2013/09/03
続々と見つかる太陽系外惑星たち。その探し方も多様です。その中でも日本が得意とする直接撮像法について紹介します。
私の家の近所には、どうやら野良猫が何匹か住み着いているようです。それも複数匹。可愛がってくれる家を何軒か持っているようで、悠々自適で暮らしています。塀の上に寝そべったり、のんびり毛繕いしていたり、羨ましい限りです。
いろいろな性格のネコがいるのですが、なかには警戒心が強い子も。そんな猫の一匹が、ある日子猫を連れていたようなのです。ようなのです、というのは目の端でちらっと見えただけで確信が持てないから。ううむ、どうやったら確認できるでしょうか。
例えば、耳を澄ますのは、ひとつの方法でしょう。大人猫だけでなく子猫のにゃあにゃあいう声が聞こえてくれば、可能性は高そうです。警戒されないよう、夜陰に乗じて遠目から眺めてみるのもいいかもしれません。大人猫の周りをなにかがちょろちょろ動き回っていれば、それは子猫かもしれません。でも、間違いのない証拠がほしければ、直接写真におさめるに超したことはありません。そりゃそうですよね。
近年、加速度的に発見数が増えている太陽系外惑星も全く同じです。太陽系の外にある星々の周りをめぐる惑星を太陽系外惑星と呼びますが、その研究は天文学のホットトピックのひとつ。太陽系以外にはどんな惑星があるのか、そこには生命の居住できる惑星もあるのか、興味をかき立てられます。
しかし、その存在を確かめるのは簡単ではありません。なんせ惑星は小さい。太陽系最大の惑星である木星ですら、太陽に比べて大きさで10分の1、重さでは1000分の1に過ぎません。このような(主星に比べて相対的に)ちっぽけな惑星を見つけるための方法はいくつかあるのですが、その中でも日本が得意とする方法のひとつが、直接撮像法です。
直接撮像法の原理はいたって簡単。眩しすぎる主星を隠した状態で、写真を撮るだけです。眩しい太陽を手で隠して空を見上げるのと同じように、明るい主星を隠してあげれば、暗い惑星が見えてくるという寸法です。
こんなシンプルな理屈なのですが、言うは易し、行うは難し。まずどうやって主星を隠すのか。主星を隠してもなお暗い惑星をどうやって撮影するのか。そういった難題をクリアしたのが、日本が誇るすばる望遠鏡に搭載されたHiCIAO (High Contrast Instrument for the Subaru Next Generation Adaptive Optics)という装置なのです。
現在、この装置を使った太陽系外惑星の直接撮像プロジェクト(SEEDSプロジェクト)が進行中です。主に生まれたての星のまわりにある惑星を探し、惑星がどうやって生まれてくるのか、その秘密を解き明かそうとしています。惑星の発見数では他の方法に後れを取るものの、発見された惑星を直接見ることができることは、直接撮像のたいへん優れた点です。表面温度などの情報はもちろん、将来は大気組成などについても調べることができると期待されています。
続々と見つかる太陽系外惑星は、私たちにいったいなにを教えてくれるのか。今後の進展に期待したいと思います。
※本コラムは、「本郷宇宙塾」8月の講演を参考に執筆しました。
1979年広島県広島市生まれ。
東京大学理学部天文学科卒業、東京大学理学系研究科博士課程修了 (理学博士)、国立天文台広報普及員、ハワイ観測所研究員を経て現在に至る。
東京大学エグゼクティブ・マネジメント・プログラムを担当。専門分野はIa型超新星を用いた距離測定と天文学コミュニケーション論。