東日本大震災から約1年。一つの節目ではありますが、復興に向けた活動はこれからが本番、被災地だけでなくそれを支える全国の活動もますます盛り上がっていく必要があります。しかし、「復興支援はしたいけど、なかなか現地にもいけないし、お金を送るだけでいったい何の役に立つかもわからないし...」そんな思いを抱えて悶々としている方は意外と多いのではないでしょうか?
そんなかたでも気軽に支援活動に参加できる仕組み、そのひとつが大丸有のおとなり秋葉原にある「3331 Arts Chiyoda」を中心に展開されている「わわプロジェクト」です。
わわプロジェクト
具体的にどんな活動をしていて、どんな支援ができるの?ということは記事を見てもらうとして、3月11日から25日まで3331で「『つくることが生きること』東日本大震災復興支援プロジェクト展」を開催していますので、是非そちらに足を運んでいただいて、自分に何ができるのか?を考えてみてください。
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presented by greenz.jp(greenz.jpは、丸の内地球環境新聞をプロデュースしています、じつは。)
この記事はフリーペーパー「metro min.(メトロミニッツ)」と井上英之さん、greenz.jpのコラボレーション企画『トム・ソーヤーのペンキ塗り』にて、メトロミニッツ誌面(2月20日発行)にも掲載中のものです。
秋葉原の街に現れた、まるでオアシスのようなアート拠点。約2年前、旧練成中学校を改修して誕生した「3331 Arts Chiyoda」(以下、3331)は、様々なジャンルのアーティストやクリエーターたちがそれぞれの表現を自由に発信する場所として、多くの人々を街に呼び込み、街に変化をもたらしてきました。
この3331の統括ディレクターを務めるのが、中村政人さん。中村さんは今、3331の延長線上の活動として、ソーシャル・クリエイティブ・プラットフォーム「わわプロジェクト」を立ち上げ、被災地支援に取り組んでいます。震災直後から被災者と向き合い続ける中村さんが、今改めて感じている、アートの本質とは? あの日から1年、「わわプロジェクト」初の展示会を目前に控えた中村さんを訪ね、話をお聞きしました。
「わわプロジェクト」は、東北各地で復興に向けて活動する人々と支援したい人々をつなぐためのアートプロジェクト。被災地域の活動家たちと綿密に連携し、ウェブサイトやコミュニティ新聞にて情報発信をする他、現地に足を運び、プロジェクト単位の顔の見える支援活動も行っています。
ウェブサイトには、瓦礫を薪にして販売するプロジェクトや企業ロゴを船体全体に貼った「復興支援船」を就航させる取り組みなど、様々な復興リーダーたちの活動内容とインタビューが掲載されており、プロジェクトごとに寄付も受け付けています。また、被災各地の最新情報を紹介した隔月発行の「わわ新聞」は、主に避難所を中心に5万部が配布され、被災した方々の心をつなぐ役割を果たしています。
3331 で築いてきたクリエイティブなプラットフォームの意識。「わわプロジェクト」は、その延長線上で被災地とつながる取り組みです。しかし、支援プロジェクトの中には、酒蔵を再生する取り組みなど、一見アートとは無縁に思えるプロジェクトも存在します。これに対し中村さんは、復興リーダーの方々について、「彼らの心意気は、完全にアーティスト」と、言い切ります。
被災地で感じるのは、本当にストレートに何かをつくろうとしていることです。酒をつくること、自分が生きること、「飲んでいただきたい」という思い、その精神力や技術、味に対するイメージなど、その全体のつくり方の意識や創造力こそがアートだと思いますし、つくりたくなる原動力がそこにはあります。今、多くのアーティストが原動力無くものをつくってしまっているのですが、そこには、もっと本質的なものがあるんじゃないか、と思っています。
