過去のレポート都市の“グリーンワークスタイル”を探る

共感による相互理解からリアルなつながりへ(小林正明氏、佐藤博之氏、井上成氏)

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1. 「エコ結び」による環境貢献と森林の現状

大丸有エリアでは2009年10月よりSuica・PASMOを利用して、就業者や来街者の環境貢献を促す「エコ結び」を実施している。11年10月にはさらなる拡大を目指してリニューアルを行い、利用額の1%を積み立てる「エコ結び基金」の活用をとおして、地域との継続的なつながりが生まれている。震災被災地の復興のみならず、日本全体の再生へ向けて都市と地域の連携を深めるための方策について、エコ結びをきっかけにつながった3人のキーパーソンに語り合っていただいた。

1. 「エコ結び」による環境貢献と森林の現状

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井上: 現在、大丸有エリアには約23万人の就業者がいます。この23万の皆さんの消費パワーというのは、大きいものがあります。それを環境共生型まちづくりに生かしていこうと、2009年10月からスタートしたのが「エコ結び」です。

当初はSuica・PASMOで買い物や食事をすると、利用金額の1%が「エコ結び基金」にたまると同時に、支払った人もポイントがもらえて「企業のもったいない3R商品」との交換や植樹活動などへの投資に使えるというものでした。ところが、実際に運営してみて、ポイントやモノがもらえるから環境行動する、というので本当にいいのかという疑問が生じてきた。それよりは、自分たちの消費行動をとおして集まった基金が、環境や地域のために活用されていることに共感・賛同してもらってはじめて積極的な参加に結びつくのではないか。そう考えて昨年10月に会員システムによるポイント制度は終了し、、エコ結び加盟店でSuica・PASMOで買い物をするだけ、という誰でも気軽に参加できる方式へ移行しました。

そんな中、東日本大震災で東北地方を中心に大きな被害が発生したこと、加えて大丸有は紙を大量に消費しているエリアであり、緑の保全を支援することに対してエリアの皆さんの共感が得られるだろうということで、昨年のリニューアルに伴い、フォレストック協会の認定森林である岩手県葛巻町と釜石地方森林組合の森林保全活動を「エコ結び基金」の投資先の一つに選んだわけです。森林を守ると同時に被災地の雇用促進支援ができる、という点が選定の理由でした。基金の投資先は、消費者の皆さんが本当にいいと思うものでなければならないし、ただ資金を拠出するだけではない、地域とのリアルなつながりの構築へ向けて試行錯誤しながら運営しています。

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小林: いま森林整備がなかなか進まない中、木材価格の低迷により林業経営が成り立たない状況にあります。事業として成立させるためには"森の担い手"育成が必要ですが、森が好きで守りたいという人がいても、年収240万円程度では、林業へ転職して家を建て、子どもを育てて社会に送り出すという人生のサイクルを回していくのは非常に心もとない。そこで、森林整備のための資金を、都市あるいは企業から流れてくる仕組みをつくる。そして、森を守っていく人を増やして、森の環境整備や共生に貢献することを目的として、フォレストック協会が設立されたわけです。

森林を守ろうと頑張っている人は全国にたくさんいますが、単なる環境保全でなく林業としてしっかり活動している皆さんに、森林整備の資金調達にフォレストック協会を活用しませんかとお声がけをして、いま約20の森林に資金を提供しています。木を守るだけではなく、木を使って森林を守るという循環を生かす。そういう活動を大丸有エリアで働く皆さんに評価いただいて、エコ結び基金の投資先に選んでいただいたのは本当にありがたいと思っています。

佐藤: アミタグループは1977年の創業以来、持続可能な社会の実現に向けて、資源リサイクルをはじめさまざまな分野で「循環型システム」をつくるお手伝いをしていますが、今回の震災を機に改めて自然と共生した暮らしと生業づくりにチャレンジしていこうということで、昨年7月に仙台市に東北オフィスを開設したわけです。現在、被災地でどう仕事をつくり出していくかに取り組んでいます。仕事がなければ故郷を離れるしかないわけですから、地元にある資源を生かした産業づくりに奮闘しているところです。

