余震は少なくなってきたものの、まだまだ地震への不安が消えない日々が続きます。防災グッズなど身近な備えや避難場所の確認などはもちろん、毎日長い時間を過ごす場所・家やオフィスの安全性も確認しておきたいものです。しかし、地震に関する建物の話でよく耳にする「耐震」「制震」「免震」といった言葉の意味って、ちょっとわかりにくいですよね。今回はそんな「耐震」「制震」「免震」という建物の構造について解説してみましょう。
これが地震による建物損壊の流れです。つまりは構造の問題なんですね。損壊を防ぐための方法は3つあります。
1.が「耐震」、2.が「制震」、3.が「免震」といわれています。それでは、それぞれについてもっと詳しくみてみましょう。
広い意味では建物が地震によって破壊・損傷しないようにすることを意味する「耐震」ですが、「制震」「免震」などと区別して使われる場合は少し意味が異なります。建物の耐震は、建物の構造体を強く丈夫にすることで倒壊を防ぎ、人の生命を守ります。そう簡単に建物自体は崩れませんが、揺れの影響をそのまま受けるのでダメージを受けやすい構造です。家具などが倒れたりする可能性が高いので、転倒防止などの対策をしっかりしておきましょう。
構造に制震部材を組み込むことで、地震エネルギーが吸収・制御され、揺れも建物全体にかかる力が低減されます。制震部材の働きによりエネルギーの吸収能力が高まり、建物のダメージを抑えることができます。
免震は建物の土台に免震装置を設置して揺れを吸収するものです。制震に比べて建物自体は固いのですが、免震装置がエネルギーを吸収するため建物にかかる負荷は小さくなります。また、建物全体が地面と平行に揺れるので、体感震度も小さいのが特徴です。ただ、免震の場合も、直下型の地震にはあまり効果がないとされています。
つまり、感じる揺れや建物にかかる力は免震<制震<耐震となるわけです。あなたのオフィスや住宅はどんな地震対策がとられているでしょう?この機会に調べてみてもよいかもしれませんね。
とはいえ、築30年を超える建物も多く残る大丸有。日本工業倶楽部会館・三菱UFJ信託銀行本店ビルのような文化的建築物を残しながら建て替えられたビルは、保存建物を免震で補強した上で新築部分の地下構造物の上に乗せ、さらにオーバーハングする新築部分のタワー棟には、制震部材を配置することで耐震性を高めています。建て替えのない建物に関しても、1981年に改正された建築基準法による新耐震基準を十分満たすよう耐震補強されています。
日本の建築の歴史は地震との戦いの歴史でもあるのです。絶対に安心ということはありませんが、今回の東北地方太平洋沖地震で新丸ビルのような新しい高層ビルの耐震性能がかなり高いことがわかりました。地震が起きたら逃げ込める耐震性能の高いビルを普段からチェックしておいてもいいかもしれませんね。
*記事の執筆にあたり、株式会社三菱地所設計 構造設計部 小川一郎さんにご協力いただきました