シリーズ知恵ブクロウ&生きものハンドブック

日本の生物多様性減少の原因を探ってみよう!

街中で生きものが護られている場所はどこでしょう?
日本は明治以降外国の文化が入ってきて、服装から食べ物、交通、インフラと様変わりしてきた。
戦後の変化は一見すると奇跡の経済成長だが、生きものたちの視点で見たら地獄の日々だったことだろう。空襲で焼かれ、戦後しばらくしたら今度は日本人のライフスタイルが変わり、経済発展の名の下、生きものたちの棲家を奪っていった。

【1】都市化・開発 【2】過疎化 【3】基盤整備・河川改修 【4】土地相続問題 【5】工業地化 【6】農薬化学物質 【7】価値観の欧米化

おもにこの7項目が大きな原因と思われる。
細かく見て行くと・・・
【1】都市化開発は昔から生きものにとってはダメージが大きかったが、西洋の石の文明と車社会へ向かったことが拍車をかけた。また水や大気の汚染も一時期は公害と呼ばれ、現在の経済発展著しい国のような状況だった。地面を歩き回るオサムシやヘビ、トカゲは踏まれてしまい街には居られない。
【2】若者が流出して過疎化したことにより、里山整備が出来なくなり荒れてしまった。人間が居ることで成り立っていたアジア独特の里山生態系が崩れてしまった。カタクリのように適度な草刈りによって生えて来る花は見られなくなって来た。
【3】水辺の生きものが絶滅危惧種の半数を占めると言われるが、水路がコンクリート化され、田んぼが簡単に水が抜ける状態になり、魚、両生類、カメなどが田んぼで見られなくなって来た。冬場に産卵するカエルやサンショウウオ類への影響も大きい。

【4】土地の相続が出来ずに失われて行く屋敷林。住宅地からフクロウなどが消えた。
【5】塩田や水田が埋め立てられて工業地かされたことで、水鳥や干潟の生きものたちはすむ場所を失った。
【6】農薬や除草剤などの化学物質は、生態系のバランスを崩し、生き残った動植物の体内に蓄積し、今後様々な問題を引き起こすことだろう。かつてどこでも見られたタガメやゲンゴロウなどの大型水生昆虫が都道府県単位で絶滅が報告されている。
【7】価値観の欧米化。実はこれが最も大きいのではないかと私は思っている。

万物に魂が宿っているという感覚の喪失。八百万の神が居なくなったことこそが、生きものの棲家を奪うことに罪悪感を感じなくなり、【1】~【6】を行ってもお金が儲かれば何も感じないという残酷な状況を生み出しているように感じる。

福沢諭吉は日々の教えの中で「人たるもの生きものに対し慈悲なき振る舞いをすべからず」と説いているが、彼を一万円札として崇めている者たちはこの言葉をかみしめて使ってもらいたいものだ。

街中で生きものたちが暮らしている場所はどこかと探してみよう。
大型の公園。
ギリギリ残っている里山と地主さんの土地。
それ以外は、ほとんどが神社の周りであることがわかる。
ちなみに天皇陛下は神社と稲作における五穀豊穣の長である。
我々が西洋気触れして生きものたちの"いのち"を顧みなかった時も、神社は生きものたちを護って来た。
商業的なエコに振り回される前に、先ずは心のお清めをしてみるのも一考。

林 鷹央(はやし たかお)

武蔵野美術大学院卒業後デザイナーとして働いた後、自然環境保全の分野へ転身。 「生きもの係」の代表として自然と共生した里山や農業と日本文化の復興に力を注ぐ。身近な"田んぼの生きもの調査""街の生きもの調べ""生きもの語り"などをしながら全国の農村、学校などをまわり講演活動中。趣味は民謡、草花や昆虫、パワーストーンの鑑賞。生きものマスター協会会長。
「生きもの係」
生きものマスター協会

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