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森林ノ牧場のホームページ

森は木材のほか水源、燃料や肥料の供給源など、さまざまな役割を担っていますが、価格面から輸入木材に太刀打ちできない状況の中で、理念だけでは森の復活は難しい。経済的に成り立つ方策が必要です。そこで、アミタグループでは森林酪農という事業を展開し、「森林ノ牧場」をつくりました(*1)。森林の管理には下草刈りが欠かせませんが、林業従事者の高齢化もあって放置されている森がある一方で、酪農家は餌の輸入価格が高騰して困っている。それなら森の下草を牛の餌にしてはどうかと。森に牛を放してみたら森がきれいになり、餌代もかからない。一石二鳥なわけです。真っ暗で人を寄せ付けなかった森が都会の子どもたちも楽しめる明るい森に変わりました。

林業は50年・100年という長いサイクルで経済が回ります。では、いま50年先を見越して投資ができるか。これだけ世の中動きが早い中でなかなかできない。しかし、森に牛を放牧することによって、毎日牛乳が絞れて現金収入が上がりますね。長期的な経済サイクルに短期で稼げるビジネスを組み合わせることで事業として成り立つ。これは小さなチャレンジですが、都会の人たちの大きな共感を得ることができました。美しい森に生き物がいることで、ものすごく関心が高まっています。「牛たちがどれだけ成長したのか、ぜひ見たい」とか、「来てみたらビックリした」と感動を生んでいます。人は感動を求めていますので、それを提供することができれば、また来てもらえます。そういう新たな関係を築いていきたいですね。

エコ結び

*1 「アミタ株式会社」は、2007年12月から2011年3月の3年間牧場関連事業を実践した後、「森林ノ牧場株式会社」へ事業を譲渡しました。現在は、当事業から得られた地域資源の循環型活用等に関するノウハウの展開を行っています。

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2. 顔が見える関係とストーリーをつくり出す

2. 顔が見える関係とストーリーをつくり出す

井上: 地域連携を考えたときに、私たちが対話する相手、働きかける相手は誰で、どの人と一緒にやれるのか、まず相手を探すことから始めなければなりません。私たちが連携を求めて現地に足を運ぶだけではなかなか難しい。その地域をうまくまとめている母体がなければ、心理的なハードルはなかなか下がらない。地域のコミュニティとしっかりバインドして、ともに成長していきたいのですが、都市と連携した地域のコミュニティを再生していくためには何が必要でしょうか。

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佐藤: 都市の皆さんから地域コミュニティの顔が見えないということですが、その逆も同じ状況です。これまで地域でつくったものは漁協・農協に出荷したら終わり。お客さんが見えていません。漁師さんに聞いても、どこで食べられているか知らない。直販なら、それはわかるわけですね。そういうルートをもっている生産者は「お客さんが待っているから」と生き生きとしている。ですから、お客さんとつながる関係を築いていくことが重要ではないかと思います。

小林: おそらく、地域の皆さんに一番足りないのは営業力というか、マーケットが何を求めているかをつかんでいないことです。林業や農業、漁業は個々の事業規模が小さいため、農協や漁協などの業界団体がとりまとめて出荷・販売しているのですが、そういう経済合理性のもとで、自らの手で販売することによって得られるものを捨ててしまっているところもあると思います。苦労してでも自分で売っていくことが、一番お客さんの顔が見えるし、リピートも生まれ、利益もとれるわけですよね。丹精込めてつくった限りは全部食べてほしい、そういう想いをもって自分たちでできる努力をしていけば状況は変わってくると思います。

木材でいえば、もう何産なのか見えなくなってしまう。合板になると生産地もわからない状態です。ですから、少しでもマーケットというものを感じられる場面を提供することが、気づきを得るきっかけになるのではないかなと思います。

佐藤: 量と効率という従来の価値観、やり方から抜け出さなければ、地域が都市に従属した構造が続いてしまいます。大量生産と効率化という、たとえば中国でもどこでも同じものがつくれて安いというフィールドで勝負すれば、地域の生産者は負けてしまいます。過疎地というのは条件が悪いからそうなっているわけですから、条件をよくして勝負しようという発想がたぶん間違っている。では、私たちはどこを狙うべきかというと、"機能性商品"より"共感性商品"ではないでしょうか。共感を得るには当然、モノだけでない人の関係性、ストーリーがなければなりません。そこでのつながり方としては、近い距離感、スモールサイズ、ヒューマンスケールですね。人間同士のつながりを掛け算していくようなやり方でなければうまく行かないのではないでしょうか。

