館が改修にあたり、初めてこの規模で世界巡回展を行うことになったため。これを逃すと私たちが生きている間に日本でお目にかかることはもはやなさそうです。ちなみに、美術館であると同時に視覚芸術のアカデミックな研究の総合施設でもあり、広大な敷地を持つこのクラーク美術館の改修の設計を担当するのは、安藤忠雄氏、完成は2014年7月を予定されているそうです。
クラークコレクションとは、アメリカの富豪ロバート・スターリング・クラークと、パリのコメディ・フランセーズの女優であった妻フランシーヌが、1910年ごろからパリやニューヨークで収集したコレクションで、その数は絵画だけで500点以上。20世紀に着目したものが多いアメリカのコレクションのなかで、クラーク夫妻のコレクションは夫妻の好みを反映し、印象派と合わせてアカデミズムや印象派前後の作品も広く収集されており、大変充実しているのだそう。このコレクションの存在自体が"奇跡"とのこと。今回、1916年に夫妻が印象派の作品として初めて購入した、ルノワールの「かぎ針編みをする少女」も含まれています。
世界でも有数の印象派美術コレクションとして名をはせるクラークコレクションですが、鑑賞するには、はるばる美術館のあるマサチューセッツ州ウィリアムズタウン(ニューヨークやボストンから車で約3時間)まで足を伸ばさなければならないため、世界中の愛好家の目に触れる機会がこれまであまりありませんでした。貪欲に世界を旅する日本人にとっても出かけるには少しハードルが高い場所ですよね。世界巡回展は、ヨーロッパ、北米をへて、ここ日本を皮切りにアジアをまわります。またとない機会として、これまでの6都市で多くの美術ファンがコレクションに押し掛けました。
展示は、5月26日(日)まで。
展示順や見せ方は各美術館にまかせられているため、都市ごとに全く違う展覧会になっているそうですが、日本では時系列で展示、美術史のさまざまな一面にふれながら、19世紀のフランス絵画の歴史をたどることができます。「作品を展示する作業中、梱包を解いていくたびに、現場の作業スタッフから驚きの声があがった。最初から最後まで楽しめるものになっていると思いますので、ぜひ足を運んでください」(三菱一号館美術館担当学芸員の阿佐美淑子さん)とのこと。
2010年に開館し、今年の4月には4年目を迎える、三菱一号館美術館。3月27日には、貸し切りで展覧会を鑑賞でき、美術館併設のCafé1894で美容サービスやドリンクのサービスを受けられる「丸の内女子会」が企画されたり、フレンチレストラン「ミクニ マルノウチ」や「Café1894」で展覧会コラボメニューが食べられたりと、まち全体でアートをいろいろなカタチで気軽に楽しめる機会も増えています。"奇跡"のクラーク・コレクションと一緒に楽しんでみてはいかがでしょうか!?