シリーズ知恵ブクロウ&生きものハンドブック

危険な昆虫!?いいえ、ステキな昆虫。

私は現在、「インタープリター」という仕事に就いています。おそらく、丸の内で働く100人の方にどんな仕事なのか、尋ねてみても2~3名の方しか答えられないでしょう。

簡単に言うとインタープリターとは、自然と人との"仲介"となって、自然の解説を行う人(仕事)のことです。生きものたちの"役割り"や"つながり"をわかりやすく伝え、『自然』に関心を持ってもらいたいと思いながら働いています。
そんな私が紹介したい生きものは、何と言っても"アブ"です。一般的には嫌われがちな昆虫のようですが、本当にアブは人間にとって悪い昆虫なのでしょうか?

大学時代、研究テーマとして苦楽を共にしたアブの汚名を晴らしながら、アブを通じて「身近な自然」、「生きもの同士のつながり」について紹介したいと思います。

みんなアブについて誤解している!?

まず、アブとはどのような生きものなのでしょう。
残念なことに、アブの生態については、あまり知られていないのが現状のようです。

例えば、自然解説をしているとき、参加者の方から「アブってハチの仲間でしょ?」と、質問されることがあります。確かに多くのアブはハチに似て、体はしま模様ですが、実は「ハエ」の仲間なのです。よって、丸の内などの都会に生息するアブには、人間に害を加えるものはほぼいません。アブにはたくさんの種類がいますが、その中でも特に紹介したいのが、"ハナアブ"というアブの仲間です。私が、大学時代に研究していたハナアブの一種「ホソヒラタアブ」を中心に、自然界でのハナアブの具体的な役割について話を進めます。

生態系の中での大切な役割

ホソヒラタアブなどのハナアブの仲間は、日比谷公園や皇居周辺など、丸の内周辺でも普通に見られるアブで、成虫の時期は花の蜜や花粉を食べています。

ハチやチョウなどの昆虫の仲間と同様、花から花へと蜜や花粉を求めて飛び回るため、体には花粉が付着します。つまり、ポリネーター(花粉媒介者)として、多くの植物にとって欠かすことのできない存在となっています。
一方、ハナアブと深くかかわる生きものとして、アブラムシの存在は欠かせません。

アブラムシは、ストロー状の口を持つ昆虫で、その口を植物に刺し、植物の汁(師管液)を吸って栄養とするため、植物の生育にとって悪影響を及ぼすことで知られています。また、アブラムシは、オスと交尾しなくてもメスのみで子孫を増やせる「単為生殖(たんいせいしょく)」という、ハイテクな生殖方法を行えるので、短い期間で爆発的に増えることができます。

アブラムシの説明が長くなりましたが、この爆発的に増えるアブラムシを餌に、成長しているのが"ハナアブの幼虫"です。
ハナアブの仲間のうち、ヒラタアブ亜科に属するハナアブの幼虫は、自然界にウジャウジャいる"アブラムシ"をモリモリ食べて成長します。
ホソヒラタアブの幼虫では、幼虫の期間中、およそ150匹のアブラムシを食べます(出典:二宮栄一 1956年、1957年)。
植物や農家さんにとっては、大助かりですね。

ハナアブの幼虫がたくさんアブラムシを食べるということは、特定の生きもの異常発生を抑え、捕食者としての役割を果たしていることになります。

足元の自然に目を向けてみよう

読者のみなさん!なぜ、この男はこんなにアブを押しているのか、不思議に思われたことでしょう。このような小さな生きものでも、実は自然界の中では大切な役得割をもって生きていることを、多くの方に知って欲しかったからです。今回ご紹介したアブも、自然界の事象の一部に他ならないのです。
小さい生きものだからといって見過ごさず、しっかりと目を向け観察してみて下さい。小さいながらも一生懸命生きている生きものが、皆さんの身近にたくさんいるはずです。

佐藤 真人
佐藤 真人(さとう まさと)

玉川大学農学部農学科卒業後、環境教育に携わりたいという思いから、東京環境工科専門学校に入学。08年(株)生態計画研究所に入社。
水元かわせみの里水辺のふれあいルーム主任専門員として、自然解説、展示の企画・製作、ボランティア活動のコーディネートなどを担当。
(株)生態計画研究所
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