新丸ビル10F「エコッツェリア」内に設置されている「低炭素型実証オフィス」、ここでは従来の空調とは異なる輻射空調(壁面や天井面に水を通し、その輻射熱によって室内の温度を調整する空調)によって快適性を実現しています。しかし、実験を進めるうちに、快適な温度には個人差があるため、オフィス内の皆が快適だと感じるためには「風のメリハリ」が必要だということがわかってきました。
そのため、個人が快適と感じることができる「ハリの風」を実現するためのパーソナルファン(扇風機)のデザインを公募する「オフィスにおける ハリの風大賞」を実施することとなりました。
今回は、審査員長を務める川瀬貴晴千葉大学教授に、このコンテストについてお話を伺いました。専門知識がなくともアイデアがあれば応募は歓迎!とのこと。インタビューからヒントを得てぜひご応募ください!
建築基準法や建築物衛生法によってオフィス内での風速の基準は決められています。法律上の規定はそれだけですが、好ましい環境についての数値は統計的に出ており、設計はその数値に従っておこなわれるのが通常です。一般的にいうと、全く風がないよりは少し風があるほうが好ましく、また部分的な風はドラフト(室内や建築内部のすきま風、通風などによる空気の流れのこと)といわれて嫌われるので、なるべくドラフトが起きないように設計されます。
これまでは風も含めて空間が均一になるような設計が求められてきましたが、最近では人によって快適な温度が異なるため、均一な空間で全員が快適になるのは無理だという考え方が有力になってきています。そのため、「パーソナル空調」という形で必要なところだけ温度を調節できる工夫が求められています。
現在では、人それぞれにあった空調をどう行えばいいのかというのが研究の中心になってきており、個人がそれぞれのパソコン上で温度を調整できる技術などが開発されています。しかし、部分的に温度を変えるのは難しいんです。そこで、実際の温度ではなく、温熱感(暑い/寒いという感覚)を調整する考え方がとられるようになりました。
風は温熱感でいうと「涼しい」と感じる条件です。つまり、温度を変えなくても風を変えれば温熱感を調整することができるわけで、今では風を変えることで温熱感を調整するほうが易しいのではないかと考えるようになりました。そのような研究はまだ本格的にはおこなわれていませんが、今後そのような方向に進んでいくのではないかと思います。
人による差には個人的な感覚の差とともに、部屋にずっといる人と外から帰ってきたばかりの人の差などのシチュエーションによる感じ方の差もあります。このような感じ方の差を風で調整できればいいんじゃないでしょうか。
むしろそういう方のアイデアを求めています。建築関係者はどうしても建物のことを考えてしまいますが、そういうことを考えない方がバリエーションのあるアイデアが出ていいかもしれません。この間、家電量販店に行ったときに、首からぶら下げるファンを見たのですが、ああいうものは面白いですね。
そのために二つの部門があります。試作品部門はきっちりとモノ(試作品)をつくることができる人向け、製品デザイン部門はアイデアを重視したものです。
そうですね。そうしたら本当にいいものが生まれるんじゃないでしょうか。
確かに、インターネット上でなら出会うこともありそうですね。そうなったら本当に面白いと思います。
駆動音量や動力消費などは、大体これくらいという概算でもよいとのこと。つまり、「アイデアはあるけど、技術的なことは...」という方でも大丈夫! ということで、具体的にどんなものがあったら面白いそうだろうということを先生と一緒に考えてみました。
あんまり僕が言っちゃうとねぇ......
