毎回ユニークな講座の登場が楽しみな丸の内朝大学。そんな丸の内朝大学の2011年春学期で、ひときわ眼を引くのが「アーバン木こりクラス」です。今回は、気になる同クラスの第2回目に潜入してきました。
アーバン木こりクラスの受講生は35人。自己紹介を聞いていると、受講した理由は「木を切ってみたい」「生まれながらの山ガールなので、今度は森を攻めたい」「名前に惹かれて」など、さまざま。同じく丸の内朝大学の農業クラスや環境・ソーシャルプロデューサークラスのOB/OGも多いようです。
第2回の講師 末松広行氏(林野庁林政部長)からは、国際森林年と日本の森林に関するレクチャーがあり、エピソードを交えたわかりやすい説明にアーバン木こりの卵たちは「なるほど」とうなずいていました。講座後に末松氏にお話を伺いました。
面白かったですね。東京の真ん中に森に関心がある方がこんなにいるなんてと驚きました。
日本の森は、人と折り合いをつけながら育まれてきました。人の手が入って豊かになってきたものが、最近は人の手が入らなくなったことで豊かでなくなってしまった。
そういった森の成り立ちですとか、森林の価値をこの講座を通してもっと知ってもらえるといいですね。森がお金になるのは木を切って木材になるときだけですが、森には洪水や土砂の流出を防止するといった国土保全の効果、気候を保つ効果、栄養を流して豊かな海をつくる効果、保険・休養機能などのたくさんの価値があり、私たちはそれをタダでもらっています。
しかし、木材の価格や消費量の問題から、木材を売った代金だけで森を維持するのには無理があります。最近では会社のCSRなどで森の保全を行っているところもありますが、ある程度はそういった民間活動の人海戦術で助けていく必要があるでしょうね。
そうですね。森や木の価値を都会の人達に分かってもらうことも必要だし、山村の人たちとの交流のチャンスをつくっていくことも大切です。そうすることで、山村の経済をまわしていく。森と都会の人との接点は入りやすくわかりやすいものであることが重要だと思います。
朝大学の木こりクラスはチェーンソーで丸太を切る体験やフィールドワークがあるのがいいですね。森に行けばみんな本物の木こりになれるわけじゃないですが、肌で感じれば自然とわかるものもありますから。
個人的にはGDPのような森の経済効果を計る指数をつくるといいと思うんです。オープンファーム(参加型農園)などは、誰かがお金を払って手伝いにきてくれて作物の収穫までできる。手伝っている人が払ったお金がGDPに換算されるような富であり価値なわけです。払ったお金以上の価値があれば幸せなんですよね。朝大学のフィールドワークも、山村の人たちが普通にやっていることを体験することが都会の人達にとっての価値になっている。そういう価値のわかりやすい指数があるといいと思います。
それと、林業の効率を上げることです。日本の林業の効率はまだまだ上げられます。ドイツの効率は日本の平均の2倍以上だと言われています。ドイツには細い道が網の目のように張り巡らせてあって、高性能の機械で木をガシッとつかんでバシッと切る。ものすごく効率が良いんです。
まずは林業の価値をきちんと伝えること。そして、日本人が得意とする、効率を重視した施策をやる。あとは森林の価値を都市にも分け与えて、それを山村の経済につなげていくことですね。
震災の瓦礫を使ったバイオマス発電のアイデアなど、柔軟な意見でメディアなどにも登場する末松広行氏には、今後も注目です!
5月には山梨県でのフィールドワークで伐採やジビエBBQなどを体験したアーバン木こりクラス。全ての講義が終わる6月上旬には丸の内で立派なアーバン木こりたちを目にすることができるでしょう。日本の国土面積の7割を占める森林の行方を考えることは、私たちの足元にある暮らしのより良いあり方を見直す機会になりそうです。「アーバン木こりまでは......」というみなさんも、国際森林年のこの機会に身近な山や森と触れ合ってみては?