朝を楽しく、豊かに過ごす「朝活」ブームの勢いが止まらない。自分磨きやコミュニティづくりのために朝時間を有効に使う人が増えているのだ。テーマも環境や健康、食など多岐にわたり、環境については、環境省が2010年6月に朝型生活へのシフトを呼びかける「朝チャレ!」キャンペーンを開始。賛同する企業・団体や個人の輪が広がっている。民間に目を転じると、「朝チャレ!」の取り組みの参考にしたという[[丸の内朝大学]]の各講座は軒並み満員札止め状態だ。また、英会話スクールでは都市部を中心に早朝クラスの人気が高まっている。官民問わず盛り上がりを見せている「朝チャレ!」など朝活の魅力と楽しみ方などを、環境省、英会話スクール大手のGabaマンツーマン英会話、丸の内朝大学の担当者に、話し合ってもらった。
聞き手:後藤 隆(洛思社)
石川 はじめに私から「朝チャレ!」についてお話しさせていただきます。環境省では、「朝から、気持ちよく始める、エコ。夜には、ゆっくり休んでエコ。」を合言葉に、新しい生き方や働き方を提案する「朝チャレ!」を、2010年6月から行っています。「チャレンジ25キャンペーン」の一環で、6年目を迎え、夏の省エネ活動として定着しているクールビズに代わる次なる展開です。
「朝チャレ!」は健康的であるのはもちろん、地球温暖化の防止という環境保全の視点から大きな効果が期待されています。1時間早起きしてその分1時間早く寝ると、一人当たり年間でおよそ165kgのCO2削減につながるという試算もあります。
井上 6月21日に丸の内ビルディングで行われたキックオフイベントは大成功でした。
石川 あのイベントは、エコッツェリア協会や丸の内朝大学をはじめ、朝チャレ企業・団体の協力を得て実施したもので、朝チャレ!応援団の谷川真理さんによる皇居一周ランニングや、道端カレンさんによる朝ヨガ体験など、イベントの中で朝の過ごし方を具体的に提案した、環境省としてこれまでにないチャレンジです。辺見えみりさん、環境大臣を囲んでの「パワーブレックファースト」では、参加者の皆さんから積極的な意見も聞かれ、楽しみながら一体となって実施できた、好事例だったと思います。キックオフイベント以降、多くの企業や団体が「朝チャレ!」に参加し、これまでに約220社・団体の賛同を得ています。
鬼木 弊社はマンツーマンに特化した英会話スクール「Gabaマンツーマン英会話」を運営していて、首都圏を中心に中部・関西エリアまで約1万8,000名もの方に受講いただいています。1対1で教えるため講師の数も多くなり、50を超える国々からの講師が約800名います。受講生のなかには、自分が出張や旅行で行く先の国や地域のインストラクターを選ぶなど、賢く利用なさっている人も多いようです。
政府は、「温室効果ガスを2020年に1990年比で25%削減する」という中期目標を達成するための行動を「チャレンジ25」と名付けた。チャレンジ25を実行に移すために、環境省が2010年1月に始めた国民運動が「チャレンジ25キャンペーン」だ。さまざまな担い手による活動を通じて、CO2排出量の少ないライフスタイルを提案。これまでにない温暖化防止の取り組みとして注目を集めている。
1 エコな生活スタイルを選択しよう
2 省エネ製品を選択しよう
3 自然を利用したエネルギーを選択しよう
4 ビル・住宅のエコ化を選択しよう
5 CO2削減につながる取り組みを応援しよう
6 地域で取り組む温暖化防止活動に参加しよう
石川 早朝レッスンを行っているのは何校くらいあるんですか?
