イベント丸の内サマーカレッジ・レポート

【レポート】大丸有に集い、語り、未来への一歩を踏み出そう Day 3

丸の内サマーカレッジ2025 2025年8月13日(水)~15日(金)開催

4,8,11

3日間にわたって開催された「丸の内サマーカレッジ」も、いよいよ最終日を迎えました。多様な価値観を受け入れ、信頼関係を築くにはどうしたらよいのか。この日は「人とのつながり」に焦点を当て、「コミュニティづくり」の本質や関わり方について学び、3日間の学びを集約・発表します。「創りたい未来に向けて『わたし」ができること」について、対話を重ね「動きながら考える」ことを実践してきた学生の皆さんが、どのようなアウトプットを見せてくれるのか、期待が膨らみます。

<3日目のプログラム>
講演5「人と人を繋げる 『仕組み』づくり」 」
・・・新地貴浩氏(株式会社SHINSEKAI Technologies コミュニティプロデューサー)
・・・田邊智哉子氏(3×3Lab Future ネットワークコーディネーター)
ワークショップ2「発表準備」
ワークショップ3「発表」

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講演5‐1 「人と人を繋げる 『仕組み』づくり」新地貴浩氏

講演5‐1 「人と人を繋げる 『仕組み』づくり」新地貴浩氏

image_event_20250813.002.jpeg新地貴浩氏

株式会社SHINSEKAI Technologies コミュニティプロデューサーの新地貴浩氏は、「この時間で学生の皆さんと信頼関係を築けるかが私個人のテーマ」として、アイスブレイクに2人1組であいこになるまでじゃんけんを行い、会場を盛り上げました。「じゃんけんで無作為に3つのタイプに分かれてもらいましたが、世界では知らない間にカテゴライズされていることがあります」と新地氏。終戦記念日という日に、国籍や立場にとらわれず、異なる考えを持つ人々の存在を想像することの大切さを語りました。

鹿児島大学卒業後、キヤノン株式会社で新商品の企画に携わった新地氏は、グローバル企業の理念「共生」に触れ、「共に生きる」姿勢を学びました。海外では模造品のインクが純正品より売れる地域もありますが、単に模造品を排除するのではなく、それで生計を立てる人がいる背景を理解する姿勢が重要だといいます。異なる考えを排他的に扱うのではなく、全体の枠組みで捉えることが必要だと語りました。

また、社内活動や労働組合での経験から、枠を越えて人とつながることの意義を実感。今いる場所以外の人々の考えを知り、枠を越えてつながる機会を自ら作り出すことが重要だと気付いたそうです。

転機となったのは、NFTコレクションの『NEO TOKYO PUNKS』との出会いです。ファンとして参加したWeb3プロジェクトで、コミュニティマネージャーの運営にまで携われる「余白」に魅力を感じるとともに、年齢や立場、性別も関係なく活躍できるようなコミュニティの社会実装に興味を持ち、コミュニティマーケティングを事業とする株式会社SHINSEKAI Technologiesに2023年4月に転職しました。(2025年10月現在は、地方創生の地域コミュニティづくりに従事すべくMYSH株式会社に転職)

image_event_20250813.003.jpegコミュニケーションを取りながらの講演

新地氏はコミュニティに必要な3要素として、「共通の目的」「信頼関係」「関わり合う場」を挙げました。目的を明確にし、大きな目標に対して同じ方向を向いているという共通認識を持つこと、大人数の中であっても心を開いて話せる人が1人でもいることで、居心地の良さが生まれること、そして最も重要なのが継続してつながる場の設計です。希薄な関係性を防ぐために、定期的に会う場所やオープンチャットなどが必要だと語りました。

さらに、コミュニティには「内向き」と「外向き」があり、高い帰属意識を持つ一方で外部を排除しがちな「内向き」に対し、異なる文化や価値観を取り込み、影響範囲を広げるのが「外向き」です。新地氏は、後者のようなオープンな場が求められていると語りました。

「リーダーの考えで組織が大きく変わることもあります。対話を通じてコミュニティを客観視することは大切です」と新地氏。さらに「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」にも触れ、ブラインドサッカーの体験談から「話す・傾聴する」ことのバランスの重要性を語りました。Web3プロジェクトでも、顔の見えないオンライン交流を続けた後にオフラインで会うと一気に親密になるという、視覚情報に頼らないコミュニケーションの重要性を説きました。