これまでの、たとえば製材工場でドーンと1万tつくって販売しようとしていたやり方でなく、まず100tから始めましょうと。それで100tを使う人と共感関係ができたら200tに増やす。それを掛け算で5倍・10倍にしていくことで同じような関係をつくっていくことです。それをいきなり1万tの関係を目指すと、大きな設備や補助金に頼ることになってしまいます。そしてその先には中国との競争、みたいな話になりかねませんね。

井上: 距離が近くなれば共感しあう機会がある。共感しあえば、買う側はともに成長するというコミットする関係になります。そうなれば消費者は少しくらい高くても価値を感じて「買おう」となりそうですね。

佐藤: それは商品にもよりますね。たとえば、先ほどの「森林ノ牧場」で生産する牛乳「森林ノ牛乳」は630円(500ml)で、普通の牛乳の5倍はしました。実際、とてもおいしいのですが、通常の牛乳と比べる人はまず買わない。まったく別物として「この牛乳がほしい」から買っていく。「森の中で牛が育つの?」というような関心と、自宅に帰って「この牛乳はね・・・」と話をしたい、その時間を買っているようなところがあるわけです。家族とすごす楽しい時間や子どもの笑顔のために630円をお支払いいただいている。すべての牛乳がそうなるとは思いません。一般的な"機能性商品"と比べられない市場をどうつくっていけるのか、それが課題だと思います。

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フォレストック協会「釜石地方森林組合の管理森林~三陸復興の森 希望~」を紹介するホームページ

小林: ストーリーが大切ですね。単なる情報発信でなくて、そこに至る経緯などのストーリーを垣間見られるようにする。それが消費の場面で「ちょっと応援しよう」となって行動につながるのでしょう。。顔が見えるのもストーリーを感じることにつながると思います。そういうストーリーに対して価値を見い出して、共感していただけているのではないかと思います。

しかし、林業の中で共感を生み出すのは難しく苦労しています。フォレストック協会では森にサブタイトルをつけて、特徴的な写真をホームページにアップしていって、「こういう森なんです」と、歴史的背景を含めたストーリーを語り、想いを伝え共感していただけるように工夫をしています。岩手県葛巻町の森林は「森林資源の循環利用と持続可能な森林『くずまき高原の森』」、釜石市の森林は「三陸復興の森 希望」とつけています。

佐藤: 森だけで何とかしようとするのは難しいかもしれませんね。たとえば森と海とつなげてみるという手もあります。三陸は牡蠣が有名ですが、森の栄養が海に注ぎ込み、プランクトンが育ち、そのプランクトンを栄養源にして、おいしい牡蠣が養殖できるわけですね。ですから、「この牡蠣はあの森があるからだよ」と、牡蠣を牡蠣だけで売るのでなく、間伐材でつくった割り箸と一緒に売るなど、割り箸と牡蠣を一緒にマーケティングできれば、それぞれの価値が生きてくると思います。また、「鮭は森に向かって上っていく」と言う人がいますが、鮭をとおして豊かな森を見るとか、森・里・海が連携すればそういうことができるわけです。都市と地域の連携にあたっても、森林業者や漁業者だけでない地域内でのつながりが、強みになってくるのではないかと思います。

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3. 地域の豊かさをプロデュースで連携

3. 地域の豊かさをプロデュースで連携

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小林: 一次産業は素材産業と同じように、生産する担い手の顔やプロセスが見えてくると、苦労を評価したり感心したりと共感につながります。最近、工場の生産ラインを見せるTV番組がたくさんありますが、何かわくわくするところがありますよね。ですから、林業でもそういうストーリーを見せていけばどうだろうと考えています。

植林体験ツアーというものがありますが、私は植林よりも伐採をすすめたいですね。たくさんのストーリーが語ることができるからです。100年という歳月をかけて成長した木を切り倒した後、くじらのように木には無駄なものがどこにもないことを、説明してあげる。切り株を見ながら木を100年守ったことに想いを馳せる。伐採の音や森林を吹きわたる風を感じたり、猪や鹿が飛び出してきたりと、いろんなことが起こります。これは、ただ何本かの木を植えて水をかけるだけでは得られないものだと思います。

井上: 感動を生み、記憶に残るのは、そういう刺激的な体験のほうでしょうね。そういう共感体験やストーリーの見せ方に工夫が必要ですね。まちの緑化でも、デザインが必要です。エリア内での調査によると、良好な外部空間は人の滞在時間が長くなる、という結果が出ています。ただ緑を配置するだけではだめで、緑視率というのでしょうか、人にとって心地よい緑の見え方が大切なようです。都市で心地よい環境をつくるためのデザインが求められているのと同じように、地域コミュニティの中で自分たちのリソースの価値に気づいて、それをデザインするセンスを磨いていく必要があると思います。