鬼木 2001年から朝7時開講の早朝レッスンをスタートさせました。現在、大手町や渋谷などの都市部を中心に全35校のうち半数の18校で導入しています。早朝レッスンに対する受講生の反応は好評で、講師の供給が追いつかないほどです。
井上 今年の春からは丸の内朝大学にもご協力いただいていますね。
鬼木 はい。大手町と東京ラーニングスタジオの2校で提携プログラムの「グッドモーニング丸の内?朝からマンツーマン英会話?」を行っています。いずれも人気校で、多くの受講生がビジネス英会話のレッスンを受けているのが特色です。2010年の春には(丸の内朝大学の)マネークラスとコラボ講座を開催させていただき、こちらも大変好評でした。
受講生一人ひとりのレベルとゴールに合わせてレッスンをカスタマイズできるところが、マンツーマン英会話の特長だ。カウンセラーがゴール達成まで親身にサポートしてくれるため安心して英会話を学べる。ビジネスから旅行まで、目的に合わせたレッスンは、レッスン終了後の受講生アンケートでは高い評価を得ている。
他の生徒の目を気にせずリラックスして学べる点、受講生が通うスタジオや講師を選べるシステムや、自由予約制なども人気の秘密だ。
井上 [[丸の内朝大学]]はエコッツェリアを中心に、環境リテラシーを高めるプラットフォームとしての活動を行っています。一人ひとりが「マイ朝」を楽しむことで日々を充実したものにして、クオリティ・オブ・ライフ(QOL)を向上するきっかけにしてもらうことが私たちの目的です。
朝大学のもとになったのは、2006年の秋から行っていた「朝EXPO in Marunouchi」という1週間の期間限定講座です。回を重ねるごとに人気が出て参加者も増えましたが、正味5日間の講座では朝型生活にシフトしてもらうのは無理があります。そこで、「丸の内」の「朝」にしかないオリジナルのコンテンツをつくり、そこに毎週・毎日通ってもらえば、と考えて2009年4月から丸の内朝大学としてスタートしました。
石川 これまで何人くらいが受講しているんですか?
井上 第一期の受講生145名から数えて、のべ約2,500名になります。この2年間に春・夏・秋の計6回開催した講座はすべて満員です。ちなみに冬は寒くて暖房器具などで基礎代謝が上がり、消費するエネルギー量も多いのでお休みにしています。
鬼木 朝大学になって講座の内容はどう変わったのですか?
井上 朝EXPOは朝型の体験企画という性格が強く、ロハスと環境という視点に立ちつつも座禅やマンダラ、ウォーキングやタレントトークなど多種多様な内容でした。一方、朝大学ではまちの側から発信したいコンテンツに絞って、「環境・食・健康・コミュニケーション・伝統」の5つをコンセプトにした講座を中心に、11会場・22クラスで行っています。環境ソーシャルプランニングや農業、祭りについて学ぶものから、心身を整えるヨガやヴォイストレーニングまでさまざまです。朝大学になってからリピート率は高いですね。
石川 東京でキャンプをするなど、個性的な講座が多いのに驚きました。
井上 「東京キャンプ」ですね。都内で平日にキャンプをすることで、アウトドア活動のあり方や自然との共存、低炭素型ライフスタイルなどについて考え、提案していこうというプロジェクトで、環境・ソーシャルプロデューサークラスという講座から生まれたものです。多くの授業にディスカッションやグループワーク、フィールドワークをとり入れている成果ですね。ほかにも、究極のカレーづくりを通じて食料自給率やまちおこしの手法について学ぶ講座などもあるんですよ。
鬼木 朝大学の学生証がスターバックスのタンブラーというのは本当ですか?
井上 そうなんです。当初は紙製のカードサイズの学生証だったのですが、環境コミュニティアクションの一環としてスターバックスさんに協力していただいて、2010年の春学期から、スターバックスの「クリエイト・ユア・タンブラー」に、朝大学オリジナルデザインの台紙を入れたものを「コミュニケーションタンブラー」と名付けて、学生証として使用しています。
石川 「ゴミ削減のために使ってください」とお願いするよりも、とっつきやすいですね。コミュニケーションタンブラーというネーミングに何か意味があるのですか。
井上 朝大学の各クラスは多くても80名ほどですが、全受講生は700名を超えます。その人たちが何のつながりもないのはもったいないですよね。でも、このコミュニケーションタンブラーを持っていれば、受講生だとすぐにわかって声をかけるきっかけになります。実際に同じ会社の先輩や同僚がタンブラーを持っているのを見つけて、朝大学の仲間だとわかったということもあるようです。
鬼木 お店に持っていくと何かいいことがあると聞きましたが。
