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【地球大学アドバンス速報】第37回 地球大学アドバンス「循環型社会のデザイン~都市型3Rの可能性」(益田 文和氏・半谷 栄寿氏)

2010年最後の地球大学は、「循環型社会のデザイン」をテーマに、次のお二方をゲストに招いて12月16日(木)に開催されました。

・益田 文和氏(インダストリアルデザイナー、(株)オープンハウス 代表取締役、東京造形大学 デザイン学科 教授)
・半谷 栄寿氏(環境NPOオフィス町内会代表)

◎捨てるデザインから循環させるデザインへ~竹村 真一氏

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都市型ライフスタイルの裏側には、膨大な廃棄物の問題が潜んでいます。

たとえば食。「豊かさ」の負の側面として、世界中の食料を飲み込む「飽食」が問題とされています。さらに、「食料を大量に捨てる"放食"の問題も見過ごすことはできない」と竹村氏は指摘します。
竹村氏によれば、「日本全体で1日33,000トン、東京だけでも1日6,000トンの食料を廃棄している。アメリカは、日本の3倍を上回る1日11万トンもの食料を廃棄している」ということです。もちろん、廃棄にもコストがかかります。1トンあたり10万円と見積もると、日本全体で食べ物を捨てるために33億円もの金額が使われていることになります。

もう一つの例は工業製品です。「世界中で1日3,500万トンもの工業廃棄物が出されている。工業製品の象徴ともいえる車に限ってみても、1日20万台生産する一方で、毎日12万台の車が廃棄されている」というのが、竹村氏が指摘する現実です。
一方で、「都市鉱山」という言葉が最近注目を集めています。工業廃棄物の中にレアメタルを含む多くの鉱物資源が含まれていて、それを活用する動きのことです。膨大な人口を抱えるアジア諸国が経済発展を続ける中、資源の逼迫・価格高騰が将来起こるべき問題として懸念されていますが、「都市鉱山」に眠る資源を有効活用することで、その問題を回避できると期待されています。

ここから見えてくるのは、「ものを捨てないデザイン」の重要性です。20世紀以来の工業は、捨てるときのことを考えず、大量のものを作っては捨てるということを繰り返してきました。その反省を受けて、ものをつくる時点で捨てることを考える、「ゆりかごから墓場まで」という考え方が提唱されています。この標語は、イギリスの福祉政策として提唱されたものですが、いまではものづくりの現場でも大きなテーマとなっています。
たとえば、工業製品に含まれる鉱物資源を、捨てるときに取り出してリサイクルしやすいように予め設計しておくことがその一例です。このことを、「耐久消費財ではなく、壊しやすいデザイン」と竹村氏は呼んでいます。
さらに最近では、「ゆりかごから墓場まで」をもう一歩推し進め、「ゴミはデザインの失敗」という考え方に立ち、「ゆりかごからゆりかごまで(Cradle to Cradle)」という方法論が提唱されて注目を集めています。

もののライフサイクルをどのように評価・管理し、デザインしていくか。21世紀のものづくりは、その大きな課題に直面しているといえます。

◎自然の循環システムに合わせたものづくりを~益田 文和氏

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益田氏は、インダストリアルデザイナーの立場で、ものづくりの現場に長年携わってきました。益田氏が言うには、「デザイナーにはオプティミスト、影の部分を考えない人種が多い。作り出すことは好きだけれども、後のことを考えない」ということです。自身の反省の念を込めて、「デザインの立場で廃棄の問題を考えざるをえない」というのが、益田氏の講演のテーマです。

ここ数年で、「サステナブル(sustainable)」という言葉が随分と市民権を得てきました。「持続的」や「持続可能な」と訳されることが多いこの言葉ですが、益田氏曰く「"発展的"、"成長的"、"流動的"という意味合いの方が近い」ということです。益田氏は、このうちの「流動的」という言葉に注目します。
「"流動的"というのは生態系循環のイメージに近い。いまある状態を"持続"していくのではなくて、本当の意味での"サステナブル"な社会をつくっていく上で、自然界の循環システムに人間がどうやって合わせていくかということが問われている」と益田氏は指摘します。