最後に、参加者同士で共通点を見つけるワークが行われました。「朝ごはんはパン派」「社交性を身につけたい」といったほかに、「バナナアレルギー」という意外な共通項を見つけたグループには新地氏も絶賛。会場からも温かい拍手が起こりました。新地氏は最後に、「サマーカレッジも一つのコミュニティ」であり、参加できなかった人々への思いやりも忘れずに、今後の行動が大切だと締めくくりました。

質疑応答では、「模造品は企業の利益を損なうのでは」との問いに、「だからこそ技術革新を止めず、良い製品を作り続ける必要がある」と回答。「価値観が異なるメンバーとの向き合い方」には、「集まりたいという思いが根底にあることが重要」と語り、「地域の内向きなコミュニティにどう入るか」については、「対話しかない。地域への思いを根気強く伝えることが大切」と、自身の経験を交えて答えました。

講演5‐2 「人と人を繋げる 「仕組み」づくり」 田邊智哉子氏

image_event_20250813.004.jpeg田邊智哉子氏

「ずっと座っていると体が痛くないですか?まずは立ち上がって伸びをしてみましょう」 そう語りかけたのは、3×3Lab Futureでネットワークコーディネーターとして活躍する田邊智哉子氏。社会課題の解決に情熱を持つ人々をつなぐ仕事の魅力と、コミュニティにおける関わり方について語りました。

原点は、美大生時代に参加したまちづくりプロジェクト。地域に住む方々との交流を通じて「こういうことを仕事にできたらいいな」と思い、周囲に自分の思いを語るうちに、長野県小布施市で地域活性化に取り組むセーラ・マリ・カミングス氏の存在を知ります。直接電話をかけて会いに行ったところ、あっという間に住み込みが決まり、小布施堂文化事業部に所属し、「小布施ッション」や「小布施見にマラソン」等のイベント運営に携わった経験がキャリアの第一歩となりました。

「やりたいことや心に秘めた思いを、思い切って声に出して伝え続けることで、手を差し伸べてくれる人がきっと現れます。もし『これをやってみたい!』という思いがあるなら、勇気を出して周りに伝えてみてください」

その後、ヨシモトポール株式会社で、ブランディングの一環としてロゴや会社案内のデザイン、社史編纂に携わり、社員に会社の思いやブランドの価値を伝えるインナーブランディングに従事。会社がエコッツェリア協会の法人会員であったことをきっかけに3×3Lab Futureに出会い、年齢や立場を越えて人々がフラットに交流する場に衝撃を受け、「ここで働きたい」と思ったといいます。

田邊氏は「家庭や学校、塾など皆さんはどんなコミュニティに所属し、どれくらいの割合で関わっていますか」と会場に呼びかけました。多様なコミュニティと関わることで生き方や考え方の選択肢が広がると語り、「役割が欲しい」「そっと観察したい」といった、コミュニティへの関わり方の違いも尊重されるべきだと話します。

image_event_20250813.005.jpeg

ネットワークコーディネーターとして大切にしているのは「聞く」「確かめる」「観察する」の3点。相手の話を深く理解するために質問を重ね、状況を見て関係性を読み取る力が求められます。さらに、「接点作り」と「熱量のバロメーター」にも気を配っているそうです。少し遠くから眺めながら、目の前の人たちをどのような切り口でつなげるかを考える。「出身地が同じ」「共通の趣味がある」などの切り口から太い絆へと発展することもあるといいます。

また、関心のあるテーマに加えて、同じくらいの熱量を持って取り組んでいる人同士をつなぐことが重要で、熱量のバロメーターが同じであれば、分野を越えた強固な関係性が生まれるといいます。

今後は、働く場所と暮らす場所の境界が曖昧になる中で、コミュニケーターの役割はますます重要になるとし、ネットワークやコミュニティの社会的価値を高めていきたいと展望を語りました。「みんながコミュニティマネージャー」という3×3Lab Futureの理念のもと、誰もが関われる場づくりを目指しています。

