今年も大丸有地区のエリア版CSRレポートが9月に発行されていますが、この度ウェブ版がリリースされました。
大丸有CSRレポート2012ウェブ版
大丸有CSRレポート2012冊子版(PDF5MB)
今年のCSRレポートのこだわり、特にデザイン面について、デザイナーの永松大剛さん、アーティストの小木曽瑞枝さん、プロデューサーの鈴木菜央さんに、表紙の撮影現場におじゃまして聞いて来ました。
まずは、デザイナーの永松さんにこのデザインのポイントを聞きました。
永松: 小木曽さんはアーティストなので、彼女の作品はわからない人にはわからないかも知れない。でも、なるべくみんなが分かるカタチになるよう色々なアイデアの中から検討を重ねて選んだ結果出来たものがこれです。
大丸有の課題はビジネスと環境、人が横に繋がっていないということではないかということで、それを促すようなビジュアルとは何かを考えました。このデザインは大きな花の周りに大丸有のさまざまなものや人があって、この花がさまざまなものを吸い上げてつなげているというデザインです。
どれも実際に大丸有にあるものを取材して制作したものです。中には「これなんだろう」というものもあるかもしれませんが、そう思ったら実際にまちを歩いて探してみてもらいたいですね。
確かに、よく見ると「これなんだろう?」というものや「本当にこんなもの大丸有にあるの?」というものも。あなたは全部わかりましたか?
続いて、実際に撮影に使われたオブジェを制作したアーティストの小木曽さんに作品へのこだわりについて聞いてみました。
小木曽: まず、植物界には「花蜜標識」というものがあって、昆虫やハチドリは花びらなどについたこの標識を目印に花に集まってきます。目で見えるものもあれば紫外線に反応して見えるものもあるんですが、花も生存競争のためにそれを持っているわけです。
私は、普段から側面塗装という手法を使って空気に色を付けてみせるという作品を作っています。今回のコンセプトはその空気に付けられた色が花蜜標識のように、街に人を引き付ける目印になるというものです。
色は3色使いましたが、それぞれに意味をもたせています。1色目はベリルグリーンという色で、これは経済を、2色目はジョンブリアンで環境を、3色目はリーフグリーンで文化を意味します。それぞれのオブジェが色を発するわけですが、例えば百葉箱は自然を測るセンサーということで、2色を使って塗りました。これに加えて隣あった色が空気中で混ざり合ったりすることで、経済、環境、文化の目には見えないつながり可視化することが出来たのではないかと思っています。
普段から「これなんだろう?」というのが作品に入っていないと面白くないと思っているので、今回の作品にもそういうものを入れました。見る方にそう思っていただけると嬉しいです。
またしても「これなんだろう?」というお話が。確かに、毎日同じ道を歩いていてもある日、ふと視線を変えてみると今まで見えてなかったものが見えてくることってありますよね。それは実際のまちの風景にかぎらず、それこそ花であったり、あるいは仕事であってもそうなのかもしれません。アートというのはそういう新しい視点を私たちに与えてくれるもの、小木曽さんの作品から私はそんなことを感じました。
さて、最後はCSRレポートのプロデュースを務めた鈴木菜央さんに、この表紙やオブジェを使うことで何を表現したかったのかを聞いてみました。
鈴木: 小木曽さんが言うように、経済、環境、文化という3つの要素が干渉しあうということを目で見て感じて欲しいと思ったのが第一です。大丸有の中で、このそれぞれが関係しながら互いを支えあう、そこからイノベーションというものが生まれてくるのではないでしょうか。大丸有CSRレポートは「まち」のCSRレポートという試みです。経済も環境も文化も含んだ「まち」がCSRレポートを作ることで生まれる化学反応のようなもの、それをこの表紙が表現してくれているのではないでしょうか。
実際の撮影でも、オブジェを台紙の上に配置し、どのように色が出るかを実際に撮影し確認しながらオブジェの配置を調整するということを繰り返していました。それを見ながら、物自体に色を付けるのではなく、ものから発せられる色が空気を色づけるという発想が非常に面白いと思いましたし、物事というのはさまざまな人や物が発するものが互いに干渉し合い、影響し合うことから生まれてくるのだということを改めて考えさせられました。
作品はエコッツェリア(新丸ビル10F)に展示されていますので、機会があればぜひご覧ください!
エコッツェリア