2013/11/19
紅葉が美しい季節になりましたね。私が住んでいる山梨県北杜市でも、里の方までカエデの鮮やかな赤が目立つようになってきました。今回は、この山梨の森の木々について、ご紹介したいと思います。
私が活動する「NPO法人えがおつなげて」は、山梨県北杜市のなかでも、標高1,000mを越える増富という地域をメインフィールドにしています。この増富の風景を、夏と秋で比べたのが、下の2枚の写真です。黄色く色づいたエリアと、緑のままのエリアがあるのが分かるでしょうか?
写真のなかで黄色く色づいたエリアは、「カラマツ」が主体の林、緑のままのエリアは、「アカマツ」が主体の林です。どちらも"松"の仲間ですが、秋になると、随分見た目が変わってしまいましたね。
アカマツは、その名のとおり、赤みがかった樹皮が特徴で、庭や公園にもよく植えられている、私たちにごく身近な松です。海沿いから、かなり標高の高い山の上まで生えるので、様々な地域で見ることができます。
一方のカラマツは、寒い場所を好むため、アカマツに比べてぐっと見られる範囲がせまく、北海道や東北地方、本州中部の寒冷地にしか、まとまった林を見ることはできません。このカラマツの特徴は、何といっても、黄葉し、落葉することではないでしょうか。日本に自生する針葉樹のなかで落葉するのは、このカラマツだけです。
アカマツもカラマツも、主に木材生産のため、人の手によって積極的に植林されてきました。木材と聞いて多くの人が思い浮かべるのは、花粉症で疎まれもするスギや、香りのよさで知られるヒノキではないでしょうか。
人工林を樹種別の面積比でみると、日本全体では、やはりスギがひときわ多く、次いでヒノキとなっています。一方の山梨は、ヒノキ、カラマツが比較的多く、スギ、アカマツもあわせ、4つの樹種がバランスよく植えられていることが分かります。
山梨では、戦後、このカラマツが大規模に植林されました。寒冷地のため、スギやヒノキが育ちにくいという理由もありますが、もう一つの理由はカラマツの生育の早さにあります。他の針葉樹に比べ、短期間で太く、大きくなるカラマツは、拡大造林の時代に、土地があえば好んで植えられました。
しかし、このカラマツ、十分に太くならないうちは「ねじれやすい」、「割れやすい」という欠点があります。スギやヒノキと比べて、柱にすると不具合も多かったため、たくさん植えられたものの、なかなか出番がなく、山に取り残されてきました。
そのカラマツが近年、脚光を浴びるようになってきました。
その最大の理由は、LVL(=単板積層材)や合板といった製材技術の発達です。
LVLや合板の場合、木材は柱として四角く切り出すのではなく、大根をかつらむきするように、薄く板状に削るように切り出していきます。この板を、繊維が同じ方向になるように貼り合わせていったのがLVL、
互い違いになるように貼り合わせていったのが合板です。
この技術を使うと、細い間伐材からも大きな断面の材をつくることができ、割れやねじれの問題も解消されます。また、湾曲した形状の材を作ることもでき、強度も揃えやすいので、改めて木材の活用が見直されるようになりました。
ここで着目されたのが、カラマツ材の強度です。針葉樹のなかでも、特に強度があり、まっすぐに育つカラマツは、このLVLや合板に打って付けだったのです。
もちろん、それぞれ木の材質には特性があり、その木を活かす"適材適所"があります。ある林業者さんは、4つの樹種がバランスよくあることは、山梨の強みだと仰っていました。カラマツのように、時代が変われば、木の使い方も変わってくる可能性がありますから。木は、植えてから木材として使えるようになるまで、長い時間がかかります。数十年後の私たちの生活を見据え、哲学を持って木々を植える必要があるのだと、その林業者さんは教えてくれました。
山は、変わらないものの象徴のようにもみられます。でも、森の木々は、人の手により、時代と共に変化してきました。夏の間は緑一色だった森も、紅葉の季節になると、場所によっては随分と様変わりしています。木の種類を知らなくても、秋の森を見比べれば、森の違いが、きっとよく分かりますよ!
紅葉の季節、山は日々、目に見えて変化しています。木々の葉が落ちてしまう前に、森を見にちょっと遠出してみてはいかがでしょうか?
NPO法人えがおつなげて 事業コーディネーター
環境コンサルタントや青年海外協力隊で生態調査に従事。現在は山梨県に移住し、NPO法人えがおつなげてにて都市と農村をつなぐ活動のコーディネートを実践中。森林インストラクター。
NPO法人えがおつなげて