「米どころ」や「雪国」といったイメージはあっても、観光という視点で見るとあまりピンと来ないかもしれませんね。
そんな新潟を盛り上げるべく、3ヶ月に渡り企画アイデアをあたためてきたのが、丸の内朝大学「地域プロデューサークラス」の生徒のみなさん。地域に潜む問題を解決し、魅力を引き出すアイデアを、授業とフィールドワークを重ねながらグループに分かれて練り上げてきました。
9月13日(火)にはその成果を発表する最終発表が行われ、熱いプレゼンテーションが披露されました。当日の様子をレポートでお届けします!
緊張の最終発表、朝大生が入念に資料の最終チェックを行う中、続々とゲスト陣が集まって来ました。教室の後方で発表を見学されている方々の中には、フィールドワークでお世話になった新潟からのゲストもいらっしゃって、発表への期待感がひしひしと伝わって来ます。
今回、発表するのは全部で5グループ。各グループには、「越前浜チーム」「農業チーム」などといったエリアやジャンルがテーマとして与えられており、プレゼンテーションで競うというよりは、お互いに良いところを引き出して新潟全体を盛り上げようという趣旨で行われます。各グループの企画アイデアをさっそくご紹介しましょう。
新潟の南西部・日本海に面した「越前浜エリア」の悩みの一つは少子高齢化。ただ、「今の暮らしを変えたくない」という地元の方の思いもある現状を考慮し、越前浜チームは、人をたくさん呼び込むようなにぎやかしの策ではなく、「越前浜を心から愛してくれる人に定住してもらうこと」に視点を置いた企画を考えました。
披露されたのは『僕たちの秘密基地〜越前浜・子どもが作る村〜』という企画。これは、子どもたちのアイデアを大人が実現してあげるもので、「子ども作戦本部」で考えられた企画を「越前28人衆」(この地域の歴史から命名)が支えるというユニークな具体案も提案されました。
子どもの頃から越前浜を楽しむ経験を積むことにより、大人になっても住み続け、さらにその子どもの世代にも土地の魅力が伝わっていくのでは、という考えから、子どもにターゲットを置いた越前浜チーム。これからの街を魅力的に彩ってくれるのは、子どもたちの笑顔。目をキラキラさせながらアイデアを考えている子どもたちの姿が目に浮かんできそうなアイデアでした。
『にいがた観光客倍増プロジェクト』という大胆なタイトルから始まったチームみなとまちの発表は、新潟市全体の観光プランを提案するもの。新潟市が抱える、少子高齢化や空洞化などの問題は他の地方都市が抱える問題を代表しているとして、様々な地方都市の事例を調査し、新潟における活性化プランの検討を重ねました。
都市の魅力を生かしつつ、魅力を伸ばすプランとして提案したのが、コミュニティ創造型ツーリストプラットフォーム『タガイニ合宿所』。コミュニティ創造型ツーリストとは、「招待→参加→交流→創造→貢献→共有」という循環で人・物・金が回っていくもの。県外の人が体験型ツアーを企画し、参加して交流を持ち、FacebookやTwitterを使って体験を共有し、さらに地域に貢献していくツアー。発表では、衣・食・住・遊のそれぞれにおける具体的なツアーの案も紹介されました。
"ニイガタ"を逆さに読んだネーミングは、「ニイガタの魅力をひっくり返す、改めて掘り返す」という趣旨、そして「県内と県外をつないで"互いに"がんばっていこう」という意味も込められているのだとか。ただ観光地を巡るツアーもいいですが、地元の方と交流しながら体験できるツアーは、その土地の魅力を最大限に引き出してくれるかもしれませんね。
巻地区(新潟市西蒲区)は、以前は物流の拠点として栄えていた時代もありましたが、現在はシャッター街と化しているそうです。そんな中、現在巻地区で展開されているのが、「鯛車復活プロジェクト」。鯛車とは、鯛の形をした灯籠に車輪が付いたようなもので、お盆の夕暮れ時になると、浴衣姿の子どもたちがいくつもの鯛車にあかりを灯し、町内を引いて回ったという昔ながらの風習があったとのこと。「鯛車復活プロジェクト」では、その鯛車を復活させるべく、制作教室や鯛車展などが開催されているとのことです。
