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これからの地方と都市の連携を探る〜震災復興イベント「Rebirth東北フードプロジェクト」にみる食を通した連携 第3回

震災復興イベント「Rebirth東北フードプロジェクト」を通して、これからの都市と地方の連携を探る連載最終回となる第3回は、このプロジェクトがつなげたものの振り返りと第三弾イベント、そして未来への展望について書いてみたい。

プロジェクトがつなげた、食、人、知恵

3.11以降、数々の復興プロジェクトに関わったおかげで、地元宮城の生産者、事業者とこれまでにないほどの密度でお会いしてきた。皆さん懸命に、復旧・復興のため今できることに取り組んでいた。その中で昨年秋以降皆さんの口から揃って出てくるようになったのは「元に戻るだけでは退化だ。復興とは先に進むためのものを生み出し進化すること。」という言葉だった。まさに未来のための再生「Rebirth」。

「Rebirth東北フードプロジェクト」は、2011年11月14日の「泉パークタウン タピオ」&「仙台ロイヤルパークホテル」で開催された、丸の内シェフズクラブの5名のシェフと宮城の3名のシェフによる宮城県の食材をつかったオリジナルレシピの披露を第一弾としてスタートした。一流シェフがメニューを考案調理したこのイベントは、生産者にとっても大きな刺激になった。また、このイベントをきっかけに生産者同士の交流も多数生まれたようだ。
地域活性に必要な要素として「よそ者、若者、ばか者」とよく言われるが、東京という「よそ者」の視点が入ったことによる成果、ともいえるかもしれない。

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第二弾として、2012年2月20日より2週間丸ビル1階「丸の内カフェ ease」で行われた「はらくっつい宮城食堂」では、第一弾のメニューの成果を丸の内に持ち込み、一般消費者や東京の飲食関係者にランチメニューとして提供をした。丸の内シェフズクラブのシェフの料理だけでなく、宮城のシェフ2名による「東北代表プレート」もあり、丸の内と宮城をつないでいる企画であることが見える化できた好企画で、連日大盛況であった。

はじめは生産者応援イベントとしてスタートした企画だったが、2回のイベントが実施される過程で、自治体や地元のシェフを巻き込み、次なるテーマ「シェフの絆」が生み出され、大きく成長した。そしてこのプロジェクトの変化から見えることこそが、これからの宮城の「食」に投げかけた、大きなテーマということがいえるのである。

食材王国から食文化王国へ進化しよう

東北の人たちが言う「元に戻るだけでは退化だ。復興とは先に進むためのものを生み出し進化することだ。」という言葉に照らし合わせると、宮城の「食」は何を生み出すべきなのか? 生産者のがんばりによる「食材」の復活や、新しい形の食流通ルートをつくり出すことも重要だが、私はそれに加えて宮城の「食文化」の再ブランディングではないだろうか、と考えている。

これまで、宮城は上質な素材の良い海産物や農業生産物、そして恵まれた立地による整った流通網により「食材王国」として語られることが多かった。その反面「食文化」という側面で語られることはあまりなかったように思う。魅力ある食材を使った、伝統的な食文化の再発見と新しい食文化の創出こそが、「先に進むためのものを生み出し進化すること」である。

サステナブルにつづく絆を強く、太く

Rebirth東北フードプロジェクトは、地元宮城の生産者、シェフたちに刺激を与え始めている。「地元食材に誇りを持ったシェフたちの宮城シェフズクラブのような動きも出てきつつある」と今回も地元コーディネーターとして関わる(有)マイティー千葉重 代表取締役の千葉大貴さんは語る。

そのような効果も生まれ始めるなかで、第三弾イベントが仙台ロイヤルパークホテルで4月16日に開催される。テーマは「シェフの絆」。 今度も丸の内のシェフたちと宮城のパートナーシェフのコラボレーションにおけるメニューを味わえる。

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丸の内シュフズクラブ参加シェフ 左から、笹岡隆次氏(恵比寿笹岡主人)、三國清三氏(ミクニマルノウチ オーナー)、服部幸應氏(丸の内シェフズクラブ会長)、ステファノ・ダル・モーロ氏(アンティカ・オステリア・デル・ポンテ総料理長)、遠藤浄氏(四川豆花飯荘東京店料理長)
東北エリア参加シェフ 右から、池田一之氏(仙台ロイヤルパークホテル総料理長)、赤間善久氏(レストラン・シェヌー オーナーシェフ)、佐藤和則氏(レストラン・シェ・パパ オーナーシェフ)

「つなげよう、春の旬宴 ~宮城の幸~」

今回のイベント自体は関係者招待中心のクローズドなものであるが、ここで発表されたレシピはオープン化される。宮城、丸の内の各飲食店でのメニュー展開~名物メニュー化へ、そして商品開発まで想定された持続的な活動につなげていこうという試みだ。お互いにリスペクトしあう生産者とシェフの交流、丸の内と宮城のシェフとの交流が宮城の新しい食文化をつくり上げていく。そのために、このプロジェクトが非常に大きな役割を果たす。

このモデルは都市と地域の連携の一つの形として拡げていくことができる。丸の内シェフズクラブと宮城だけの専売特許ではない。日本全国いろんな地域で、ぜひ、真似をして欲しい。

三回シリーズのRebirth東北フードプロジェクトレポートはここで一旦終わるが、4月16日のイベントから始まる新しいストーリーもまたどこかでお届けできれば、と思っている。 これからの「食文化王国」宮城にぜひご期待を。

氏家滉一(うじいえ・こういち)
株式会社都市設計 H.O.M.E. Project 取締役。 東京と仙台の二拠点で建築設計、コンテンツプロデュース、地域活性など 幅広いプロジェクトを手掛ける。 丸の内朝大学にはコンテンツプロデュースで関わる。 昨年7月に行われたMIYAGI AID in GINZAでは実行委員長、 Rebirth東北フードプロジェクトではイベントディレクション、 その他、名取・美田園ひまわりプロジェクトなど、 多くの復興関連プロジェクトに東京と宮城をつなぐ役割で積極的に参加している。 宮城県出身。

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