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【環境コミュニケーションの現場】 ガラス技術で、より省エネで快適な暮らしの実現に貢献 ― AGC旭硝子のエコガラスとエコリフォーム

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板ガラスの生産ライン

企業による環境やCSRに関する広報・普及の現場を取材する【環境コミュニケーションの現場】。第12回は、約100年前に日本で初めて板ガラスの生産に成功して以来、世界と日本のガラス業界でトップを走り続けるAGC旭硝子の取り組みを紹介します。同社社長室経営企画グループ統括主幹の高橋広夫さん、CSR室環境安全品質統括グループ環境・保安防災事務局統括主幹の五十嵐則仁さん、そしてAGCグループ内で機能ガラスや住宅建材などを取り扱っているAGCグラスプロダクツ(株)営業本部リグラス営業部担当部長の斉藤晃さんに、エコガラスとエコリフォームの動向についてお聞きしました。

住宅エコポイントを追い風に急伸した「サンバランス」と「ペヤプラス」

―一口にエコガラスと言っても、いろいろな種類や機能があるんですね

斉藤: エコガラスは、板硝子協会に加盟しているAGCなど3社が製造している、地球環境に優しいLow-E複層ガラスの共通した呼び名です。住宅やビルの窓などに用いるガラスには、従来の1枚ガラスと、2枚のガラスと中空層から構成される複層ガラス、そして複層ガラスの間に金属膜をコーティングしたエコガラスなどがあります。エコガラスはすぐれた断熱・遮熱性能をもち、冷暖房の効率がよくなって高い省エネや節電効果があることから、地球温暖化への対応策として大きな期待が寄せられています。また、窓からの不快な冷気流、結露や紫外線(UV)を防ぎますので快適性も大きく向上します。

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「エコガラスは、今後リフォームでの需要拡大が見込める」と話す斉藤晃さん

AGCが開発、販売しているエコガラスの「サンバランス」は、2枚のガラスの間に中空層を設けて断熱効果を高め、ガラスの内側に熱放射を遮断する特殊な金属膜をコーティングしたものです。夏には太陽の熱を遮断して暑さを防ぎ、冬には室内の暖かさを外へと逃がさないので、1年を通じて快適に過ごすことができます。

「サンバランス」には、ガラスの組み合わせを選ぶことにより防犯、防火、視線遮蔽、防音など、お客さまのニーズに合ったさまざまな機能をもたせることができる特長もあります。省エネと快適性を両立したい家庭やオフィスでの利用が広がっていて、新築戸建住宅でのエコガラス普及率は4割を超えています。

―住宅の省エネ化を支援する住宅エコポイントにより、エコリフォームの人気が高まったこともエコガラス普及の追い風になったのでは
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「サンバランス」は、夏の暑さと冬の寒さから家族を守る、高機能のエコガラス。結露対策としても有効だ

斉藤: おっしゃる通りです。新築物件では従来からおよそ9割が複層ガラスを使用しておりますが、住宅エコポイントの開始後、エコガラスの採用が増えました。また、既設住宅では、ほとんどが1枚ガラスですので、住宅エコポイントによりエコガラスのリフォーム市場が急速に拡大しました。AGCのエコリフォーム製品も、2010年の売り上げは前年度比で倍増しました。2011年になって制度がいったん終了したことや東日本大震災の影響も心配されていましたが、まだ伸び続けています。2011年度第3次補正予算で住宅エコポイントの再開が決まったこともあり、再び需要が拡大するものと期待しています。

エコリフォームでとくに多いのが、1枚ガラスをエコガラスに交換して断熱性などを向上させたいというご要望です。こうしたニーズにこたえるため、複層の「サンバランス」を既存の1枚ガラス用サッシにそのまま取り付けられるようにあつらえた製品が「ペヤプラス」です。エコガラスとアタッチメントフレームを一体化することで、窓一つにつき搬入から交換が終了するまで1時間ほどしかかかりません。また、2枚のガラスの間にはアルゴンガスを封入して断熱性を高めています。「ペヤプラス」は1枚ガラスよりも厚いのですが、網戸にひっかかりにくいスリムタイプもあります。さらに、アルゴンガスの代わりに乾燥空気を封入することでコストを抑えた「ペヤプラス・エア」もラインアップに加えました。

―内窓タイプの「まどまど」も人気です

斉藤: 「まどまど」は、今ある窓の内側に簡単に取り付けるとできる内窓で、主にサッシメーカーなどが宣伝しています。意外に知られていないのですが、このタイプの内窓を開発したのはAGCが最初なんです。「まどまど」の施工にあたっては、エコガラスだけでなく防犯性能を高めた合わせガラスを選んでいただくこともでき、防犯や防災など安全面での性能アップを図ることが可能です。

エコガラスの環境性能を体感できるスペースが好評、専用サイトも

―ガラスは透明なので、見ただけではエコガラスのよさが伝わりにくいのでは
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京橋の「AGC studio」では、AGCのガラスの機能を見て触って知ることができる