井上 よくご存じですね。第2回目の受講日の朝に、朝大学で配布しているクーポン券とコミュニケーションタンブラーを丸の内地区にあるスターバックスの店舗で提示すると、ドリップコーヒーが無料でもらえます。朝大学用のレーンもあり、受講生からはお得感と環境への貢献の両面で好評です。
このほかに、協賛店にクーポン券を持っていくとメニューの割引を受けられる「学食」や、大丸有地区のエコポイントシステムである[[エコ結び]]の受講生による利用を促す実験プログラムも実施中です。
石川 朝大学は「ハイタッチ隊」など、講座以外にもいろいろな取り組みに力を入れていますね。
井上 ハイタッチ隊は、その名のとおり出会った人や道ですれ違う人とハイタッチをして、まちを元気にする活動として、2009年秋の環境学部の受講生が「東京で挨拶の大切さを広めて、みんなを笑顔にしたい」と思い立って始めたものです。
ほかにも、コミュニケーションをとり合うことが難しいシーン、例えば電車内での意思疎通を助ける「人と人とのコミュニケーションを補完する」ツールをつくる、NPO法人「さえずりチドリ」も環境学部の修了生が、朝大学の活動の延長で立ち上げたものです。
学びや体験を通じて「マイ朝」を楽しく、充実して過ごすことを提案している丸の内朝大学。学校教育法上の「大学」ではなく、環境配慮型行動の定着を目的として、一般社団法人エコッツェリア協会が運営する市民大学だ。出勤前の1時間を有効活用してもらうため、さまざまな講座が用意されている。
石川 お話を伺っていて、[[丸の内朝大学]]や早朝英会話、「朝チャレ!」などの朝活をする人が増えている背景には、環境など社会的な問題に対する意識の高まりがあるように感じます。
井上 朝大学について言えば、皆さん早起きして時間をつくってくるわけですから、受講生の意識は高く、アクティブで情報発信力があります。なかには週5回、平日は毎日通っているという人もいます。このように熱心な人の間には自然にネットワークができますので、そこへ環境の要素を入れ込むことで情報が広がる相乗効果も期待できます。
最近は、講座をまとめたり盛り上げるためにクラスの中心になってくれそうな人にクラス委員をお願いして、運営やネットワークづくりのお手伝いをしてもらっています。また、クラス委員ブログやtwitterも盛り上がりを見せています。
鬼木 Gabaの早朝クラスは環境にフォーカスしたものではありませんが、受講生に意識の高い人が多いのは朝大学と同じです。また、夕方以降だと予定外の残業などが入ることもありますが、朝なら自分次第で好きなように時間を使えるというのも大きいと思います。
弊社では2010年9月に、20代から40代の会社員の男女1,000名を対象とした自己投資に関するアンケート調査を行いました。その結果、平日は午前5時台に目を覚ます人が多いなど、朝活派が増加している傾向があることがわかりました。朝の時間を有効活用して自己投資を行う人が着実に増えている一方で、それより一歩手前の学ぶきっかけを探している人をどのようにして巻き込んでいくかが課題です。
井上 環境への取り組みについても似たようなことが言えると思います。「環境」と聞くとハードルが高く、なかなか「個人ごと」としてとらえにくいですね。それを個人ごととして認識して参加してもらうには、健康や美容など環境とは一見関係なさそうなテーマからアプローチするのがよいかもしれません。
石川 ある意味で、ギャップをつくることが大事ということですね。私たち省庁の場合、基本的な部分をしっかり押さえないと、新しい意欲的な取り組みに踏み切れないので、そのぎりぎりの線をいかに狙っていくのかが課題です。
井上 そういう意味では「朝チャレ!」の一環である「ご当地レシピ」などは楽しい企画ですね。
石川 ありがとうございます。「ご当地レシピ」は全国から朝ごはんのレシピを募集するもので、先日第1弾を公表しました。
もう一つの「自慢アワード」はいろいろな朝チャレ!の取り組みを募集するものです。主にインターネットで募集や公表を行っていますが、今後は地域の協力を得ることが大切になってきます。先日、全国町村会に伺って「朝チャレ!」の話をしたら、「町や村では、朝から活動することは当たり前」とご指摘を受けました。町や村では、早起きして朝の時間を有効に使うということはごく当たり前のライフスタイルなんですね。むしろ、都市部での朝チャレ!の実践がこれから必要になってきます。例えば京都市は座禅や「朝のコーヒー学」など独自の講座を主催して話題を呼んでいます。こうした各地の取り組みを吸収して、都市で何ができるかを議論していくためにも、できるだけ多くの人の話を聞いていきたいですね。
