環境性の高い最新鋭のビルが立ち並ぶ大丸有。しかし、そのような新築ビルへの最新技術導入だけでなく、既存ビルにおける環境対策を適切に実施していくことも、社会の要請となっています。
三菱地所株式会社は大手町ビル(千代田区大手町1-6-1)内の本社の一部を低炭素型オフィスに改修し、CO2排出量削減を実現する日本初のハイブリッド型天井輻射空調システムとLEDタスク&アンビエント照明システムを導入。既存オフィスビル改修による環境対策の実証を開始しました。
〔左〕輻射空調システムの熱交換のホース、〔右〕輻射パネル
「輻射」とは、熱が物体を介さずに高い温度から低い温度に移行する性質のこと。「輻射空調システム」は、一般的な送風による空調ではなくこの「輻射」を利用した、天井等に張り巡らせたホースを循環する水の熱と室温の交換によって部屋全体の温度を調整する空調システムです。
新丸ビル10階 エコッツェリアの次世代低炭素型技術実証オフィスで、すでに導入されているこのシステムに、今回は「建物躯体への冷蓄熱」を導入。夜間に輻射パネルを利用して建物躯体に蓄えた冷熱と、日中の室内の温度差から気流を生み出し、微風速で回流させることで快適な空調環境を実現します。
机上のタスク照明
天井のアンビエント照明と、机上で個別調整するタスク照明を併用した照明システム。一般的なオフィスでは、机上照度750ルクスに設定されている天井照明を300ルクスに設定する一方で、机上に個人で照度を調節できるタスク照明を併用し、必要な個所に十分な明るさを提供することができます。自分にとって快適な照明環境を個人がつくり出すことで、知的生産性を高める効果が見込まれます。
日本人の、天井躯体に水を通すことへの抵抗感や、導入コストは課題として残るものの、大手町ビルでの実証の結果をふまえての他ビルでの今後のシステム導入も視野に入れているそう。
「我慢をして省エネをするのではなく、健康で快適であることがCO2削減になる」(三菱地所株式会社 代表取締役 副社長執行役員 飯塚延幸氏)との言葉の通り、そこで働く人の快適性を起点としたこれらの技術。これが、オフィスビルにおけるエコや省エネの未来のスタンダードかもしれません。