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【環境コミュニケーションの現場】 ポール+「防災」+「デザイン」=「美しいくにづくり」― 安心・安全を支えるヨシモトポール株式会社の「柱事業」

交通標識、街路灯、信号機......。私たちの生活は、たくさんのインフラに支えられています。そして、これらを文字通り"支えて"いるのは、一本の柱(ポール)。何気なく立っているように見えるこのポールに、私たちの安心・安全な暮らしを守るさまざまな機能が埋め込まれていることをご存知でしょうか?

企業による環境やCSRに関する広報・普及の現場を取材する【環境コミュニケーションの現場】。第18回は、さまざまな都市インフラを支えている、ヨシモトポール株式会社の「ポール事業」をご紹介します。昨年創業50年を迎えた事業の概要や理念と共に、急速にニーズが高まっている防災機能について、取締役・営業副本部長の鈴木幸男さん、設計開発グループ・デザインチームの田邊智哉子さんに、お話を聞きました。

中央通り、行幸通り、皇居周辺...
ポールでまちを、より美しく。

― 御社のポールは、丸の内周辺のさまざまなところで目にすることができるようですね。
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行幸通りの照明柱

鈴木: 最も規模が大きいのは、銀座・京橋・日本橋にかけての中央通りに241本立ち並ぶ「デザイン照明柱」です。これは柱全体をLEDで光らせたもので、再生可能なアルミ素材を使い、環境にも配慮した照明柱となっています。また、行幸通りの鉄鋳物でできた照明柱や、皇居周辺の防護柵や照明柱も企画・製作させていただきました。その他にも高速道路・都区道の照明柱、警視庁・県警の信号柱、防災無線柱など、みなさんの身近な場所にも私たちの製品が使われています。

― まちのあらゆる場所で、ヨシモトポールの技術が活かされているのですね。デザインも実にさまざまですよね。

田邊: 私たちは創業以来一貫して、「美しいくにづくりに良い品を」をモットーに、景観づくりにも考慮した製品開発を進めています。このため、照明柱も防災無線柱も、機能性だけではなくデザインにもこだわり、各自治体の環境や景観に合わせて、その都度、特注で製作しています。私たちが目指すのは、ポールがあることで、よりまちが美しく見えるような製品です。"ポールを通したまちづくり"を提案していきたいと思っています。

帰宅困難者も支援する「エコ防災柱」

― 環境への配慮や、防災・災害対応機能を備えた商品にも取り組まれているそうですね。

鈴木: 防災と照明、さらに環境性能を組み合わせた「エコ防災柱」を販売しています。これは、弊社が30年かけて改良を積み重ねてきた防災無線柱の「エースマスト」のノウハウを応用したもので、災害時に役立つ避難誘導や非常用電源の機能を兼ね備えたものです。通常時は、風力と太陽光発電によってLED照明の電力を賄っており、環境にも配慮した製品となっています。

― 災害発生時、具体的にはどのように使うことができるのでしょうか?

田邊: 商用電源が途切れても、太陽光発電と内部バッテリーによって蓄えられた電力でLED照明が光り続けますので、帰宅困難者の避難誘導に役立ちます。このLED照明は、一部取り外しができるようになっており、懐中電灯としても使用可能です。また、非常用電源を使って携帯電話を充電することもできますので、安否確認にも役立てていただけます。

― 東日本大震災でも東京では多くの帰宅困難者が出ましたので、このような機能はニーズがありそうですね。「エコ防災柱」はどちらで導入されているのでしょうか?
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エコ防災柱(左)とウルトラレスキュー(右)

田邊: この製品は阪神淡路大震災(1995年)を機に大阪府と共同で開発を始め、これまで改良を重ねてきたものです。現在、バージョン違いのものを合わせると、大阪府で約100本が稼働しています。また、最近ではこれをさらに使いやすく改良した新商品「ウルトラレスキュー」を開発しました。両サイドのボックスにシャベルなどの非常用工具と電力システムが内蔵されており、移動利用が可能となりました。太陽光パネルも、支柱を回転させることで取り外しができる画期的な構造になっています。こちらもすでに稼働を始めています。

鈴木: 阪神淡路大震災以来、大阪をはじめ関西地方では、防災意識がとても高くなっています。今後も機能・デザインの両面で改良を進め、大阪から全国に向けて情報発信をしていきたいですね。

震災を機に高まる防災機能への具体的ニーズ

― 防災機能を持った製品開発に注力されているようですが、やはり東日本大震災の影響も感じられていますか?

鈴木: やはり影響が大きいですね。自治体からのニーズも急激に増えていまして、例えば防災無線柱の販売数は震災前の約1.5倍になりました。東海・東南海地震による被害が予測されている地域からのニーズは特に多くなっていますし、今後も増えていくと思います。

― そのような地域に対して、どのような提案をされているのでしょうか?

鈴木: 災害時は、まず「逃げ道」をつくらなくてはなりません。そのために、防災無線のみならず、自立電源を持つLED道路照明灯、太陽光発電型歩道照明、避難場所案内サインなどをまちの各所に配置するなど、トータルで防災に強いまちづくりを提案しています。

― 東日本大震災の被災地域のまちづくりにも活かすことができそうですね。

鈴木: 弊社では昨年10月に災害対策室を設置し、被災地域への訪問を始めました。まずは現地に足を運んで現状を知ることから始め、各自治体のニーズを聞き、津波避難誘導施設に関する提案を行っています。復興・復旧にはまだまだ長い年月が必要ですが、今後長期的な視点で、復興後のまちづくりに貢献していきたいと考えています。

自治体・関係企業が一体となり、平時と有事を両立させるまちづくりを

― 被災地に訪問されて、現在、自治体のニーズはどこにあると感じていますか?
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お話を伺った、取締役・営業副本部長の鈴木幸男さん(右)と、設計開発グループ・デザインチームの田邊智哉子さん(左)

田邊: 「避難タワー」についてはとても関心が高く、既に建築されている自治体もあります。ただ現状は、普段は鍵がかけてあって人が立ち入りにくいような、管理重視のものになってしまっています。震災はいつ起こるかわからないので、私たちは、通常時にはモニュメントとして機能し、災害時には避難タワーになるようなものを提案しています。公園のようにベンチも置いて、普段も市民の憩いの場になれば、まちづくり・景観づくりにもつながりますし、市民も自然に防災を意識するようになります。子どもにも「なにかあったらここに逃げる」ということを伝えることができますよね。

― 避難タワーが市民の憩いの場に。防災設備にも、御社の「美しいくにづくり」の考えが生きていますね。丸の内周辺でも帰宅困難者の避難訓練などが行われていますが、その誘導にも御社の製品の出番がありそうです。

鈴木: 東日本大震災のとき、仙台では歩けないほど真っ暗になったそうです。東京が真っ暗になってしまったら、大パニックに陥るのではないでしょうか。例えば、避難できる道だけが太陽光パネルで照らされて安全な場所に誘導するようなこともできますよね。まちづくりには自治体との連携が欠かせません。今後、自治体や設計会社など、関係者が一体となり、災害に強いまちづくりに取り組んでいきたいと思います。

ヨシモトポール株式会社

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