先日発行された大丸有地区のエリア版CSRレポート、ご覧いただけましたか?エコッツェリアウェブではウェブ版を展開し、冊子版もPDFでご覧になれますので、まだ見てない!という方はぜひ見てみてくださいね。冊子版は、エコッツエリアや大丸有で開催されるイベントで配布しています。
後編は、今回の大丸有CSRレポートのもう一つの見どころ、イラストとデザインについてです。冊子版の各章の扉絵は8つのCSRアクションに対応し、一つ一つにメッセージが込められているのです。そのあたりについて、鈴木菜央さん(以下鈴木 )と根本真路さん(以下根本 )にお聞きしました。
根本: わりとリアルな情景だけど、ちょっと普通にはない変わった感じにしたいという話 をずっと(鈴木)菜央さんとしていて、それを意識して作りました。情景はリアルでありながら、変わった感じを出す。色は基本的に二色のみでその二色の濃淡で奥行きを出したりしています。
鈴木: 「1000年後のまちはどんなものか?」を想像したら、今とは全く違う世界になっているんじゃないかと思って、人間と動植物の大きさが逆転してしまっていたら面白くないかなとか、寓話的に人と自然が一緒になっているだろうとか、文明と自然や環境がくっついているんじゃないかとか考えたわけです。それで、文明な感じと自然な感じのバランスにどこか違和感があるような、見ていて引っ掛かる感じが大事かなと思って、根本さんにそう伝えました。手に取った人がすぐにわかるイラストじゃなくて、考えさせる奥行きがあるといいなと思って、そういう部分を重視しました。
それから、扉絵の一枚一枚が、「大丸有環境ビジョン」の8つのビジョンの一つ一つに対応しています。そこにも注目していただければと思います。
鈴木: 植物がビルになっているとか、文明と自然が一緒になっているというアイデアを出して、そのアイデアを蓮やカエルといった具体的にイラストにしてもらいました。私のポイントとしては、表紙を見るとただのハスの葉が浮いた池なんだけど、裏を見ると「あー、まちだったんだ」とわかるという驚きです。実は表紙と裏表紙のイラストの端がつながっていてイラストがぐるりと一周するようになっています。このアイデアは根本さんに出してもらいました。
根本: 個人的には水面から顔を出しているカエルがポイントです。あと、色ベタなんだけど水の深さが表現できているというところも。単純に水が好きなので、方向性が決まったときに、まず自分が好きなものを描こうと思って水を描いて、それが表紙になったという感じです。
鈴木: 根本さんからあがってきたイラストを見たときに、表紙のテーマが水っていうのはいいなと思いました。今世紀は水の世紀といわれていて、水をめぐって殺し合いが起こるとまでいわれている中で、1000年後のこのまちは運河が張り巡らされた水のまちのイメージなんです。だから水が表紙というはとてもしっくりきました。
鈴木: このイラストはヤギと電車のサイズの比率がおもしろいと思います。遠くにあるように一瞬見えるんだけれど、足元にある。ヤギはその電車を気にしている風でもなくいる感じがおもしろい。これも自然と文明のバランスの違和感です。あとは、谷崖 なんだけれど緑がたくさんあって、動物がたくさんいる。まちではないけれど、賑わっている感じが出ていると思います。
根本: 標高が高いという設定なので、この下の方にまちがあると想定しています。ここは「大丸有 環境ビジョン」についてのページなので、高い ところから大きなビジョンで、遠くまで見通しているというイメージなんです。最初は鷹の予定だったんですが、岩山の感じを描きたいと思って調べてみたら山ヤギというのがいて。角も生えていて恰好いいなぁと思って、ヤギにしました。
鈴木: 平面的なのに奥行きがあるところがいいですね。
根本: 実はこの奥に描かれている鳥は、次のページの鳥なんです。ここに描かれている鳥を別の場所から見たのが次のページで、よく見るとこのページの鳥のお腹にも窓がついてるんですよ。
鈴木: 本当だ!
