企業による環境やCSRに関する広報・普及の現場を取材する【環境コミュニケーションの現場】。第7回は、エネルギー使用量を「見える化」するエネルギー管理システム「ECO-SAS(エコサス)」、高品質高効率のLED照明、新たな照明評価指標などでオフィスや店舗の節電と省エネを総合的にサポートする、パナソニック電工の取り組みを紹介します。東京・港区汐留の東京本社で、同社電材商品営業企画部の高木康行部長・浜松秀明課長と、エンジニアリング事業統括部の谷田川雄介課長に、最新のサービスと機器についてお聞きしました。
浜松: LED照明「エバーレッズ」は、高い快適性と省エネ性、そして安全性をあわせもった革新的なLED照明器具です。ガラス管の中にはたくさんのLEDが並んでいますが、内部の蛍光体を一体型にするなどの工夫により色ムラやバラツキを抑えてあるので、見た目は従来の蛍光灯とほとんど変わりません。また、専用モジュールや反射板により天井や壁面まで照らす配光を実現したほか、空間を自然な色調で照らす演色性もパルック蛍光灯と同等です。しかも消費電力はFLR40形*蛍光灯器具に比べて約4割少なく、4万時間経っても明るさがほとんど変わらない長寿命の製品です。
* FLR40形:蛍光灯の種類の一つ。点灯方式として「ラピッドスタート式(点灯管不要で点灯)」を採用している40Wの蛍光灯器具。オフィス・店舗で数多く使用されている。
高木: (社)日本電球工業会が昨年制定した「JEL規格*」に準拠しています。LED照明は省エネ・長寿命である点が売りですが、多少蛍光灯と比べると重く、古い口金や器具に取り付けた場合に誤挿入などが起きる可能性もあります。JEL規格はこのような不具合を防止するために、直管形LED照明専用の口金形状・の光束・演色性・配光、口金の形状などを定めたものです。こうした総合的な性能の高さが評価されて、省エネや節電に取り組む国内外の工場やオフィスなどからの引き合いがを多くいただいておりますなりました。とくに東日本大震災の後に導入を検討する企業が増えています。
* JEL規格:2010年に定められた「JEL801 L形ピン口金GX16t-5付直管形LEDランプシステム」
LED照明「エバーレッズ」
(社)日本電球工業会 LED照明
谷田川: 「エコサス」は、利用する企業が自らエネルギー使用量を「見える化」して把握するとともに、課題を抽出して対策を立て、さらなる省エネ活動へとつなげていくためのサービスが満載の省エネお助け総合サイトです。最大の特長は、会員登録するだけでほとんどのサービスを無料で、インターネットを経由して利用することができるところです。
改正省エネ法により、エネルギー管理の指定対象が工場・事業場単位から企業単位へ拡大され、年間のエネルギー使用量が一定量以上の企業に対して、各施設のエネルギー使用量を把握・管理することが求められるようになりました。「エコサス」は、拠点ごとに担当者が毎月、電力会社やガス会社から届く伝票に記載されているデータをエクセルに入力するだけで、自動的に一次エネルギーへと換算されて集計・グラフ化され、本社で一括管理することが可能です。管理者権限は数段階に設定でき、省エネ法に基づく定期報告書の作成アシスト機能もご利用いただけます。も自動的に作成されます。また、簡易省エネ診断や省エネのためのノウハウや補助金情報などもあります。
谷田川: 私たちの目的は、お客様が自らエネルギー使用状況を「見える化」して明らかになった問題点を解決する提案を行うこととで、「エコサス」はそのためのコミュニケーションツールと位置づけています。たとえば、「省エネ改善シミュレーション」を用いると、照明・空調設備の運用改善によりどれだけの省エネが可能かを簡単に予測することができるので、LED照明への交換など具体的な対策を提案することができます。この予測は実測値に基づいており、約85%の正確さがあります。
また、今年5月からオフィスビルや食品スーパー向けに提供している「節電対策シミュレーター」では、毎月の電気やガスの使用量を入力して節電項目を設定するだけで、年間の節電効果やピーク時の節電効果を推定することができます。
