出版業界の市場規模は、1990年代末から年々縮小。アマゾン・キンドルやiPadなどの電子書籍の台頭で、業界の先行きはますます懸念されています。紙媒体派の方でも、「書店に行かずにamazon.comで欲しい本だけ買っちゃうな」という方は多いのでは?
そんな出版・書店業界に活を入れたのが、丸善 丸の内本店4階に設けられた売り場「松丸本舗」!客単価は約2倍(同店比)、顧客の平均滞在時間は約2~3時間。滞在最長記録は、なんと8時間におよび、「ここに住みたい!」なんて声まで届いているという。
『千夜千冊』などの執筆でも知られるカリスマ編集者・松岡正剛氏プロデュースによる、このスペース。65坪の売り場にギッシリとつまった約5万冊の本の在りようは、いわゆる「普通」の書店とは一線を画すものです。
「松丸本舗」とは、どんなスペースなのか、人気の理由は何なのか・・・・・・。丸の内地球環境新聞が、突撃取材を行いました!文末では、松丸本舗のオススメ環境図書をご紹介しちゃいます!
「ビジネス」「趣味」「新書」「文庫」・・・・・・、これが一般的な書店の分類。対する松丸本舗の分類は、シーズンごとに、松岡氏の意思で決定します。4月末から始まった全体テーマは「男本・女本・間本」。この下に「歴女、歴男、超人」などといった4つのゾーンがぶらさがり、それがさらに細分化された20~30のテーマに基づいて本が集められ、配置されています。
種類やサイズではなく、あくまでテーマに基づいた配置なので、専門書もマンガも、いっしょくた!ハードカバーを読む人が、文庫や新書やマンガを読まないわけではないことは、みなさんもご存知の通り。考えてみれば、とても自然な配置なんですね。
お目当ての本を見つけたら、その周辺の本も手にとりたくなる。「あの本も、この本も・・・」気になる本が芋づる式に見つかってしまいますよ。
松丸本舗の本棚は、まっすぐで均一な棚ではありません。突然の段差に、ふすま戸棚に・・・・・・。その意図は?
整然と並べられた本棚は美しいものの、棚と本が織り成す直線に視線が滑ってしまいがち。ズラリと並ぶ背表紙を目で追ううちに、探している本のタイトルを見逃してしまった経験はありませんか?
松丸本舗のまっすぐじゃない本棚は、あえて整然さを壊すことで、視線に本を引っかける工夫なんです。(引っかかりすぎるとお目当ての本を探せなくなるので、ご注意を!)
松丸本舗の本棚では、横積み、重ね置き、はたまた開きっぱなしもアリ!人の気配が感じられるような、いい意味で雑然としたこの空間は、まるで誰かの書斎のよう。なんだか落ち着く空間です。
ところどころの棚にマジックで書かれたコメントは、松岡氏によるもの。
「最近のぼくはブコウスキー、オースター、チャンドラーの順。」
「バロックとロシア・アバンギャルド。この解読がアートの秘密。」
松岡氏がふらりと訪れては書き込んでいくという、解説とも、メッセージともつかないコメントです。本と棚の間で思いがけず遭遇するパーソナルな言葉には、ヒミツの宝を探し当てたように嬉しくなってしまいます。
各界の愛読家たちの本棚を再現したコーナー「本家」。現在は、福原義春氏(資生堂名誉会長)、町田康氏(作家)、市川亀治郎氏(歌舞伎役者)、山口智子氏(女優)、中谷巌氏(経済学者)、高山宏氏(評論家・翻訳家)の蔵書が並んでいます。
人の本棚を見ていると、持ち主の頭の中をのぞき見たような気分になりませんか?
「本相」コーナーでは、松岡氏が出版市況を一刀両断!
大きなコルクボードに貼りだされた松岡氏の手書きコメントも、松岡氏が訪れるたびに更新しているそう。
セイゴオ式テーマの読み解き方やオススメ本が満載のこのコーナーも、マスト・チェック!
松丸本舗のキーフレーズは「本はもっと遊びたがっている」。
自由に本を遊ばせることで、本の魅力と底力を最大限に引き出したこの空間は、本好き・書店好きならずとも思わず惹きこまれてしまうはず。特に本を購入するつもりがなかった私も、帰り道には5冊の本を手にしていました。
「本の見せ方」「本の接し方」「本の読み方」をシフトした、なんともユニークなこの書店。
時間とお財布の余裕を少し多めに用意して、アナタも訪れてみては?
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(左)『現代思想としての環境問題―脳と遺伝子の共生』
中公新書/佐倉 統(著)
「自然対人間」の二項対立を越え、「環境と人間は生物の進化の織りなすDNAメタ・ネットワークとして一体化する」という立場から、コンピュータと生命をめぐる現代思想を展開する。1992年の著作ながら、現代にも大きな影響を与える一冊。
(右)『美しき日本の残像』
朝日文庫/アレックス・カー (著)
四国の平家の落人の里に民家を買って城と称し、東洋の書画骨董、歌舞伎、古都を愛する一風かわったアメリカ人の日本美見聞録。西洋人だからこそ到達できた日本の美への理解と情熱に、はっとさせられます。