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これからのエリアマネジメントはどうあるべきか 前編(小林重敬氏)

エコッツェリアにおいて、2011年6月から2012年2月にかけて、全6回にわたり「環境まちづくりサロン」が開催された。これは、日本を代表する主要都市のエリアマネジメント団体の代表や、まちづくりの専門家が一堂に会し、取り組みについてプレゼンテーションを行うなかで、先駆的な事例や課題などを共有し、活発な議論を通じて、エリアマネジメントが抱える共通の課題解決を目指すという目的で実施されたものだ。

6回にわたる議論を踏まえ、まちづくり研究の第一人者であり、また大丸有地区のエリアマネジメント協会理事長である小林重敬氏に、その成果と課題についてお話を伺った。
NPO法人 大丸有エリアマネジメント協会(リガーレ)

1. エリアマネジメントの役割とは何か ― 従来の活動からのステップアップを促した3.11

― 8ヵ月にわたる環境まちづくりサロンの議論を終えて、所感をお聞かせください。

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小林: 私自身は、大丸有地区のエリアマネジメントに直接携わるようになってから、2012年9月で10年目を迎えます。リガーレ設立以来、大丸有地区はエリアマネジメント活動の先陣を切るかたちでさまざまな問題に取り組んできたわけですが、その間、大丸有地区に続いて、東京都内をはじめ、福岡、札幌、大阪、名古屋など、さまざまな都市で、多数のエリアマネジメント団体が設立され、多様な活動が展開されてきたことを、大変頼もしく感じています。
* サロンでプレゼンテーションをされたエリアマネジメント団体

当然のことながら、エリアマネジメント活動というのは地域に根ざした活動でありながら、共通の取り組みや課題が多く存在します。今回の環境まちづくりサロンの中で、そうした共通の課題を共有するとともに、ヨコの連携を生み出すことができたのは、課題解決に向けて大きな収穫になったと思います。また、さまざまなエリアマネジメント団体のプレゼンテーションをお聞きする機会に恵まれ、欧米の取り組みとは違った、我が国ならではの活動が創出されつつあることを実感しました。

つねづね私は、エリアマネジメント活動には三つの目標があると言ってきました。一つ目は、地域がもっている課題を、皆で解決する、あるいは減ずるということ。二つ目は、地域に存在する資源―具体的なモノとしての資源、人材としての資源、歴史的価値としての資源など、さまざまな資源を活かすということ。いずれの場合も、地域でネットワークを組んで活動することにより、初めて実現可能となる目標です。そして三番目が、そのときどきの社会状況に即した活動を展開するということ。特に三番目については、日本を代表する地域のエリアマネジメント団体が率先して、社会の新しい動向を敏感に感じ取り、活動のなかにうまく組み込んでいくことが必要だろうと感じています。私は、この3点がエリアマネジメントの中心的な役割と考えて、自身も大丸有の活動の中でそれを実践してきました。

そうしたなか、これまでさまざまなエリアが、「エリアの人たちと交流を深めよう」、「エリアの賑わいを創出しよう」、「エリアから情報を発信しよう」といったことに取り組み、それなりの成果を上げてきました。ところが、東日本大震災の被害を目の当たりにして、私自身、意識を大きく変えざるを得ませんでした。従来の活動だけがエリアマネジメント活動ではないのではないか、もう少し踏み込んだ、次の時代の活動が必要なのではないかと強く感じたのです。

もっとも、防災というのは、先述の三つの目標の一番目にあたる、エリアの課題を解決するというテーマに含まれます。ただ、今回の東日本大震災の被害を見れば、従来の防災への取り組みだけでは不十分なことは明らかです。やはり、次へのステップアップが必要でしょう。

同様に、環境についてもステップアップが必要な時期にきています。世界中で環境対策が喫緊の課題とされ、スマートシティ構想など、新たな都市の姿が論じられるなかで、「打ち水プロジェクト」などの環境活動、啓発活動、環境教育といった従来のエリアマネジメント活動に加えて、さらにもう一段階ジャンプアップした取り組みが必要だと感じています。つまり、防災と環境というのは、三番目の新しい社会動向に対応した今後の活動の、中心的なテーマになるということです。

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さらに、こうした思いに至った背景には、もう一つ別の理由があります。エリアマネジメント活動を展開していくうえで、単に、地域の交流・賑わい創出・情報発信といった活動をしているだけでは、組織の自立的な運営を継続していくだけの財源を生み出すことが困難だという問題です。それゆえに、エリアマネジメント組織が社会から認知され、行政からも肯定されて、社会的な活動を担っていくことができないでいるのです。

一方で、欧米のエリアマネジメントの多くが、社会的な動向を取り入れ、より公共的な活動を行っています。それにより、その組織の存在が社会のなかで認知され、結果として財源が入ってくるしくみができているのです。そうした、より社会的な存在として、日本のエリアマネジメント団体も脱皮する時期に来ているのではないかと思います。

今回の環境まちづくりサロンをきっかにして、日本を代表するエリアマネジメント団体の方たちと方向性を共有し、よりステップアップしたエリアマネジメント活動を展開できたらと考えています。もちろん、口で言うほどたやすいことではありませんが、その活動の芽を、この環境まちづくりサロンによって育てることができれば大変嬉しく思います。

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2. 日本を代表するエリアマネジメントの責務

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