日本では、安全な水を飲めるのがあたりまえ。家庭でも、オフィスでも蛇口をひねればそのまま飲める水がいくらでも出てきます。でも、そのような環境に暮らす人はほんのわずか。世界の多くの人々にとって飲み水の確保は大きな問題になっているのです。
と聞いて、「そんなこと聞きあきた」と思うかもしれません。そんな人たちにぜひ知ってもらいたい自販機がニューヨークに登場しました。それは何と汚水を販売する自販機。その自販機で水を買えば、「こんな水を飲んでるのか...」と考え込んでしまうに違いありません。
ニューヨークも大丸有も高層ビルが立ち並ぶ大都会、そういう環境で長い時間を過ごすと、そうではない場所が世界のほとんどであることを忘れがちです。しかし、他の地域に支えられていることを忘れないようにし、その責任を果たすことが都会に暮らす我々には求められているのです。この自販機からぜひそんなことを考えてみてください。
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presented by greenz.jp(greenz.jpは、丸の内地球環境新聞をプロデュースしています、じつは。)
ニューヨークのユニオンスクエアに、ひときわ目を惹くビビッドな自動販売機。デカデカと踊る「DIRTY WATER(汚れた水)」の文字が、行き交うニューヨーカーたちの注目を集めています。
この自動販売機は、1本1ドルで、「マラリア」、「コレラ」、「腸チフス」、「デング熱」、「肝炎」、「赤痢」、「サルモネラ」、「黄熱」の8種類の病原菌から選び、ペットボトル入りウォーターが買える、という"ブラックジョーク"のようなマシン。実際、水にこれらの病原菌は含まれていませんが、代わりに泥水が入っていて、茶色く濁り、ところどころゴミが...。けして「飲んではいけない」代物です。
1日4,200人以上 ―。
この数が何を示しているか、ご存知ですか?
答えは、病原菌に汚染された水が原因で死亡する子どもの人数(UNICEF調べ)。 世界では、多くの人々が、この自動販売機にある病原菌に感染し、いまこの瞬間も苦しんでいます。そこで、「発展途上国に清潔で安全な水を提供しよう」というUNICEF(ユニセフ)の募金キャンペーン「DIRTY WATER Campaign」では、この現実を広く世の中に知ってもらおうと、汚水の自動販売機「「DIRTY WATER」をニューヨークのど真ん中に設置することにしたのだとか。実際、多くの人々がこの自動販売機で足を止め、ペットボトルの水を買ったり、モバイル端末やウェブサイトを通じてUNICEFに寄付するなど、この問題に目を向け、アクションを起こしはじめています。
ペットボトルが多くの石油資源を消費し、地球温暖化にも少なからず影響しているという点は以前から指摘されていますし、「わざわざ泥水をペットボトルに詰める手間をかけたり、自動販売機のデザインや設置にコストをかけるくらいなら、そのお金をそのまま寄付すればいいんじゃないの?」などなど、ツッコミどころは満載ですが、賛否両論の中、多くのメディアに採りあげられ、発展途上国における水の問題が少しでもクローズアップされるのであれば、こんな「禁じ手」ギリギリの仕掛けも、ときにはアリなのかも、という気もします。しかし、良い子の皆さんはくれぐれも真似されませんように...。