高橋: エコガラスをはじめ、AGCのすべてのガラスを手にとって見ていただけるスペースとして、東京・京橋の「AGC studio」を開設しており、2011年11月で1周年を迎えました。結露防止や断熱、遮熱、防音などの性能や機能を体感できるほか、内装やビルのシステム向けのものなどあらゆるタイプのガラスを用意しています。ガラス関連の資料を見ることができるライブラリーや会議室もあり、セミナーやトークショーなどのイベントも随時開催しています。予約や申し込みは不要で、どなたでもご覧いただけますので、ぜひ、多くの方にお気軽にお立ち寄りいただきたいと思います。

AGC studio

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CAFE;HAUS(東京都江東区豊洲)

また、東京・豊洲にある「CAFE;HAUS(カフェハウス)」は、「地域コミュニティの創造とライフスタイルの提案」をコンセプトとして2010年5月にオープンした、ライフスタイル発信型カフェです。建物の四方すべてにAGCの製品を使用したまさに「ガラス張り」の空間で、食事を楽しみながらエコガラスの色や機能の違いを知ることができるスペースとして好評です。

CAFE;HAUS(カフェハウス)

―ウェブサイトによる情報発信にも力を入れていますね

斉藤: エコガラスなどAGC製品の採用を考えている人が、ニーズに合ったガラスを選んでいただく際に役立つサイトが「ガラスプラザ」です。「サンバランス」や「ペヤプラス」、防火ガラスの「マイボーカ」などの基本的な性能を紹介するとともに、どのような場面で用いるのが最適かについて、事例を交えてわかりやすく説明しています。お近くの窓リフォーム店を検索することもできます。また、節電の要請が高まっていることを受けて、ビルやマンションなどの窓ガラスをエコガラスに交換する動きが活発化しており、建築物のタイプに合わせた、おすすめリフォームプランや導入事例なども見ることができます。

ガラスプラザ(AGC旭硝子)

ガラス技術を通じて持続可能な社会の実現に貢献したい

―AGCグループがエコガラスなどの環境関連製品に力を入れる背景には、どのような理念があるのでしょうか
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「環境関連製品に力を入れているのは、2020年の事業イメージ実現に向けた取り組みの一つ」と話す五十嵐さん

五十嵐: AGCグループは、2020年に、持続可能な社会に貢献している企業として、差別化された強い技術力をもち、製品のみならず生産工程・事業活動全般にわたって環境に配慮し、新興地域の発展にも寄与する、高収益・高成長のグローバル優良企業でありたいと考えています。さらに、2020年の事業イメージとして、売上高2兆円以上、新興市場売上高比率、環境関連売上高比率、新製品売上高比率が各々30%となることを想定しており、環境関連製品に力を入れているのは、その実現に向けた取り組みの一つです。

トップメッセージ

高橋: こうした理念に基づいて、建築用エコガラスや太陽光発電関連の各種部材、LED照明、塗料用フッ素樹脂など、さまざまな製品を国内外に提供しています。2006年にドイツで開催されたサッカーワールドカップのスタジアムにも、AGCの建築用フィルムが採用されました。また、自動車向けにはUVや赤外線(IR)のカット機能をもたせた「クールベール」があります。2011年12月の「東京モーターショー2011」の隣で同時開催される「SMART MOBILITY CITY 2011」には、日射制御ガラスなどの環境関連製品を多数出展する予定ですので、ぜひご来場いただき、ガラスでどんなことができるのか、注目していただきたいと思います。

―今後の製品開発やAGCグループとしての抱負などをお聞かせください

斉藤: 省エネ性能をより高めたエコガラスを、2012年以降製品化していく予定です。また、これは製品の話ではないのですが、海外では韓国のようにエコガラスの導入を義務づけている国があります。日本では省エネ法に基づく基準はあるものの建物への使用義務はないので、エコポイント制度よりもさらに踏み込んで、そうした方向に向かってもらえればと願っています。

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「エネルギー効率を上げたベストな製法追求がCO2排出削減につながる」と話す高橋さん

高橋: また、製品だけでなく、AGCは工場でのガラスの生産工程でも、できるだけ効率がよく、CO2を削減できる製法を採用しています。国内やアメリカなどの工場でCO2削減に取り組んでいるほか、ブラジルやロシアなどで新増設する工場には世界最先端の省エネ製造ラインを導入します。エネルギー効率を上げたベストな製法を追求していくことがCO2の排出削減にもつながるわけで、LCAの視点に立って営利性と持続可能性の両立を目指していきます。

地球温暖化問題に技術力で貢献・世界の工場編

また、関連の公益法人である旭硝子財団では、地球環境問題の解決に貢献した個人や組織を称える「ブループラネット賞」を毎年、表彰しています。同賞創設のきっかけとなった地球サミットが開催されて20年目を迎える2012年6月には、ブラジルで国際会議の「リオ+20」が行われます。同財団では節目の年にふさわしいイベントを計画中です。

旭硝子財団

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