エコッツェリアの会員企業のCSR担当者が集まって、よりよい「環境コミュニケーション」のあり方とは何か、そしてそれをどう伝えていけば良いのかをワーキングショップ形式で考える環境コミュニケーションワーキング。前半プログラムの最後となる第4回目は、ゲストに日本財団CANPANプロジェクトの高島友和氏をお迎えし、「NPOから見た新時代のCSRコラボレーション」をテーマにお話いただきました。
日本財団CANPANプロジェクトは"民産学の活動を支援し、三者の連携を促進することで民間主体のより豊かな社会をづくりに貢献する"という日本財団のプロジェクト。日本財団が、競艇の売上の約2%を交付金として受け、公益活動を行う主にNPOなどのセクターに活動資金を助成するという"お金の支援"を中心とする一方、CANPANでは、NPOに限定せず、ミッションを共有できた団体に"お金以外の支援"を積極的に行っています。NPOが情報発信するブログ・データベースと、その団体を応援したい人がネット上で寄付できる決済の仕組みを提供するWEBサービスとしてスタートし、現在は社会課題を解決するプロジェクトのコーディネイトまでとその活動の幅を拡げました。高島氏はこのなかで主に寄付サイト等を担当されています。
「3.11のそのとき、私は虎ノ門にある海洋船舶ビルという古いビルにいたので、近所の『森カフェ』さんに避難しました。ちょうど1か月前に、美しい村連合というNPOを応援するイベントを一緒に行ったカフェです。当然と自宅のある鎌倉へは帰れなかったのですが、困ったときはお互いさまと言ってくださり、ここで夜を明かすことになりました。この場所で、地震発生から4時間後には支援金を集め始めました」
寄付は2週間で、約9000件、1億円までに。ほとんどが初動4日間に集中し、今すぐ寄付をしたいと思ったときにネットとクレジットカードさえあれば簡単にできるという寄付サイトへのニーズが顕著に表れた結果となりました。
それからの6か月間は、被災地をまわり、現地で必要とされている支援を調査・フィードバックし、復興支援を手伝う企業の支援をするというプロジェクトコーディネイトの活動へ。
「被災地をまわって印象的だったのは、石巻の災害復興協議会。会議室のホワイトボードには、復興マインド、メディカル、漁業支援、キッズなど、各支援分野ごとに活動している団体がリストアップされていました。支援の重複を避けるため、支援が行き届いていない分野を認識するための情報共有。NPOが連携して活動しはじめたというのは、今回が初めてではないでしょうか。このような動きは石巻だけでなく、各地でも見られるようになりました」
そんな高島氏のもとには、企業からも次々と相談が入ります。
「乃村工藝社人事部さんの"社員からボランティアに行きたいという声があがっているが、会社にボランティア休暇制度がない。どうしたら?"とのご相談には、石巻で活動する日本財団をご紹介。津波で作業が遅れていたカキ養殖作業をお手伝いいただきました。また日比谷アメニスさんの"自社ならではのノウハウを使って植栽のお手伝いをしたいが、どこに行けばよいか?"には、南相馬のNPOが進めていたひまわりプロジェクトをつなぎました」
株式会社乃村工藝社「みんな つながろう!」プロジェクト
株式会社日比谷アメニス
「被災地で実感したのは、被災するかどうかは紙一重だということ。地震や台風といった自然災害だけでなく、家族がうつになる、DVを受ける、住んでいる地域が過疎化する...といった社会課題はいつ自分の身にふりかかるかわかりません。解決するためには、専門性の高いNPOとうまく付き合っていくことがとても重要だと思いました」
とは言っても、現在内閣府に登録されているNPOはなんと約40,000団体! どことどう付き合っていけばいいのか......企業のCSR担当者として、頭の痛い問題が残ります。
「CANPANでは、団体自らが登録できる、団体情報DBを持っています。公益活動、社会課題に取り組むのはNPOだけではないという思想のもと、企業の登録も可能で現在約10,000件。このDBのデータ項目は、助成プログラムの申請書をもとに作成しました。お金を出す側である助成機関が、最低限この情報を開示してほしいと団体に要請するデータを網羅しており、情報の登録度に応じて星評価を付しています。さらに、全国の中間支援組織(NPOを支援するNPO)とネットワークを組み、登録された情報を認証してもらっています。第三者の評価は心強いですよね。島根県では一定以上の星をとれば、助成の申請書の一部を省略できるまでに進んでいます」
「震災後に『ふるさとダイアログ』という、現地で活動されている団体に実際の状況をお話いただく対話の会を開きました。このなかで支援に必要なものとしてよく出てきたキーワードが"人・物・金・縁"。震災後1カ月で陸前高田に支援に入った団体に、なぜ陸前高田だったのかと伺うと、たまたま代表の奥さんの実家があったからとのこと。日常にある縁や絆="普段づきあい"が、いざというときの支援の強い動機になるのです」
Check a Toilet(チェック ア トイレット)という、先日人間力大賞を受賞された金子健二さんの面白い取り組みがある。もともと旅行添乗員だった金子さんは、あまりにもユニバーサルトイレの情報がないということで、ご自分で全国にあるユニバーサルトイレの情報を集約するサイトを運営するNPOを立ち上げました。
「これを複数の企業が社員のボランティア活動として取り入れています。アフター5に、会社周辺にあるユニバーサルトイレをチェックし、そのあと懇親会というか飲み会がセットになっているのがポイント。社員交流にも一役買っていて、よい"普段づきあい"になると評判がいいですよ」
「CANPANプロジェクトは、社会課題を解決するためのパートナー選びの触媒だと思ってもらいたい。なにか課題が起きてから、一緒にやろうと一から関係性を作っていくのはなかなか難しい。日々の出会いでも飲み会でもいい......"普段づきあい"から、社会課題を解決する強い関係性が生まれるんじゃないか。"普段づきあい"の可能性を今とても感じていて、CANPANで何かできないかと思っているところなんです」
たくさんの事例を交えた高島氏のお話は、このワーキンググループに参加されている専門家の皆さんでさえ知らないことも多く、新時代のCSRの最先端を垣間見せてくれるものでした。ワークショップでは、
1)今回の講演で一番印象的だったことは?/ 2)今回の講演から学んだことは?/ 3)今後に生かしていきたいと思ったことは?/ 4)次の一歩はなにから?
と、チームごとにまとめ、発表します。安易にも(!?)、パンにちなんだチーム名です!
1)今回の講演で一番印象的だったことは?
NPOの実態がわかった。NPOの可能性を感じた。
2)今回の講演から学んだことは?
企業⇔NPOをつなぐ組織(ex.CANPANの必要性)
3)今後に生かしていきたいと思ったことは?
状況に応じたNPOとの協働、コラボレーション。
4)次の一歩はなにから?
まずはコミュニケーションから。
1)今回の講演で一番印象的だったことは?
CANPANがNPOの評価を行っている点
2)今回の講演から学んだことは?
今後、企業がNPOを評価する軸がうまれ、選定しやすくなりそうだということ。人とのコミュニケーションが企業と団体をつなぐということ。
3)今後に生かしていきたいと思ったことは?
出会いとコミュニケーションを楽しむようにしたい。
4)次の一歩はなにから?
機会があればNPOと向き合い、CANPANのサイトを活用してみたい。