子どもたちの夏休みも終盤にさしかかった、8月23日(木)。エコキッズ探検隊2012では、夏涼しく、冬暖かく住まう家づくりを学ぼうというワークショップ「未来のエコハウスをつくろう!」が開催されました。10時から16時までと半日がかり、真っ黒に日焼けした元気いっぱいのキッズ32名が参加したプログラムの模様をレポートします。
午前中は、家づくりに欠かせない"熱"について学びました。先生は旭化成ホームズ株式会社くらしノベーション研究所の村松浩氏と下川美代子氏。
教室前方に置かれたサーモカメラには、子どもたちも興味津々。
「金属の板と木の板どちらがあたたかい?」を触って確認。「金属のほうが冷たい!」とあちらこちらで声が。ところがサーモカメラで見てみると、金属の板も木の板もそして床までも同じ水色で同じ温度。ではどうして木の板のほうを暖かく感じるのでしょうか。答えは、手の熱が金属に奪われたから。温度と体感温度は違うということがわかりました。
「体感温度、人が感じる温度というのは実は絶対的なものではありません。例えば、30℃の水風呂、30℃の外気温では、当然水風呂を冷たく感じますね。気温は同じなのに、木の下などの日陰も涼しく感じるでしょう。このようなことを考えると、家を涼しくするのは、家を閉め切ってエアコンをかけることだけではないはす。なにかできることがあるんじゃないかを考えていきましょう」
まず"日差し"について。授業がスタートしたときに点灯した電球のまわりにすだれのある家、ない家の実験装置。それぞれの模型内の温度をはかりました。
この短時間の間になんと、30℃と45℃と、15℃も違うという結果に。「こんなに違うんだ!」とみんな驚いた様子。さらに、スライド上で生きている植物と造花をあたためるという実験の結果を確認。植物は水分で温度調整をしているから暖まりにくく、緑のカーテンがすだれより効果的なのはこの性質によるものとのこと。ほかにも、夏の高い太陽の日差しは1mくらい軒をもうけることで防げるということも学びました。
続いては"風"について。家の中に風の道をつくるには、意外と知られていないのが出口の重要性です。マンションなどでは、南面には大きな窓、北面には玄関や洗面などであまり窓がないという設計が多く見られますが、北面の窓が大きいと風は流れやすいのだそう。また、都市には風はないと思われがちですが、実は屋根の上を吹いているとのこと。階段や屋根の窓を使って上空の風を上手に使うのも風の道をつくるポイントになるそうです。
体から出る"熱"を逃がさないようにと人がたくさん着込むように、家も断熱材という服を着せると暖かさが保てます。最近は断熱材の性能も良いため、冬の家のサーモグラフをとってみると断熱材のない窓から熱が逃げていっているのが一目瞭然。カーテンを閉めるなど熱を逃がさないようにするのが肝心とのこと。
サーモカメラを使った足あとの実験では、足から熱が床にうつっていく様子を確認。冬はカーペット・じゅうたん、靴下をはくことなどが有効なのがよくわかりました。逆に夏はフローリング、裸足などで熱を移すというのも理にかなっているのですね。
「1つの家で夏と冬に対応しなければいけないのが日本の家作りの難しいところ。ここまで学んできたことを活かすと、特別な設備を使わなくても省エネはできる。なにかできることがあるんじゃないかという気持ちがみんなのなかに残ってくれればと思います。このあたりをちょっと考えながら午後はエコハウスをつくってみましょう」
1時間びっちりとレクチャーを受けたあとは、午後のエコハウスづくりの参考にするため、"熱"の元を探しに皇居外苑へ。
アスファルト、土、木陰...などそれぞれ放射温度計を手にして、思い思いのポイントを探して測定しました。うだるような暑さのなか、さすが子どもたち、元気です!!
教室に戻ってランチをとったあとは、早速工作の時間がスタート。
「すだれより緑のカーテンにしたい」「軒をちゃんと取りたいんだけど...」と午前中のレクチャーで学んだことをしっかりと活かしていましたよ。また、多くの子どもたちが、屋上緑化、緑のカーテン、ソーラーパネルを取り入れようとしていたのが印象的でした。
さらに「窓の形はこうやって...」「私は一人暮らししたいから、間取りは...」「屋上にお茶するスペースをつくるんだ」「クルマは2台駐車できるように!」などなど、それぞれこだわりが炸裂。あっと言う間に3時間が経過し、ワークショップは終了しました。
子どもたちが持ち帰った、アイデアいっぱいのエコハウスを囲んで、家族でエコな家づくりについての会話がはずんだことでしょう。"特別な設備を使わなくても省エネはできる。なにかできることがあるんじゃないかと考えることが大切"という村松先生の言葉を体感したワークショップでした。