「でも、鯛車だけで人は巻にやって来るの?」そう感じた巻チームは、『まじりっけなしの巻〜およげ鯛車くん!』というプロジェクトを提案。鯛車をシンボリックな存在にすることにより、人が集まって賑わい、地域の人や経済が潤う仕組みづくりを行うプロジェクトです。
地ビール、地産地消、蛍、カリーナ(焼きそばにカレーがかかったもの)など、巻地区にある良いものを、鯛車とのコラボレーションで商品化やイベントに仕立て上げる具体案は、どれもとてもユニーク。鯛車が描かれた地ビールのラベルは、そのまま商品化できてしまいそうなくらい完成度の高いものでした。街にひとつでもシンボルがあれば、地元の方の意識も外からのイメージも大きく変わって行きそう。「巻といえば鯛車」と言われる日も近いかもしれません。
言わずと知れたお米のトップブランド「新潟こしひかり」。でも、生産地では、高齢の農家が多いために農地の集約化が進まないこと、農協との連携の問題、若い人が農業に対してネガティブなこと、など様々な問題が発生しています。これらを解決するための企画提案が、農業チームのミッション。「意識の高い農家さんの悩みやがんばりをより多くの人に伝えることで、共感・応援してもらいたい」と考え、そのためのプロジェクトを提案しました。
テーマは、『日本一の新米プロジェクト"Woo! My新米"』。「うまい」と「私の新米」をかけ合わせたネーミングは、全国の方々に新潟のお米のすばらしさを知ってもらい、生産農家さんにも「日本一のお米を作っている」という意識を持ち、もっと自信を持ってもらおう、という意味が込められています。
具体的なアイデアとしては、「農家ファンクラブ」「メル友農家」「私だけの農家を持とう」など、新米を軸に、"つなぐ・探す・遊ぶ・デザインする"という様々な視点の企画を発表しました。農家さんと顔が見える関係でつながることは、消費者にとってもとても魅力的なこと。そんな人と人のぬくもりある関係性が、これからの農業を盛り上げて行くように感じました。
首から手ぬぐいをかけたスタイルで登場した岩室温泉チームは、「そこそこ賑わっているけど特徴がない」という岩室温泉の問題点を見いだし、現在行われているワークショップなどの施策にコンセプトを付けるという視点で提案を行いました。
プロジェクト名は、『旅人が村人になる交流型温泉地〜いわむろ家族「結び」プロジェクト』。岩室を訪れた旅人が村人のように岩室との関わりを持つことをコンセプトに、「岩室リピーターと岩室へ移住させること」「アットホームな温泉というブランドづくり」の2つを目的にした企画を発表しました。
具体策としては、村人が先生になって旅人に自然体験などを教えたり、旅人が村人の活動に参加する「おかえり・ただいまプログラム」を実施。参加特典として土日限定で朝食が食べられる「結びごはん」なども付いてくるというものです。旅人はこれまで、どうしても"よそ者"でした。でも、村人として「おかえり」と迎えてもらえたら、旅のイメージも大きく変わっていきそうです。
発表の後は、新潟から駆けつけたみなさんから、各グループに対して講評のコメントをいただきました。中には「すぐにでも実施したい」という声が挙がるほど、外から見た自分の地域に対するアイデアは、やはり斬新で魅力あるものだった様子です。企画を作った朝大生のみなさんに、賞賛とねぎらいの言葉が送られました。
最終発表とはいえ、これは通過点に過ぎず、ここからが地域プロデュース企画のスタート。新潟県の方と一緒に街の魅力を作り上げるため、今後さらに朝大生のプロデュース力が試されていくことでしょう。
まずは10月に、企画実現のための新潟訪問も予定されています。朝大学と地域のつながりが、授業という枠を超えて今後どんな展開を見せていくか、楽しみですね!