井上 朝大学では都市との地域連携の取り組みとして、上級者向け写真クラスの受講生16名が福島県の会津で地元の風景や人を撮影するという試みを行いました。普段は会社で働く受講生が自らテーマや場所を選び、都市生活者の目線から会津の魅力を撮影するのが狙いです。作品は丸の内仲通りのカフェで展示しました。「職人さんや生産者さんに、すばらしい作品や生産物によりプライドをもって仕事をしてもらいたい」という撮影者の思いがこもっていて、旅行ガイドやパンフレットとは一味違う作品になりました。また、被写体となった人に写真をお送りしたらお礼の手紙をくださったなど、新しいつながりも生まれ、現在も交流が続いているようです。
企業や地方自治体、学校、NPOなどによる朝の時間帯を使った体操やボランティア、学習などを募集。独自性やユニークさ、CO2の削減効果などを総合的に判断して審査し、優秀な取り組みは表彰する。応募期間は2011年1月21日まで。
朝チャレ!自慢アワード
朝チャレ!ご当地レシピ
料理ブログのポータルサイト「レシピブログ」とタイアップして、アイデアあふれるご当地朝ごはんのレシピを全国から募集。優秀レシピは「朝チャレ!」の公式サイトで紹介する。
鬼木 受講者が撮影した写真を拝見すると、酒蔵や工房など人によって目線や見方が本当に違いますね。それに手紙のやり取りなど地元の人とのつながりは計算してできるものではないと思います。
弊社の英会話クラスはマンツーマンというシステム上、受講生同士のつながりがやや希薄なところがあります。それを解消するためフィールドワークを行ったりパーティーを開いたりしていますが、今日お二人に伺ったお話をもとに、受講生がつながりを深めて英語コミュニケーションの上達プラスアルファの価値を提供できるよう工夫をしていきたいと思います。
また、2011年1月に、Gabaマンツーマン英会話の名古屋ラーニングスタジオを開設するとともに、東京の大手町ラーニングスタジオを拡張しました。両校とも朝7時からの早朝レッスンを行いますので、より多くの皆さんへ朝活に関する情報発信をしていきたいと考えています。
井上 [[丸の内朝大学]]としては「学ぶ場からつながる場へ」をキーワードに、朝の市民講座からコミュニティプラットフォームへの進化を図ろうと考えています。朝大学をきっかけにまちを使って遊んでいただく。仕事以外のまちの話題にも耳を傾けていただく。そんな遊び心を大事にしながら、オフィスワーカーの環境リテラシーを高めていただくために、これからも朝型のライフスタイルを提案していきます。
また、環境政策に興味や関心を持つ人は多いのですが、食などの身近なテーマと違って環境はまだまだ情報の入手や内容の難しさなどまだ敷居が高いのが現実です。最新の環境政策を受講生に知っていただく機会があるとよいですね。
石川 その点については環境省としても前向きに検討させていただきます。多くの皆さんのアイデアをもとに施策をつくることで新たな発見があるかもしれません。国民生活対策室は環境省の営業部隊だと思って、できるだけいろいろな人と会い、チャネルを増やしていくつもりです。
朝チャレ!については、「ご当地レシピ」や「自慢アワード」などの取り組みをより多くの人に知ってもらうために、各自治体や企業・団体の取り組みを通じて各地の情報を集めたり、地方のメディアとタイアップしたりしてコミュニケーションを強化しています。また、公式キャラクターの「朝チャレ!くん」と「朝チャレ!ちゃん」によるツイッターを予定しているほか、ウォームビズと連動するなどしてキャンペーンを拡大します。
今回のお話しを通じて、朝活ブームの背景に、都市で暮らし働く人の多くが失われつつある「つながり」を求めていることがあると感じた。環境省の「朝チャレ!」や丸の内朝大学が人気を集めているのも、人と人、人と地域とのつながりを独自の企画で実現しているところに秘密があるのではないだろうか。朝の学びについては、今後ますます魅力的なプログラムが登場することだろう。ニーズが高い環境や健康などをテーマにしたビジネス英会話の特設講座を、法人向けに開設するのもよいかもしれない。一方、全国各地で活発化している朝活に関する情報をいかに吸い上げ、つないでいくかが大きな課題。この点については、同省が進める「環境モデル都市」などの施策や、朝活に熱心な取り組みを見せる地方自治体との連携に期待したいところだ。
「朝チャレ!」や[[丸の内朝大学]]、早朝英会話以外にも、充実した朝を過ごしたいという人のためにさまざまなサービスや商品が登場している。そのいくつかを紹介する。