佐藤: 薄っぺらく見えてしまうと、気持ちが冷めてしまいますね。「森を守る」と言っている地域がまちに木を使っていないということもあります。ディズニーランドはすごい努力をして夢の世界をつくっています。私たちが旅行で「また来たい」と思えるところは、一つの名所だけでなく、たとえば「温かかいおもてなし」等を含めたトータルな体験や印象がリピート要因になる。ですから、被災地の復興でハードをつくるときには、そこに徹底的にこだわるべきです。自然との共生や循環、暮らしなど、その地域ならではのライフスタイルをデザインしていく。憧れや共感を呼ぶライフスタイルやストーリーがあってこそ、商品も買ってみようとなるわけですから。

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井上: さらに、いいものがあったとしても、それをどう伝えていいのかがわからないという状況があるわけですよね。丸の内朝大学では、地域プロデューサークラスがあります。そこでは、たとえば三重、新潟の地域活性の提案を行っていますが、クラスの生徒は縁もゆかりもない地域に何度も足を運んで、地場の企業の人と会って活性化策を提案するなど、さまざまな活動が生まれています。しかも、クラスが終わっても交流が続いている例が多い。現地の人と語り合ううちに、きっと何かに感動したんですよね。地域に埋もれているものがあり、発信できないのであれば、そういう人材を取り込めばいいと思います。私たちはこの大丸有エリアでそういう人材を育てる。そして、地域、例えば三重県や新潟市はそういうやる気のある人を雇うと。東京と地域との距離を縮める、近さをつくり込んでいくことはできそうですね。

小林: そのとき、地域側は心を開いて人材を受け入れる気持ちが必要です。地域の人にとって都会は憧れであると同時に、苦い経験をしたこともあるわけで、まだ都会者を信用していしていないところがある。ですから、うまく心を開いてあげて、こちらも開く。それができれば若者へのニーズはすごく高いわけですし、飛び込む人材と受け入れ側がうまくフィットすると、いろいろな化学反応が起きてきます。人材供給拠点として大丸有からどんどん送り込んでいければ変わっていくでしょう。

佐藤: いま私たちがやろうとしているのは、"地域プロダクション"をつくることです。従来の枠を超える、よそ者の息吹を吹き込むような仕組みで、地域の豊かさをプロデュースしてほしいところと、そういうものに「いいね!」という大丸有のワーカーとつないでいくようなイメージです。そこから、「行きたい」「買い続けたい」という共感商品群を一緒に開発するようなことができたら面白いな、と考えています。

井上: 丸の内朝大学の地域プロデューサークラスのほかにもいくつか連携できそうなところがありそうですね。これまでの企業ベースのコミュニティではない、まったく違うテーマで集まったコミュニティ。たとえば地域活性化や医療というテーマのコミュニティをつくって、そのメンバーたちが地域の皆さんと一緒にサービス開発をするといった取り組みをスタートしようとしています。

佐藤: もし首都圏を震災が襲ったとき、大丸有エリアは23万人の食糧をどう確保するのか。現在でも、水や食糧、エネルギーを地域に頼っているわけですが、そういう地域と防災協定を結んで、いざとなったら家族を一時、預けるというようなこともできるのではないでしょうか。今回の震災では東京から多くのボランティアが地域に入りましたが、東京が被災したときには地域から提供できるものはたくさんある。互いに支えあう、安心を土台にした交流関係をつくっていけないかと思います。

井上: それは大いにありえますね。防災面での地域との連携については実際に議論を重ねていますし、いろいろなアイデアも出ています。エコ結びでつながっている釜石市や葛巻町と「地域防災で連携します」とやれそうな気がしますね。地域プロデューサークラスで地域に足を運んでいる人たちなんて、いざとなったら地域の誰かのところに寄宿することくらいなら、すぐにできるでしょう。ふだんから顔が見える関係でつながっているからこそ、できることですね。

佐藤: 自治体同士の防災協定よりリアリティがありますね。夏休みにおばあちゃんのところに帰省するという感じで、「何かあったら、あのおじさんのところに行くのよ」という関係ができていれば、子どもも安心して行きますよね。"お互いさま"という関係ができていれば、都会に住んでいても心の平安が保てます。

