2014/07/01
4月後半らか5月にかけて、田んぼは水が入り、田植えがおこなわれ、カエルの大合唱が・・・というのは昔の話になってしまうかもしれない時代ですが、カエルが元気に大合唱している田んぼもまだまだあると思います。では、何種類のカエルがいますか?となると、あまりピンとこないかもしれません。今回は、関東地方を例にし、田んぼで観察できるカエルを紹介します。
春先に繁殖期を終え、5月後半にはオタマジャクシからカエルになっている種から、梅雨が明けてもまだ繁殖期という種もあります。
カエルからみたちょっとした田んぼの通信簿を考えてみました。
さて、ご近所、お気に入りの場所など、お目当ての田んぼではカエルが何種類見つかるでしょうか?カエルのように鳴きませんが、田んぼでみられる両生類のアカハライモリ、トウキョウサンショウウオを加え、レア度の星マークを数えてみましょう。
言わずと知れた、田んぼのカエルの代表選手で、平地から山間部まで広くみられます。田んぼでは最も小さなカエルですが、鳴嚢を大きく膨らませ、ゲッゲッゲッと大きな声で鳴きます。
まだ冷え込む日もある3月終り頃から田んぼに顔を出し、コロロロロと心地よい鳴き声を響かせます。黄緑色のかわいいカエルです。山際の田んぼに多く、平地の田んぼには少ないです。草陰や畦などに隠れて鳴くため、その姿を見つけるのは難しいです。
田んぼの耕作サイクルとリンクした生活史を持ち、堂々とした大きなカエルです。
高いジャンプ力や強い警戒心、さらにオスは田んぼの真ん中で鳴いていることが多く、姿をみかけるには比較的難易度が高いです。
イボガエルとも呼ばれ、地味であまり人気のない種ですが、田んぼで見かけることはごくまれです。
オタマジャクシで冬を越すため、冬場に水のなくなる田んぼが多い昨今、急激にその数を減らしています。
丘陵地や里山に隣接した田んぼでみられる早春に産卵する種です。田植えのころ元気にオタマジャクシが泳ぎまわり、梅雨の頃カエルになって林内で生活します。山地には少なく、開発の進む丘陵地や里山に多いため、その数を減らしています。
山間部の湿地や田んぼでみられる早春に産卵する種です。梅雨時から夏頃にかけカエルになって林内で生活します。おもに谷戸田や標高の高い地点の田んぼなどでみられますが、丘陵地ではニホンアカガエルと混生して産卵する田んぼもみられます。
尾がありますがカエルと同じ両生類です。丘陵地や山間部の湿地や田んぼでみられますが、関東地方では大変少なくなっています。昨今の田んぼでは幼生が上陸する前に水を落としてしまうため、生息環境としては適さなくなってきています。
2~4月頃丘陵地や里山に隣接した湧水が流れ込む田んぼの水路などで産卵します。環境の変化に弱く、開発や湧水の水枯れによって数を減らしています。また、近年はアライグマによる食害が顕在化し、危機的状況にあります。
もともと静岡県以西の西日本に生息している種ですが、近年関東地方各地に移入され、急速に分布を拡大している種です。高温や乾燥に強く、乾田化や圃場整備された現代の田んぼにも適応しています。地域によってはふつうにみられるようになり、その影響が心配されます。
さて、お目当ての田んぼではレア度の星マークはいくつになりましたか?合計8個を超えていればなかなかいい田んぼといえるでしょう。10個を超えていればかなりいい田んぼでしょう。
さて、少し話は変わりまして、埼玉県北部に住んでいる私の自宅はすぐ傍に田んぼがあります。その田んぼでカエルの鳴き声の勢力図が変化しているのを感じています。引っ越して約6年になりますが、初めの年にはトウキョウダルマガエルの鳴き声が頻繁に聞こえ、姿もみることができました。しかし、5年を経た昨年はほとんど鳴き声を聞くこともなく、姿もみることはありませんでした。その代わりに西日本からの移入と考えられるヌマガエルの鳴き声を頻繁に聞くようになり、雨の日の道路でも頻繁にみかけます。埼玉県だけでなく、関東地方全域でヌマガエルが急激に勢力を拡大している報告が相次いでいます。
また、近年は新たな天敵アライグマによると考えられるカエルやサンショウウオの食害が発生し、ますます厳しい状況に追い込まれています。ましてや、田んぼそのものも消えつつあり、レア度の星マークが合計10個を超える田んぼはかなり貴重な存在といえるのではないでしょうか。
★おまけ★
カエルの鳴き声は以下の書籍の付録CDで聞くことができます。
『小学館の図鑑NEO 両生類・はちゅう類』
(指導・執筆/松井正文、疋田努、太田英利 写真/松橋利光、前田憲男、関慎太郎ほか)
1969年生まれ。民間企業勤務を経て、現在埼玉県立川の博物館 学芸員。カエル・サンショウウオなどの両生類の保全、水辺の生きものと人との関係などを専門に活動している。
埼玉県立川の博物館