谷田川: 自動計測システムは、拠点ごとに設置した専用機器で自動計測・収集した使用電力量や温湿度などのデータを、FOMA回線などを経由してインターネット経由でデータセンターに蓄積し、「エコサス」の画面上でグラフ化できるサービスです。機器の買い取りや回線設定などの初期費用がかかりますが、データをアップロードする手間が不要な上、グラフ化されたデータをエクセルファイルにして活用できるなど、省エネ活動を継続していくための機能が豊富です。しかも一度導入すればほとんど手がかかりません。最近ではこのため、テナントによるエネルギー使用量を含めたビル全体の「見える化」を求めるビルオーナーなどからの問い合わせが急増しています。
浜松: 通常、照明の明るさはルクスという照度を示す単位で表されますが、人は明るさや暗さを体感で評価しています。そこで、こうした主観的な「明るさ感」を照明計画の構築に反映するために弊社が新たに開発した照明評価指標が「Feu(フー)」です。「Feu」とはフランス語で火や炎を意味する言葉で、天井や床、壁面など空間全体から目に入ってくる光の明るさ感を総合的にとらえて、定量的な数値で表すことができます。これにより、照明器具の灯数を減らしても人が明るく感じる空間を演出することができ、LED照明などと合わせることでいっそうの省エネが可能になります。
高木: 最近、節電のために照明を消灯・間引き点灯する落とすオフィスが増えていますが、不快感を感じたりあまり暗くすると健康への影響が生じたり、作業効率が悪くなったりすることも考えられます。こうしたことを我慢してしのぐのではなく、「Feu」のようなソフトと「エバーレッズ」などのハードを組み合わせて省エネを図っていくことで、無理せず快適な節電と、今後のエネルギーコストを下げることが実現できると考えています。また、次世代の光源として注目されている有機EL照明パネルの実用化にも力を入れており、将来的にはLED照明と並ぶ柱として育てていく考えです。
高木: 快適な節電を実現するために電気設備業界だからこそできることに取り組もうと、今年の47月から全日本電気工事業工業組合連合会と全日本電設資材卸業協同組合連合会、賛同電気設備メーカーの3社が連携して三位一体の「POWER SAVING」という提案活動を行っています。電気工事業者がオフィス店舗や家庭を訪れた時に電力使用量などをチェックヒアリングして、運用改善や白熱電球のLED化など省エネ型製品への買い替えによる節電を提案するという流れです。
弊社では「節電見直瓦版」や住宅・非住宅向けの「節電のポイント」、「目の付けつけどころシート」などの販促ツールを用意したり、法令や技術に関する情報を共有するための研修会を各地で開催したりしてお客様へのアプローチを支援しています。
浜松: ハード面では、「エネミエールS」という通信機能の付いたモニタが好評です。エネルギー使用量をその場で「見える化」して記録することが可能で、電気を使いすぎそうになるとシグナルやアラームで知らせる機能もあります。とくにテナントビルや銀行、店舗などで導入していただいています。
また、節電のために照明を入れ替えたいけれど資金繰りが厳しい設備投資の資金に余裕がない事業者様向けのサービスとして、リースの仕組みを生かした月々のサービス料金だけで照明器具の導入ができる「あかりEサポート」があります。これにはCO2削減の認証システムや照明器具のリサイクルサービスも含まれます。
谷田川: 「エコサス」には太陽光発電シミュレーターもあり、導入した場合の効果などがよくわかるので気軽に試してほしいですね。「エコサス」などのサービスを通じて多くの方に弊社のファンになっていただき、より深いお付き合いをしていきたいと考えています。
浜松: 節電を求める動きが全国的に広がっているだけに、効果的な省エネ対策をとることで快適に、生産性を落とさず長続きする節電を提案していきます。ビルや店舗など非住宅向けのサイト「エコアイディアでリニューアル」のアクセス数が震災以降増加していることからも、節電や省エネへの関心が高まっていることがうかがえます。同サイトは8月にリニューアルしたばかりですので、ぜひ一度訪れてください。
高木: パナソニックグループは、創業100周年を迎える2018年に「エレクトロニクスNo.1の環境革新企業」となることを目指しています。そのために本社ビルのエネルギー削減など自社の取り組み強化はもちろん、「快適」と「エコ」を両立した製品やサービスを提供していきます。
また、企業への提案だけでなく、「省エネ標語」募集キャンペーンの実施やショウルームでの子ども向け見学会の開催など、エンドユーザー向けのコミュニケーションに力を入れていく考えです。
エコアイディアでリニューアル
第2回 「省エネ標語」募集キャンペーン結果発表