鈴木: この鳥は飛行機になっているわけですが、海外に行くのにちょっと鳥のお腹に入れてもらうという感じです。鳥の方も別にそれが嫌じゃなくて、こともなげに飛んでいる。人間が鳥を飛行機に改造したのではなく、鳥のほうから「乗れよ」と言っているようなイメージです。
根本: こだわりとしては、ここに書いている鳥がみんな渡り鳥で、しかもいろいろな種類の渡り鳥を描き分けているというところです。 渡り鳥にもたくさんの形があって、それぞれが異なる飛行機のイメージになっています。砂丘が折り重なっているのは「空気遠近法」という技法で、平面的なんだけれど、グラデーションをつけて重ねることで奥行きが出るような表現になっています。この「空気遠近法」というのは、このCSRレポートが出来上がってから知ったんですけど(笑)
鈴木: ここでは鳥の飛行機が移動していくイメージ、陸が切れて海が続いていることで、世界とつながっているイメージになっています。世界につながっていくワクワク感があって、「コミュニティ全体で世界の課題に取り組む」というテーマにも合っているんじゃないかと思います。
鈴木: ここは、サンゴ礁にもまちが広がっていたらどうだろうという発想です。サンゴの一本一本がビルになっていて、その周りを魚がゆっくりと泳いでいる。平和な感じが出ていると思います。
根本: イラストとしてのポイントは光のさしこんでいる束の感じです。海に光がさしている表現がうまくできたと思います。
鈴木: 地球温暖化や海洋汚染によって世界中でサンゴが減少している中で、1000年後のまちもサンゴ礁がいっぱい残っていたらいいなぁという願いも込められています。
鈴木: 私はこのイラストが一番好きです。色がまずいいし、形がダイナミック。意思のある感じで勇気をもらえます。自然と文明のバランスの違和感という点ではシカの角が道路になっているわけですが、これは単純にシカの角が道路になったらどんな感じだろうという発想です。
根本: このシカは若いシカで、同時に夜明けの風景でもあり、「これから」を象徴しています。角が道路になっている部分は写実的ではないというところがポイントです。シカは横から見ているけれど、道路は真上から見ている。その不思議さをおもしろがってもらえればいいと思います。
鈴木: このページは「2050年のまなざし」というページの扉でもあります。シカというのは知恵の象徴、夜明けにすっと立ち上がって遠くを見ているシカは、次の時代を見据えているイメージなのです。
鈴木: リスが冬ごもりの準備のためにせわしなく森の中を走りまわっています。たくさんのリスが動いていて、このイメージが大丸有のたくさんの企業と人がCSRアクションを行っているというこの章のコンセプトとリンクしています。
根本: 巣穴の横に付いているのは、看板とか電光掲示板のイメージです。これも「なんなんだろう」と心にひっかかる要素です。
鈴木: このイラストは「みんなが安心・安全に過ごせる快適なまち」というテーマに対応しているわけですが、ウサギという動物に安心できるというイメージがありますし、ウサギがのんびりと集まっていることから、この場所も安心できる場所なんだというイメージがわきます。
根本:イラスト的なポイントは光の表現と、雪の静かな感じです。雪に音が吸収されて静か~な感じが出ているのではないかと思います。
鈴木: 音がない音が聞こえてくる気がしますね。自然と文明のバランスの違和感でいえば、木からライトが出ていて、それを普通にウサギが使っているというところ。灯りがあることでさらに安心感が高まっていると思います。
鈴木: シャケは指標動物と呼ばれる、環境をはかる上で重要な生物なんです。シャケについて調べればその場所の健康値がわかるという、環境のシンボル的な存在なのです。最後の扉絵でもあるので、少しフェードアウトするという意味で夕方のイメージを使っています。向こうが明るくて手前が暗いという逆光の感じもいいと思います。
根本: このアイデアが出てきたのは多摩川の河原沿いを自転車で走りながら川を眺めているときです。夕方、親子が釣りをしに来ているというイメージです。
鈴木: ここに立っている看板はどう見ても人間のためのものではない。だから、見た人が「いったい何なのだろう」と考える、その感じがいいと思います。この「いろいろと考える」というコンセプトはすべてのイラストについて言えるのではないかと思います。
あなたの一番のお気に入りはどのページですか? 一 つ一つのイラストが持つテーマと込められたメッセージ、そしてよーく見るとわかる細かなディテール、たくさんのこだわりが詰まったイラストを皆さんもぜひ冊子を手にとって、ゆっくりと見てみてください!
大丸有CSRレポート2010冊子版は、エコッツェリアと地域で開催されるイベントなどで配布しています。