過去のアーカイブ過去のニュース

【環境コミュニケーションWG】新時代のCSRを学ぶ 「LIGHT UP NIPPON」高田佳岳氏

3.jpg

エコッツェリアの会員企業のCSR担当者が集まって、よりよい「環境コミュニケーション」のあり方とは何か、そしてそれをどう伝えていけば良いのかをワーキングショップ形式で考える環境コミュニケーションワーキング。第3回目は、ゲストにLIGHT UP NIPPONの高田佳岳氏をお迎えしました。

LIGHT UP NIPPONは、東日本大震災の「追悼」と「復興」の意味を込め、東北から北関東にかけての太平洋沿岸複数か所で、花火を一斉に打ち上げるというプロジェクト。8月11日に11ヶ所で実施、33,500名を集めたこのイベント(募金・協賛金はなんと62,291,686円!)は、たくさんのメディアにも取り上げられたので、ご存知の方も多いでしょう。まだイベントの余韻も冷めやらぬ8月29日、高田氏ご自身がこの注目のプロジェクトの裏側を大いに語ってくださいました。

LIGHT UP NIPPON

自分にできること 自分にしかできないこと

4.jpg

あの3月11日の後、多くの人が抱いた何かしなければとの思い。高田氏の務める会社でも自宅待機となるなか、自分にできることはなにか、自分にしかできないことはなにかを自問自答します。人口に占める被災率が高く被害の大きかった岩手県大槌町は、実は高田氏が学生時代に2年ほど暮した土地。電話はもちろんつながらない、大学の研究所経由ですら状況もわからないと、知人の安否さえ確認できない日々に心を痛めていました。

「まだ地震後、2日目か3日目だったと思います。テレビで見たのですが、石巻市の市役所の女性の方が、子どもはこんなときでも遊びたいものだからと、縄跳びを用意して遊ばせていたんです。そのときの子どもたちの笑顔。この大変な状況でワーワーキャーキャー、とにかくそのスゴイ笑顔が心にひっかかりました

そして自宅待機も終わり、東京に少し日常が戻ったころ、この後続く自粛ムードのさきがけともなった東京湾花火大会中止の報が入ります。

「子どもの笑顔と花火大会中止の知らせ。この二つが自分のなかでつながった。3月29日でした。そうだ、花火を東北に持っていこう。学生時代にダイビングのインストラクターを経験、また職場である広告代理店ではイベントの企画運営チームにいて、楽しさを紹介して人に喜んでもらうことこそ、自分の得意領域。東北で花火をあげる、これこそ自分にしかできない!今思えば、本当にただの思い込みなんですけどね」

高田氏は最初、会社にこのプロジェクトを一緒にやらないかと打診しますが、一旦は断られてしまい、"じゃ自分でやります"と決断することに。しかし程なく、会社もバックアップしてくれる体制となりました。

4月9日、アポも伝手もなく初めての現地入り。
「実際に瓦礫をみて初めて心が折れました。東京で相談した人10人中9人に口々に言われた"花火?そんなタイミングじゃないだろ"を、ここにきて初めて実感したんです」

その茫然としていた背中を押してくれたのが大槌町の公民館の館長の言葉。"おまえが本気でやるって言うんだったら、国や県や町がダメって言おうが、大槌町だけはあげてやるよ"――自身も被災しながら避難所のリーダーとして日々奮闘されていた方のその一言で、高田氏の腹は決まりました。

現地を、仲間を、クライアントを巻き込む!

2.jpg

それからはひたすら走る日々。同じ気持ちを持った人に現地で出会えるはずと信じ、4か月間毎週末現地に通う生活。そんななか、東京である程度組み立てたパッケージを現地へ持ち込めばいい、現地は受け入れる場所だけ用意してもらえればと考えていた自分に、違和感を感じ始めます。

「現地の人は援助が欲しいのではなく、早く自立しようと頑張っている。これは僕の感覚的なものですが、東京から出来上がったものを持ち込むというだけでは、自分たちの力で立ち上がろうとしている人たちに向って失礼なんじゃないか。そこで僕たちはなにがなんでも東京でお金を集めてくるから、運営を取り仕切る実行委員会は現地にまかせようとなったんです」

LIGHT UP NIPPON.png

一方、東京では20人ほどの仲間と大急ぎで任意団体を立ち上げます。全員会社勤め、各々が得意なことをできる範囲でやるというスタンス。肝心の資金は任意団体では寄付として受けられないので、広告協賛という名目で集め始めました。

「媒体を買うお金はないけどパブリシティをとれる自信は最初からあったので、クライアントには、プロモーションを控えるのではなくうまく使ってほしいとお願いしていました。結果論ですが、ここは企業によって温度差があり、露出に結構な差がついてしまった。僕個人の考えですが、CSRだからプロモーショナルになってはいけないというのは違うかなと。ボランティアでは続きませんから。僕たちの任意団体が個人が得意なことをやるように、企業は企業の得意なことをやればいいと思うんです」

