3つの町が特徴を出しながら串団子のようにつながっている。それが不思議な魅力を出しています。皇居に隣接して日本の「顔」の意味を持つ丸の内には「品格」が必要です。大手町は大企業の本社が並ぶ日本経済の中心で、人目を引く「風格」に満ちた印象を受けます。有楽町は庶民的な店が多く、活気・活力があります。バリバリと大手町で働くビジネスマンが有楽町で元気をもらい、丸の内で「品」に触れて背筋が伸びる。こんな感じですね。
そして街の中に「意外感」の多いことが面白いです。最先端のビルである「新丸ビル」のテナントに有楽町のガード下にある屋台みたいな店もあります。大規模な都市開発は表情を整理して平均化しまいがちですが、それではつまらない街になります。意外感や驚き、「わくわく感」という刺激は、不規則で伸縮する街の構造、そして無駄や違いから生まれます。この地区では、そうした姿により、さまざまな感性が刺激されるのです。
造園家には、「コア」(核)、「バッファー」(外縁部)、「コリドー」(回廊)を分けて庭を作る手法があります。コアには思想が埋め込まれ、それが空間の中心となります。バッファーは外の世界とコアを遮断したり、つなげたりする空間です。コリドーはコアとバッフアー、そして外の世界を結び、人や自然が移動する空間です。
この地区は、バッファーとして「日本のコア」である皇居に隣接しています。皇居は巨大な空(くう)とも言えるサンクチュアリ(聖域)で、政治や文化などさまざまな価値の源になっています。そして、そこにある森林は隣の日比谷公園とともに、東京にさまざまなメリットを提供しています。
鳥、植物、虫などがいて、[[生物多様性]]の源として、生態系サービスを供給しています。また皇居には丸の内の仲通りなど、周辺の街の街路がコリドーとなって、風を呼び込んでいます。皇居は空気を浄化する「都市の肺」の役割に加え、夏場は[[ヒートアイランド現象]]を緩和しています。この街が担う、そうしたバッファーとしての意味を深く考えて適切な機能を与えると、コアと全体の価値が非常に高まります。
大丸有地区は、東京、そして日本の価値を高めるほどの大きな可能性を持っている街なのです。このような場所は他にありませんから、常に注目をしています。