最近、首都圏で朝のまちなどを軽やかに走るランナーの姿をよく見かける。スポーツバイクなどの自転車で通勤する人も多いようだ。こうした「朝ラン」や「ジテツウ(自転車通勤の略称)」を楽しむ人にシャワーなどの施設を提供するとともに、ランナーのコミュニケーションの場としても人気なのが「ランナーズステーション」、通称「ランステ」だ。皇居からほど近い神保町と麹町、そして青山と都内に3店舗を構え、会員はもちろんビジターも1回700円でロッカーやシャワーを利用することができる。しかも、平日の朝には朝ランやバイクへの割引適用もある。
ランステを始めた理由を、専務取締役で広報担当の浅川美幸さんは次のように話す。「郊外に住む方が自宅近くで朝ランしても、通勤の満員電車で疲れてしまっては意味がありません。それよりも混んでない時間帯に就業地の近くへ移動して走り、身支度を整える方が心身ともにリフレッシュできて一日の効率も高まると考えました」。また、東京では自転車通勤したくても駐輪場やロッカーなどの備品がないオフィスが多いが、ランステがあれば気軽にジテツウに挑戦できる。ランステでは「朝チャレ」との連動企画や東急電鉄の「早起き応援キャンペーン」への協力にも取り組んでおり、今後も「朝活」を楽しむ人をサポートしていくという。
朝の身体への水分補給とスッキリとした目覚めなど、1日のスイッチを入れるため、飲み物を取る人は多い。飲料大手のアサヒ飲料はこうしたニーズに対応して、「朝」に注目したドリンク類を開発、提案している。缶コーヒーの「ワンダ モーニングショット」は20代〜40代の社会人にターゲットを絞り、コクがありながらもスッキリとキレのよい後味を実現することで朝の気分転換に適した商品として好評を得ている。また、「アサヒ十六茶」も30代の男性や主婦を中心としたファミリー層をターゲットに、カフェインゼロの「朝の健康ブレンド茶」としてリニューアルした。同社のこうした戦略、実は明確なデータに裏打ちされたものだ。
アサヒ飲料は、ビジネスマンと新社会人予備軍の学生を対象にした「朝」に関する意識調査を2004年から3回にわたり実施し、その結果を商品開発やキャンペーンなどに反映してきた。2010年の最新調査によると、朝時間を大切にする人の数が年々増えており、資格や語学の勉強などに活用しているビジネスマンが増加。さらに、8割近い人が始業前の朝時間を有効に使いたいと回答している。また、朝よく飲む飲み物の1位はビジネスマンでは缶コーヒーで、学生ではお茶系飲料という結果も出ている。朝活の動きが活発化すればするほど、この傾向は高まっていくだろう。
朝早く起きて趣味や運動などで充実した時間を過ごすことが、健康や環境に良いことはもはや常識。でも、「朝活をがんばろう」と言われてすぐに取り組める人ばかりではないし、「何かやらないと」と思う一方で「辛いことはイヤ」という人も多いはず。大手食品メーカーのカゴメは2010年、こんなもやもやした気持ちを抱える若者を主なターゲットに、人気商品「野菜生活100」シリーズのキャンペーンを実施。特設ウェブサイトを開設したほか、各種媒体での広報活動や消費者キャンペーンを展開した。もともと野菜ジュース自体、朝に飲まれる傾向があり、キャンペーン化につながった。
キャンペーンでは、タレントの上地雄輔さんとゆるキャラの「アサカツ鳥」が共演したテレビCMが話題を呼んだ。なかなか早起きできない上地さんを、アサカツ鳥が応援するというコント仕立てだ。「身体に良い野菜ジュースを飲むことも無理なく手軽にできる『朝活』の一つであると伝えるため、優等生的ではなく若者が共感しやすいメッセージによるコミュニケーションを図りました」(同社広報IR部)。カゴメは今後も効果的な切り口として、「朝」の訴求を検討する考えだ。
環境省地球環境局地球温暖化対策課 国民生活対策室国民対策企画係に在職。チャレンジ25キャンペーンなど、ライフスタイルやワークスタイルの見直しによる温暖化対策の普及啓発に取り組む。趣味はサッカー。栃木県出身。
http://www.challenge25.go.jp/asachalle/
株式会社GABA マーケティング部門PR担当。英会話スクール「Gabaマンツーマン英会話」に関するPRイベントの企画運営や取材対応などPR全般を担当している。冬になると国内外で趣味のスノーボードを楽しむ行動派。埼玉県出身。
http://www.gaba.co.jp/
http://twitter.com/John_Monjirou
三菱地所都市計画事業室の環境ユニットで働くかたわら、一般社団法人大丸有環境共生型まちづくり推進協会(エコッツェリア協会)の環境イベントディレクター・広報を担当。「丸の内朝大学」などの企画・運営に携わる。「マクロビ・フード・コンシェルジェ」の資格を持つ。岡山県出身。
http://www.ecozzeria.jp/asa-univ/
http://twitter.com/asadaigaku