そして、8月11日のイベント当日。
「当日はとにかく事故がないことだけ。無事終わってほっとしたというのが正直なところです。でも、ふたを開けてみれば、花火をあげられればいいと思っていた会場には、屋台が並び、有志が集めてくれた浴衣を着た子どもたちが集まり、縁日ではスイカわりまでと想像以上の盛り上がり。これは全部各地の実行委員会が自発的に用意してくれたものです。今ちょうど、そんなレポートをたくさんもらっていて、瞬間的かもしれないが楽しんでくれている笑顔を見ると、やっぱり嬉しいなと思っているところなんです」

最後に、今後を語ってくれました。
「LIGHT UP NIPPONは、名前のとおり、日本を元気にする、笑顔を届けるというところをこれからもやっていきたい。もちろん来年の夏もまた花火をあげますでも来年まで待つつもりはないんです。山田町の実行委員に言われたのですが、復興は元通りにするのでは意味がない。元より良いものをつくらないと。今東北はいろんなルールが壊れてしまった。だからこそ僕たちが動けるすきまがあるんです。今急がなければ元以上のものが作れなくなる。そして、小さな町の現実がニュースから消えてしまわないように、できることをやっていきたい。10月には日本橋のお祭りに東北の伝統芸能の踊りを持ってこようと思ってるんです」


質疑応答ののち、前回同様ワークショップがスタート。今回は(もちろん)花火にちなんだチーム名です。
1)今回の講演で一番印象的だったことは?/ 2)今回の講演から学んだことは?/ 3)今後に生かしていきたいと思ったことは?/ 4)次の一歩はなにから?
と、チームごとにまとめ、発表です!

w1.jpg w5.jpg


タマヤ~!手作り花火打上げ成功 - ねずみ花火チーム

1)今回の講演で一番印象的だったことは?
長期間にわたって花火大会を実現させようと東北中を走り廻った情熱に感動。
そした対象として選んだ花火大会は、観賞して楽しむというだけでなく、見る人によっては供養となったりと、日本人の琴線に触れる素晴らしいイベントということを再確認しました。
2)今回の講演から学んだことは?
現地の人たち、自分の廻りの人たちとのつながり、共鳴が重要。その仲間と走りながらやっていくうちに問題が解決する。
3)今後に生かしていきたいと思ったことは?
東京でパッケージにするのではなく、地元主導型のサポートという点に力点をおきたい。
4)次の一歩はなにから?
失敗例や成功例を過去から学び、どうすればできるか学習しながら行動する。


思いを打ち上げる - へび花火チーム

1)今回の講演で一番印象的だったことは?
会社に反対されても個人レベルで実施しようと思ったこと。
2)今回の講演から学んだことは?
まず現地(現場)に向かうこと。/ネットワークの広がりの重要性。/発信する重要性。/復興とは前より良いものを作ること。
3)今後に生かしていきたいと思ったことは?
思いを持って仕事をしていく。/組織の中で発信し続ける。
4)次の一歩はなにから?
反対されても、提案方法を変えたり、別の方法を検討する。


自分の直感を大切に! まずは行動を! - かんしゃく玉チーム

1)今回の講演で一番印象的だったことは?
会社がダメと言ったことを、個人でやり続けた!/地元の人の巻き込み/(会社・家庭)周囲の理解・サポート・協力
2)今回の講演から学んだことは?
最初の一歩を踏み出す勇気/信念を持つ/実行力/明確なビジョン
3)今後に生かしていきたいと思ったことは?
簡単にあきらめない。/全力を尽くす。/型にしばられない。
4)次の一歩はなにから?
自分のfeeling、直観を大切に。/自分ができることは何か。/固定観念にとらわれない。


個人の「突破力」を最大限活かし、広い「組織力」を生む - 線香花火チーム

1)今回の講演で一番印象的だったことは?
自分にしかできないと思い込み、すぐに行動に移せたことです。
2)今回の講演から学んだことは?
組織でなくても、人と人がつながることで大きな力が生み出せるということ。そこから、人と組織がうまく調和するようになっていくのが良いと思います。
3)今後に生かしていきたいと思ったことは?
最初は個人のスピード(企業はなかなか難しい)が、うまく後から企業を巻き込めるのがベスト!!
4)次の一歩はなにから?
個人のネットワークをもっと活かしたい!/手が挙がったら、それを受け止めることができる社内の部署でありたい。


私の「LIGHT UP NIPPON」を実現するには - ロケット花火チーム

1)今回の講演で一番印象的だったことは?
会社とケンカしながらでも、個人で突き進んでいった点。
2)今回の講演から学んだことは?
安易にギブアップせず、強い思いを持って行動していくこと。
3)今後に生かしていきたいと思ったことは?
考えすぎず、自分の信念を信じて、まず行動してみること。
4)次の一歩はなにから?
やりたいことをはっきりさせて、あきらめずにコミュニケーションを取り続けること。


今回の参加企業

関連記事

2011年
2010年