丸の内朝大学

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4. 社会貢献の枠を超えた相互関係をつくる

4. 社会貢献の枠を超えた相互関係をつくる

佐藤: 地域を再生し、日本全体を持続可能な社会に再生していくためには、全体最適をどう実現していくのかが重要だと考えています。地域には、これまでの価値基準であった効率化や個別最適とは異なるものがあります。自然の生態系がもつような全体の調和、という感じでしょうか。それを生かしていく視点が地域には重要ですし、都市にはそれが欠けているから地域との連携が必要だ、という関係性を築けていけばいいなと考えています。そのために、事業を通じて東北地方の被災地の復興に取り組み、持続可能で希望のもてる未来を、皆さんとともにつくり出していきたいと思っています。

小林: 都市と地域は"与え・与えられる"関係でなく、経済的に自己完結していることが大事です。地域として自立できている状態にした上で、地域の取り組みに共感をもって応援をしていただく。そうすれば、さらに互いに発展できますし、持続できるでしょう。私たちはそういう地域と都市との相互関係を後押ししていくことを目指しています。

林業は森を守ることばかりにお金をかけていましたので、しぼんでしまっている流通を何とかもう少し広げていきたい。国産材の消費拡大の仕組みをつくることに加え、協会自身が製材加工会社を運営していくということも選択肢にあります。現在、CO2吸収量という目に見えないものを売っていますが、目に見えるものにもさらに力を入れていきたい。林業全体を底上げするモデルの一つになることを目指しています。そのために自治体、民間企業を問わず、日本の木を使いながら森林を守っていくという考えに賛同し、アクションしていただけるよう、さらに努力していきたい。コストの問題はありますが、企業の皆さんに日本の木材を使ってもらえるように、情報発信を行っていきます。

井上: 「大丸有 環境ビジョン」には、「ほかの地域に支えられていることへの責任を果たすまち」というフレーズも掲げられています。私たちは地域に支えられていることをもっと自覚しなければなりません。その上で、私たちにできる活動を行っていく。エコ結びでも、私たちは支援しているという意識から、実は支えられていることに対するささやかなお返しというマインドセットが必要だと実感しました。

今後、社会貢献という枠を超えてビジネス面を含めて共存共栄できる仕組みをつくることの重要性を、エリア内外に発信していくとともに、その実現へ向けてのプロジェクトへのフェイズに踏み出していきたいと思います。

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小林正明

小林正明(こばやし・まさあき)

一般社団法人フォレストック協会副理事長。1960年東京都生まれ。フランスのNGO団体に参加し、ザイール、タイで井戸採掘を行う。学習院大学卒業後、25年間金融業界にて融資・投資・企業再生分野に従事。2010年2月に設立されたフォレストック協会に参加し、林業再生のための整備資金が都市から森林へ循環する仕組みの運営管理に従事し、認定制度を広げるため活動中。
http://www.forestock.or.jp/

佐藤博之

佐藤博之(さとう・ひろゆき)

アミタホールディングス(株)事業開発東北チーム・チームリーダー。民間シンクタンクを経て1996年から(財)日本環境協会に勤務。グリーン購入ネットワーク(GPN)を設立、GPN事務局長・専務理事を務める。2008年よりアミタ(株)に合流。11年7月に新設されたグループ東北オフィスの特命担当として、森林の再生、エネルギー・資源の循環利用等の事業を通じて、被災地の持続可能な復興・再生に取り組む。
http://www.amita-net.co.jp/

井上成

井上成(いのうえ・しげる)

エコッツェリア協会事務局長・三菱地所(株)都市事業室副室長。1987年に三菱地所(株)入社、商業ビルの企画開発部門、経営企画部門に所属後、99年より経済協力開発機構(OECD)パリ事務局に出向、地域開発政策部門のエコノミストとして勤務。2003年より現職。06年にグッドデザイン賞金賞を受賞した「大手町カフェ」、07年に同グッドデザイン賞を受賞した「エコッツェリア」のプロデューサー。エコ結び実行委員会事務局長を務める。
http://www.ecozzeria.jp/

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編集部から

日本の国土の約7割を占める森林。都市生活においては、そこが木材・紙・水・食糧・エネルギーの源であり、私たちは森林(地域)に生かされているという事実に思い至ることは少ない。豊かな森林(地域)があってこそ、もたらされる持続可能な豊かな社会。そのために一人ひとりが地域に関心をもちコミットしていくことが大切だと感じた。

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