去る2月25日(金)、「神田明神と江戸~サスティナブルな伝統~」と題して第5回「日本文化から学ぶ環境力」サロンが開催されました。講師にお招きしたのは、神田明神禰宜・清水祥彦さんです。
神田明神の社伝によれば、創建は天平二年(730年)。出雲氏族・真神田臣(まかんだおみ)が、当時の武蔵国豊島郡芝崎村、現在の千代田区大手町は三井物産の周辺に大己貴命(おおむなちのみこと)をお祭りしたのが起こりと言われています。
その後、延慶二年(1309年)には平将門公(?~940年)を奉祀し、江戸時代に入ると、「江戸総鎮守」として、徳川家・江戸幕府のみならず江戸庶民にいたるまで、多くの人々の崇敬を集めることになりました。元和二年(1616年)には、江戸城の表鬼門(北東)を封じる役目を担い、現在の外神田の地に遷座しています。
ここでちょっと余談を二つ。大己貴命とは、通称「だいこく様」。またの名を大国主命(おおくにぬしのみこと)といい、出雲大社の御祭神でもあります。『古事記』や『日本書紀』にたびたび登場する由緒正しき出雲の神さまが、はるか遠く武蔵の国に祭られていたことに、当時の出雲の繁栄が偲ばれます。
また、表鬼門(北東)は昔の方位の呼び名では「艮(うしとら)」といいます。「丑(うし)」と「寅(とら)」の間の方位のことで、ここには鬼が出入りするとされ、その守護のために、神社やお寺が建てられました。京都や奈良の都も同じ考えのもとに設計されています。「鬼」というと角と寅のパンツがトレードマーク(?)ですが、その由来はこの鬼門の考え方にあります。「艮」の方角を出入りする「鬼」のモチーフとして、牛の角と寅の皮が使われたということです。
時代は下って現代。神田明神は1300年の時間を経た今も、神田、日本橋、秋葉原、大手・丸の内地区の108町会の総氏神様として、首都・東京をお守りされています。江戸時代から始まったとされる神田祭も、厳かな神事や祭りの賑わいは変わることなく、生粋の江戸っ子はもとより、大手町に本社を構える日本の一流企業もいろいろな形で祭りに参加して、多くの伝統が継承されています。
昨今では、環境問題やCSRの考え方が社会的に広く認知され、社会の中での企業の品位や品格が問われる時代になってきました。「サステナビリティ(持続可能性)」という言葉も、これからの時代を作るキーワードとして注目されています。
ですが、清水さん曰く、「自然や地域とともに生きるという考え方は、日本人がこれまでの歴史の中で培ってきたもの。だからこそ、神田明神は1300年の歴史を迎え、神田祭の伝統も400年の時を越えて受け継がれてきた」ということです。「サステナビリティ」はもともと日本の文化や生活の中にあった、ということなのかもしれません。
最近は、日本の文化や歴史、神社やお寺をテーマに雑誌の特集が組まれることが増えてきたように思います。歴史ブームとも言われています。不況になると伝統回帰、という傾向もあるのかもしれません。
とはいえ、すっかり欧米化してしまった現代人の生活や日々の仕事の中に、そうした日本的なものを取り入れていこうとすると、そこにハードルがあるのもまた事実。日常の中に、いかに日本的な要素を取り戻していくかは、21世紀を生きる日本人に課せられた大きな宿題なのかもしれません。
「そんな大きいことを言われても......」と思ったアナタは、近くの神社にお参りするところから始めてみてはいかがでしょうか? 神社の厳かな雰囲気に身が引き締まったり、鎮守の森に安らぎをいただいたり、境内の中で面白い発見をしたり......。神社は意外に楽しめるスポットです。
神田明神はじめ、日枝神社に靖国神社、東京大神宮。他にも千代田区内には多くの神社があります。仕事の合間に神社でちょっと一休み、なんていうのも営業ルートに加えてみてはいかが?
* 写真1枚目: 神田明神随神門* 写真2枚目: 神田明神禰宜・清水祥彦さん* 写真3枚目: 当日の会場の様子
前回の「日本文化から学ぶ環境力」サロンの様子
江戸時代に学ぶ森林経営術~第4回「日本文化から学ぶ環境力」サロン~
「日本文化から学ぶ環境力」サロンは、エコッツェリア協会会員企業向けに開講されています。
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