シリーズ知恵ブクロウ&生きものハンドブック

割り箸が地域と地球を救う

割り箸は環境のために使わない方がよいのでしょうか?
間伐材からできた割り箸であれば使ってもよいのでしょうか?

「樹恩割り箸」の取り組み

私が所属するJUON NETWORK(樹恩ネットワーク)では、間伐材・国産材製の「樹恩割り箸」の普及推進を行っています。「環境を守るのに割り箸?」と思われるかもしれません。しかし、日本の荒れた森林が手入れをされるようになるためには、木が適切な価格で利用されることが大切です。また、環境負荷を考えるならば、外国からエネルギーをかけて来る外材ではなく、間伐材、地域材、国産材と呼ばれるような、なるべく近くの山の木を使う必要があります。

食堂を経営する大学生協が呼びかけてできたJUON NETWORKならではの特徴的な取り組みで、現在は70大学生協での使用を中心に、県庁食堂や飲食店、学園祭や市民祭り等で年間1000万膳以上が利用されています。なお、障害者の仕事づくりとして現在は、福島、茨城、群馬、埼玉、東京、広島、徳島、全国7つの知的障害者施設での製造に拡がりました。

マイ箸、リユース箸は環境によい?

最近はマイ箸ブームであり、飲食店でも割り箸からプラスチックのリユース箸への切り替えが進んでいます。そもそも、リユースできる樹脂箸は、有限な資源である石油からできた製品であり、製造はほぼ中国で行われています。また、ある大手飲食チェーンでは、リユース箸の洗浄にエネルギーやコストが相当かかっていることが分かり、国産割り箸に切り替える動きを始めているようです。

マイ箸も、木製だとしても原料はほぼ外国の材であり、金属で接合する携帯タイプのものもありますが、この金属も日本で採れるわけではありません。金属を加工するには、木材を加工するのとは比較にならないほどのエネルギーを使います。勿論、ライフスタイルを再考するという意味で、否定するものではありませんが、単純にマイ箸がよいとは言えないのです。

木を伐ってはいけないが、間伐だからよい?

ところで、樹恩割り箸もその一助となったのではないかと考えていますが、間伐や間伐材についての理解は随分と拡がったと実感しています。しかし、依然として社会的には、「木を伐ってはいけないが、間伐だからよい」という考えが根強いと考えています。最終的に木材を収穫する主伐がなければ林業は成り立たないということや、限りある地下資源よりも再生産可能な資源である木を使うことの方が環境によいということを伝えていくことが、今後の課題です。

日本の自然は、人が利用しながら育ててきた里地里山などの二次的自然が大半です。絶滅危惧種も半数以上は、里地里山由来の動植物で、生物多様性も高い地域です。このような自然の多くは農山村にあるわけですが、守っていくためには手入れが必要であり、つまり、その地域に人が住むことが重要になります。人が住むためには、経済的に成り立つことが大切です。

都市と農山村の「かけはし」

日本では1年間に190億膳の割り箸が使われているのですが、98%が外国産で、そのほとんどが中国産です。外国産の割り箸はだいたい1膳1円なのですが、樹恩割り箸は約2.5円です。もし仮に、この価格ですべての割り箸が日本で製造されたとすると、単純に言って475億円の売上げが日本の農山村地域にもたらされます。

農山村地域では、過疎高齢化が止まりませんが、食べ物や家を建てる木材等、都市の暮らしは農山村に支えられています。きれいな水や空気は健全な森林から生み出されるのです。私たちは、都市と農山村の循環を取り戻す、という視点から国産の割り箸を進める活動を行っています。

鹿住 貴之
鹿住 貴之(かすみ たかゆき)

認定特定非営利活動法人JUON NETWORK(樹恩ネットワーク)理事・事務局長
1972年生まれ。98年大学生協の呼びかけで設立された、都市と農山漁村を結ぶNPO法人JUON(樹恩)NETWORKに 事務局スタッフとして参画。99年3月より事務局長。
その他、東京ボランティア・市民活動センター主催「市民社会をつくる ボランタリーフォーラム」実行委員長、NPO法人 日本NPOセンター理事、NPO法人 森づくりフォーラム理事等、様々な 市民活動に携わっている。
著書に『割り箸が地域と地球を救う』 (創森社・共著)等。
認定特定非営利活動法人JUON NETWORK(樹恩ネットワーク)
市民社会をつくる ボランタリーフォーラム
NPO法人 日本NPOセンター
NPO法人 森づくりフォーラム

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