被災者の姿から感じた「つくること」の本質。それを伝えるため、中村さんは震災から1年を機に、"つくることが生きること"をテーマにした「東日本大震災復興支援プロジェクト展」(3/11〜3/25、3331にて開催)を企画しました。復興リーダーたちが今の想いを語る映像展示や、アーティストや建築家が取り組む70の復興活動のパネル展示の他、連日イベントも開催。復興のキーマンが登場するトークショー、映画上映会の他、岩手県山田町から郷土芸能「八幡大神楽」がやってきて、子どもたちが舞を披露する場も予定されています。このイベントを通して中村さんが見つめているのは、未来のこと。
僕らが大事にしたいのは、被災した方の心に宿ったことや、そこで見いだしたこと。ただ『こんな悲惨なことがあった』という話ではなく、つくることと生きることがどう直結してきているのか、ということにもっと注目したい。彼らの言葉をちゃんと噛み締めておくことによって、未来のつくり方のひとつの姿勢が見えてくると思うんですよね。
彼らの言葉は、強い光を放って私たちの心にダイレクトに伝わってきます。
「わわプロジェクト」の活動を通して見えてきたものは、中村さんの活動にどのような変化をもたらすのでしょうか。今後についても聞いてみました。
僕らは目にすること、耳にするもの、全て街から情報を得ています。アーティストが作品をつくることも、街からエネルギーをもらって、表現を組み立て、また街に返しているだけなんですね。復興リーダーの芳賀さん(NGO吉里吉里国)は『自然と寄り添うための術を身につけるべきだ』と言っていますが、都会は都会なりに、この街の中で生きる術を身につけて、街にどうお返ししていくのか。それを考え、新しい仕組みを提案していきたいです。
例えば3331が生まれたことで、元気が無かったこのエリアに人が集まり、周辺の治安もよくなってきたと思います。そういう意味で、街の代謝のひとつになったというか。街づくり的な機能もあるんです。
そんな3331は、オープンから間もなく2年。約60万人が訪れ、700ものイベントを開催してきたという大きな実績を残しています(2011年11月末時点)。3.11を経て中村さんが見つめる未来。それがまたこの街に、あるいは他の街に、どのような変化をもたらしていくのでしょうか。今後も中村さんの活動から目が離せなくなりそうです。
仕事は本来、最高のアート空間なのかもしれない。
創造性の発揮こそ、最大の尊厳を回復するツールでもある。英国でもクリエイティブエコノミーというタイトルでうたわれる一連のデザインによる産業政策は、本来なら自信を失い、自分の人生に可能性などないと思っているホームレスや、貧困層の若者たちに、アートなど創造性を発揮する仕事を通じ、自分の中から沸いてくる発想や情熱に、「価値があるんだよ」と背中を押す。そこから、新しい世界が開けていく。
自分が何かができる、という実感は、人に勇気と、一歩踏み出し挑戦してみる可能性を切り開く。人の可能性は限りない。一歩踏み出し、アウトプットしてみて、自分の可能性を見える形にしてみる。その最高の方法が、アートであり、仕事なんだと思う。
同時に、この可能性に気付くことは、ひとりではできない。そこから生まれたものが、よいものであれば、「いいね!」と評価をもらえる。ビジネスであることも重要だ。試行錯誤や努力の結果がちゃんと、市場の評価となり、それがわが町の変化や元気につながる循環。これを、リアルとウェブを通じて実現している。
そう、アーティストとは、何もないところから、発想と創意工夫で何かをうみだす魔法使いたちだ。そして、すべての人に、その可能性があると、中村さんは言っているんだと思う。
どうせなら、とっても大きな夢を描いてみよう。3月11日からの展示会、楽しみですね!
日程: 2012年03月11日(日)~2012年03月25日(日)
時間: 12:00-19:00
備考: 最終入場30分前
休み: 会期中無休
料金: 無料
会場: 1F メインギャラリー
津波の爪痕がいまだ残る被災地。一方で、3.11以前と変わらない日常に戻っていく非被災地。震災から1年となる2012年3月、「どこで•だれが•何を想い•どのような活動を行っているのか」をあらためてみつめ、復興に向けて創造力を持って表現・活動する人たちの想いと活動内容を共有する展覧会を開催致します。