世界の老舗大国とも言われているほど、日本には数百年という長いスパンでの、ものづくりの伝統が息づいています。「伝統工芸」と呼ばれるこうした分野では、優れた自然素材を完全に使いきって、環境にダメージを与えずに生活をつくり上げていく多くの知恵が伝えられてきています。いまこそ、私たちの足元にある伝統の技に、多くを学ぶ必要があるように思います。

「自然界の循環システムに乗れなかったものについては人間が責任を取っていかなくてはいけない」と益田氏は続けます。今回の講演の副題にもなっている「3R」=「Reduce(ごみを減らす)」「Reuse(再利用してごみにしない)」「Recycle(ごみの再生利用)」に、「Refuse(拒絶する)」を加えて4Rと呼ぶこともあります。自然界の循環システムにどうやっても合わないものは、「使わない」「つくらない」という拒絶の決断をすることが、我々世代には求められているのかもしれません。

◎「まち」と森の循環システム~半谷 栄寿氏

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半谷氏は、ここ丸の内で、オフィスの古紙を集めてリサイクルする「オフィス町内会」という活動に、20年来取り組んできました。現在では、1,135の事業所と、31の古紙回収会社が会員として参加し、年間5,810トンの古紙を回収しています。

20年続いたポイントは、半谷氏曰く「リサイクルの意思はあるけれども、1社で4トントラック1台分には満たないような中小規模のオフィスを含めて、まち全体の取り組みとして仕組みをつくったこと」にあります。ある種の共同購入の仕組みともいえます。
もう一つのポイントは、「活動に関わる人全員が、経済的なメリットを得られる仕組みをつくったこと」(半谷氏)にあります。
古紙を出す事業所は、一般廃棄物として処理するときよりも安価に古紙を処分することができます(A)。古紙回収会社は、「オフィス町内会」から得る一定割合の古紙回収料(B)が、安定した収入源の一つになっています。町内会の事務局は、AとBとの差額で運営費をまかない、主体的な活動を維持しています。

2005年からは、古紙回収の活動に加えて、日本の森の間伐を促進するための「森の町内会」の活動を始めました。
日本は、国土のおよそ7割を森林に覆われた森林大国でありながら、大量の木材を輸入しています。輸入材の価格の低さに国産材が太刀打ちできないのがその理由です。結果、国内の林業は低迷し、管理が行き届かずに荒れた森林が多くを占めています。
「森の町内会」は、「オフィス町内会」の紙の循環システムからさらに一歩踏み込んで、紙をきっかけに都市と森をつなぎ、日本の森林に活力を取り戻そうとする試みです。
具体的な活動内容は、普通の印刷用紙に紙代の10%の環境価値を乗せた「間伐に寄与する紙」を販売し、得られた環境価値分を活用して間伐を促進することです。2010年の実績では、全国6箇所の森林組合と連携して、間伐した森林面積は58ヘクタールに及びます。

国内のCO2排出権取引スキームJ-VERでは、間伐によるCO2排出権クレジットが認められています。「森の町内会」の間伐も、J-VERの排出権クレジットとして認定され、名古屋で開催されたCOP10のCO2排出をオフセットするために使われました。
「森の町内会」は、「キッザニア東京」内に、子どもが身近に枝打ちを体験できる「キッザニアの森」を整備しています。排出権クレジットの譲渡により得られた金額は、この「キッザニアの森」の整備に充てています。

「Cradle to Cradle」の考え方の中では、「global economy」の対概念としての「distribute economy(分散経済)」が、「サステナブル」な社会をつくっていく重要な要素として掲げられています。これはすなわち、身近にあるものを外からの輸入に頼るのではなくて、国土の中で、あるいは一つの地域の中で、資源を循環させて経済を成立させることが求められているということではないでしょうか。
紙と森林資源の分野で循環システムの確立を目指す「オフィス町内会」と「森の町内会」の試みは、「サステナブル」な社会・経済に向かう一つの現実的な動きといえるのかもしれません。

次回
第38回地球大学アドバンス〔TOKYO SHIFT シリーズ 第10回〕地球都市のソフトランディング

日時:2011年1月24日 (木) 18:30~20:30
ゲスト:小原 昌氏(東京都環境局・計画課長、低炭素化・自動車公害対策担当)ほか
企画・司会:竹村 真一氏(Earth Literacy Program代表/エコッツェリアプロデューサー)
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