3*3ラボ 6月28日開催
『世界難民の日』記念特別版
主催:認定NPO法人難民支援協会、共催:3*3ラボ
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6月20日は「世界難民の日」です。難民として日本にも多くの方が逃れて
きていますが、去年難民として認められた方は18人。日本での難民受け入
れは非常に厳しいのが現状です。
今回は「世界難民の日」を記念し、日本に暮らす難民の方をゲストスピー
カーにお迎えし、支援の現場に携わるスタッフとのトークセッションを行
いました。厳しい現実に直面しながらも、多くの困難を乗り越え、たくま
しく自らの人生を切り開いている難民の方の生の声をお届けします。
※なお、本レポートでは、難民の方の安全を守るという意味で、お名前や
国籍、顔写真などの情報などは全て伏せた形で記述させていただきます。
ご了承ください。
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難民とはどんな人?
まず、難民支援協会広報部チームリーダーの田中志穂さんより、今日のテ
ーマでもある「難民」とはどのような人のことを指すのか、難民を取り巻
く状況についてお話いただきました。
「『難民』とは、母国での迫害から逃れてくる人たちのことを言います。
みなさんは難民と聞くとアフリカの子どもたちなどを想像するかもしれま
せんが、難民条約での定義では、「人種、宗教、国籍もしくは特定の社会
的集団の構成員であることまたは政治的意見を理由に迫害を受けるおそれ
がある」人と定められています。具体的には、『民主化活動に参加した人』
『宗教や民族対立を受けた人』『イスラム教が中心の国でキリスト教に改宗
した人』などです。また、多くの場合は逃れたくて逃れてきた訳ではなく、
逃れる先を選ぶ余裕がないのが現状で、たまたまビザを最初に出してくれた
のが日本だったというケースも多いです。」(田中さん)
昨年、日本での難民申請者数は2,500名以上ですが、難民認定を受けたのは
わずか18名。申請者の国籍別で内訳を見てみると、最多はトルコ(クルド民
族)、ミャンマー(ビルマ)、ネパール、パキスタン、その他はアフリカ諸
国となっています。
難民支援協会とは
さて、迫害を逃れて日本にやってきた方をサポートしている「難民支援協会」
とはどのような組織なのでしょうか。
「難民支援協会では、迫害から逃れてきた方を以下のように支援しています。
1.難民一人ひとりに対し、自立に向けて支援する直接支援
2.よりよい難民政策に向けて、社会に働きかける政策提言
3.難民問題は日本社会の課題であるため、多くの人に知っていただくための
広報活動国連で難民支援を行っているUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の
事業パートナーとして連携しています。」(田中さん)
事務所は、毎日多くの相談者でごった返しているそうです。家を持たない方が
直接空港からやって来るケースもあり、そういった方のスーツケースを預かっ
たりもしているとのこと。1日の支援件数は約70件(電話相談含む)です。
また、相談者を国別に分類すると、アフリカ出身の方が約半数。
「難民全体の割合としてはミャンマー(ビルマ)の方が多いのですが、同郷の
在日コミュニティで支え合うことができ、相談に来ることはあまり多くありま
せん。一方でアフリカ諸国の方は、そのような国別のコミュニティがあまりな
く、支援団体を頼らざるを得ない状況に置かれている人が多いのが現状です。
彼らは口コミなどで私たちの団体のことを知り相談にやってきます。」(田中さん)
国を逃れてくる難民の実態
さて、ここで実際に国を逃れて日本で難民支援協会によるサポートを受けて、
難民認定を受けたデイビッドさん(仮名)のインタビューをお届けします。イ
ンタビュアーは、実際に彼の難民認定に向けた支援を行ってきた、難民支援協
会支援事業部/法的支援担当の田多晋(ただすすむ)さんです。田多さんは、
迫害を逃れてきた方が難民認定を受けるための手続きについて支援をしている
部署で働いています。
「私の主な仕事は、難民申請を希望している方から、どんな理由で国に帰れな
いのかを聞き、その状況に応じて難民認定の手続きを支援していくことです。
1日3名くらい、
一人最低1時間、長い時では2時間以上かけてインタビューをします。」
(田多さん)
また、日本から逃れてきた人の多くは、泊まる場所もなくやって来る人がほと
んどです。ホームレスになる人も少なくありません。とりあえず工面できるだ
けのお金を持って都内に出て、レストランやファーストフード店等を転々とし
ながら生活している人も中にはいます。そういった人の生活支援も難民支援協
会では行っています。
-デイビッドさんはどのようにして難民支援協会を知り、支援を受けましたか
?(田多さん)
「日本に来る前から難民支援協会のことは知っていました。日本に到着してか
ら電話をし、相談に行きました。」(デイビッドさん)
「その後相談に乗り、弁護士と支援活動を開始しました。担当の弁護士の方に
とっては、難民支援を行った初めてのケースでしたが、ご尽力くださり、出身
国に関する情報を集めて翻訳し証拠書類として提出。最終的には600ページほ
どの書類になりました。」(田多さん)
日本の難民申請の手続きは非常に複雑かつ非常に時間がかかります。難民申請
から認定にいたるプロセスの実態について田多さんはこう語ります。
「難民認定申請には、大量の証拠書類を提出してから認定が下りるまで、長い
時間がかかります。一次審査が不認定で異議申し立てをすることが必要になる
と通常2~3年かかり、負担が大きいので、できるだけ一次の段階で結果が出る
ように全力で進めました。」(田多さん)
-難民申請をしている期間はどのような生活でしたか?(田多さん)
「申請してからはただ結果を待つだけ、良い結果を期待し続けるその時間が辛
かったです。言葉の壁も大きかったです。また、変化しやすい気候に馴染むの
にも時間がかかりました。そして家のない時期もありましたが、同国出身のコ
ミュニティとつながり、住居を提供してもらうことができました。」(デイビッドさん)
-審査の結果、デイビッドさんは難民認定を受けることができました。通常よ
りも早く認定が降りたので、私たちスタッフもとても驚きました。難民認定を
受けたときはどんな気持ちでしたか?(田多さん)
「すごく幸せでした。日本で難民を受け入れているのが少ないことも知ってい
たので、こんなにも早く認定が下りたことに驚きました。しかし、本当の喜び
は、日本で難民認定を受けたことではなく、平和になった母国に戻れることで
す。その日が来るまで日本で活動を進めていきたいと思っています。」(デイ
ビッドさん)
-当面日本ではどういったことをしていきたいと考えていますか?(田多さん)
「日本語、日本の文化を勉強したいです。」(デイビッドさん)
デイビッドさんが難民認定を受けられたのはゴールではなく、他の人と同じく日
本で暮らせるようになっただけ。認定を受けてから日常の生活を送るところは、
難民支援協会のサポートだけでなく、皆さんにも関われることがあります。是非
皆さんも彼が日本社会で歩み始めることになるためのサポートをいただければ幸
いです。(田多さん)
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トークセッション終了後、会場から難民認定の仕組みなどについて様々な質問が
飛び交い、難民申請から認定へのプロセスの煩雑さや、認定される人数の少なさ
へ疑問を持つ方も多数いらっしゃいました。
日本の難民受け入れはかなり厳しく、申請の手続きは複雑で、認定を受ける人数
が非常に少ない状況です。すぐには法律や仕組みを変えることは難しいですが、
まずは迫害を逃れて日本にやってきた人が少しでも安心した生活を日本で送れる
ため、難民支援協会は引き続き難民のサポートを続けていきます。33ラボでも
引き続きセミナーを開催しますので、是非ご注目ください。