先ほどもお話した首からぶら下げるものですとか、プロペラがビニールのような柔らかい素材でできていて、止まっているときは棒状、回ると広がってファンになるというものがありました。オフィスで個別にファンを使うとしても年中使うものではないわけだから、これらのアイデアのように普段は存在感がないものは便利だと思います。
あと、ダイソンの羽のないファンも面白い。今回のコンテストではエネルギー的に無理だろうと思うけど、ああいったものを省エネでできたらいいですね。たとえば、オフィスの間仕切りに穴があいていて、それがファンになっているとか。普段は邪魔にならないし、でも必要な時には風が出てくるなんて面白いなと。
最近はオープンオフィスが多いですから、デザイン的にもファンそのものがインテリアになるようなものだといいですよね。それでいて前面に当てたいとか首筋に当てたいとか人それぞれのニーズに柔軟に対応できるもの。そういうデザインが実現できたら素晴らしいと思います。
付加価値を付けるのは面白いと思います。冬は乾燥するから、加湿や保湿の機能が付いていれば夏だけでなく一年中使える。あとは、滅菌作用があって自分のまわりだけは菌が繁殖しなかったりするとうれしいですね。
一般の方はなかなか難しいと思いますが、メーカーにはいろいろな技術がありますし、先端技術を応用することで効率のいいものが開発できる可能性はあると思います。一般的にはパソコンに入っているファンのようなものを使うことになると思いますが、もっと強力で効率のよいもの出てきてほしいです。あと、回転運動以外の運動で風を起こすようなものにも期待したいです
なるほど。DVDドライブのようにボタンを押すとトレーが出てきて、CDと同じくらいの大きさのファンがガバっと出てきたら面白いですね。
いいですね~。オフィスにふつうに置いてあるものにボタンが付いていて、それを押すとそこから風が出てくるなんていうのも面白いかもしれませんね。びっくりメカのような(笑)。
このように、いろいろとアイデアを出して、ああでもないこうでもないと話すのは、思いのほか楽しいものでした。実現性はともかく「こんなのがあったらいい」「こんなのはどうだ」と話してみるだけでも面白いものなので、ぜひ試してみてください。その中から「これだ!」というアイデアが出てきたら、賞金20万円を手にできるかもしれませんよ!
正式名称: オフィスにおけるハリの風大賞(副題:パーソナルファン製品デザインコンペ)
賞・商品:
最優秀賞(1点) 賞状+副賞20万円
優秀賞(3点) 賞状+副賞10万円
審査員特別賞(2点) 賞状+副賞5万円
奨励賞(4点) 賞状のみ
募集部門:
製品デザイン部門(コンセプト、図面、パース等での評価)
試作品部門(標準的オフィス什器に実際に設置した状態で評価)
審査方法:
1次審査・・・デザイン部門、試作品部門とも、設計図面、パースまたはスケッチ、試作品写真、デザインコンセプトを審査
2次審査・・・パネル展示および試作品審査
* 2次審査は新丸ビル10F「エコッツェリア」での展示とあわせて実施します
スケジュール:
応募受付期間 - 2010年10月4日(月)~31日(日)(当日消印有効)
説明会 - 2010年10月8日(金) 10:00~12:00
第1次審査 - 2010年11月1日(月)、12日(金)
第2次審査・入賞作品展示 - 2010年11月22日(月)~12月10日(金)
表彰式 - 2010年12月9日(木)
展示・表彰会場 - 新丸ビル10F エコッツェリア
審査委員
<審査委員長>川瀬 貴晴 [千葉大学 教授]
鈴木 恵千代 [社団法人 日本ディスプレイデザイン協会 理事]
東條 隆郎 [株式会社 三菱地所設計 取締役専務執行役員]
合場 直人 [大手町・丸の内・有楽町地区再開発計画推進協議会 幹事長]
戸井田 園子 [家電・インテリアコーディネーター]
応募資格と条件:どなたでも応募できます。(グループ・企業での応募も可)
応募料無料。応募点数の制限はありません。複数部門に応募できます
主催:丸の内地球環境倶楽部(エコッツェリア協会)
後援:大手町・丸の内・有楽町地区再開発計画推進協議会、三菱地所株式会社、株式会社三菱地所設計
問い合わせ先:ハリの風大賞事務局(財団法人 省エネルギーセンター内)
03-5543-3013 * 月~金(祝日除く)10:00~12:00、13:00~17:00