2012/09/11
誰もが知っているブラックホール。宇宙の中で、ブラックホールはどのような役割を果たしているのでしょうか。
子供から大人まで、誰もが興味を持つ天体といえば、なんといってもブラックホールです。宇宙の講演会があれば、必ず聞かれる質問はブラックホールに関すること。老若男女の心をがっちり掴んで放さない天体です。
なんでも吸い込んでしまう黒い穴というだけでもミステリアスな存在なブラックホールですが、宇宙の歴史の中でとても重要な役割を果たしてきている事をご存じの方は、多くないのではないでしょうか。ブラックホールは、星の大集団である銀河の進化に深く影響を与える存在なのです。
ブラックホールは、大雑把に分ければ小さいブラックホールと巨大なブラックホールがあります。ここで小さいと呼んでいるものは、重い星が一生の最期に超新星爆発を起こして、化けたもの。小さいと言っても、太陽の重さを軽く超えるくらいなので十分重いんですが、ここで言う巨大なブラックホールはその比じゃありません。軽いものでも太陽の数十万倍、重いものでは数十億倍と、まさに天文学的な規模のブラックホールなのです。
そんな化け物のような巨大ブラックホールは、いったい宇宙のどこにいるのでしょうか。実は、銀河の中心部分に居座っているということがわかってきています。例えば、私たちの住む銀河系にも、その中心に重さが太陽の400万倍にも達する巨大ブラックホールがいることがわかっています。宇宙には少なくとも1000億個の銀河があると言われていますが、その多くの銀河の中心には、巨大なブラックホールが隠れていると考えられているのです。
こういった巨大ブラックホールがどのようにしてできたのかは、実はまだよくわかっていません。ブラックホール同士で合体したり、周囲の物質を飲み込んで成長してきたことは間違いないのですが、具体的にいつごろ、どんなプロセスを経て今に至ったのかがよくわからないのです。過去のどこかの段階でブラックホールの成長が止まったまま今に至るとする「結果説」と、銀河中心の天体たちと互いに影響し合いながら少しずつ成長して来て今に至るとする「共進化説」のふたつが有力な説として提案されています。ブラックホール成長の過程は、銀河の進化と密接な関係があると考えられているのです。
どちらの説が正しいのか、あるいは両方とも正しいのかについては、まだよくわかっていません。しかし、いずれにせよ宇宙の進化とブラックホールの間に深い関係があることは、明らかです。宇宙の進化の物語の中で、ブラックホールがどんな活躍を見せてきたのか。その全容が明らかにされる日を、楽しみに待ちたいと思います。
※本コラムは、「まるのうち宇宙塾」8月の講演を参考に執筆しました。
1979年広島県広島市生まれ。
東京大学理学部天文学科卒業、東京大学理学系研究科博士課程修了 (理学博士)、国立天文台広報普及員、ハワイ観測所研究員を経て現在に至る。
東京大学エグゼクティブ・マネジメント・プログラムを担当。専門分野はIa型超新星を用いた距離測定と天文学コミュニケーション論。