学生たちからの「日頃どのように繋がりをつくっているのか知りたい」という問いには、3×3Lab Futureの個人会員さんを観察し、話しかけやすいタイミングを見極めながら、それぞれの思いや活動の中で、お互いが関心を持てそうな点を探してつないでいると答えます。セーラ氏に会いに小布施に行った際「どうして失敗を恐れずに飛び込めたのか」という質問には、「大学院か、就職かの決断を迫られる切羽詰まった状況の中で、ようやくやりたいことを見つけることができたこともあり、自分でも信じられないくらいのエネルギーで行動できた」と回答。当時のポートフォリオには、作品に加え、日曜学校で子どもたちと学び遊んだ活動の様子も詰め込んでいたと振り返ります。また、「中々心を開いてくれない方には、活動領域が近い会員さんをご紹介することで相互理解が深まり、コミュニティへの信頼感を育む第一歩につながっています。日頃から会員の皆さんには助けていただいており、コミュニティメンバーとコミュニティマネージャーの間にも、相互補完的な良い関係が築けていると感じています」と語りました。

image_event_20250813.006.jpeg新地氏と田邊氏のクロストーク

クロストークでは、司会の田口から「アイスブレイクで、硬かった場の空気が変わりました。場を和ませることを意識されていたのでは」と水を向けられると、新地氏は「大事にしているのは『思いやり』という言葉。小学生のときに校長先生から『話す相手が何を考えているのかを考えなさい』といわれ、一生懸命考えました」と答えました。田邊氏も「最終発表を控えた学生の緊張を和らげるよう意識しました」と話しました。

最後に、新地氏は「弱みを知っている人ほど親友になれる。臆せずチャレンジしてみてください」、田邊氏は「皆さんにも3×3Lab Futureの学生会員として、一緒にコミュニティを盛り上げるコミュニケーターになってほしいです。気軽に声を掛けくださいね」と、サマーカレッジ後も続くつながりを見据えたエールを送りました。

ワークショップ2 発表準備  ワークショップ3 発表

最終日の午後、会場は発表に向けた熱気に包まれていました。昼食をとりながら予定を立てるチーム、模造紙に分担して書き込むチーム、プリントしたイラストを貼り工夫を凝らすチームなど、どのチームもラストスパートに全力を注いでいました。2日目に共有したアイデアをもとに、各自の得意分野を活かして提案内容を構築。「コンセプトは先に決まったけれど、細かいところをもう一度考えたい」「模造紙が2枚になってもいいですか」「色鉛筆やクレヨンはありますか」――リハーサルの声も飛び交い、細部までこだわる姿勢が印象的でした。

image_event_20250815_2.001.jpeg最後まであきらめずに取り組む

発表順はくじ引きで決定。各チームは未来に向けた多様なテーマを掲げ、4分間のプレゼンテーションに挑みました。登壇者はスクリーンに映し出され、緊張の中にも自信を持って言葉を紡ぎます。

image_event_20250813.007.jpegチームの発表順を決めるくじ引き

以下はそれぞれのチームのテーマです

K よりみ家(よりみち)
A SENTO the CHAOS
C AIと人間で漫才をする!?
N わすれ森
G 自分で自分を好きになる
F GBP
L 自分全開
D 一人一人がやりたいことを見つけられる未来
B あなたの輝く場所診断
J 感謝から始まる幸せの循環
I 食×発信
G Smile
E GOTO寺子屋公民館
H まちが子どもを育てる「秘密基地マップ」

image_event_20250815_2.002.jpeg緊張しながらも、テーマ「創りたい未来に向けて『わたし』ができること」を発表する学生たち

地方の教育格差を減らしたい、社会人が仕事を忘れて自分らしさを取り戻せる都会の宿泊施設を提供したい、地域密着型のコミュニティスペースをつくりたい、銭湯をハブにした交流の場をつくりたい、食に関する発信を行いたい、人と地域のつながりを増やすアプリをつくりたい、AIと人間の共存をしたい――。

講評には、三重大学大学院工学研究科建築学専攻准教授・東京大学先端科学技術研究センター 准教授の近藤早映氏、MYSH株式会社 代表取締役CEO 向井裕人氏を迎えました。発表を受け止め、良い点・伸ばせる点、さらに工夫できる点などをアドバイスいただきます。近藤氏には都市計画の研究やまちづくりの知見を、向井氏は奈良・福島で地方創生やコミュニティづくりに取り組む経験も踏まえて講評いただきました。

「ビジネスにするとしたらどのように収益を得るか」「ターゲットは誰か」等様々な角度から学生に問いかけ、参加者たちに気づきを促します。講評のお二人も、「自分ごと」としての提案だからこそ、さらに深い思いを聞き出そうとしていました。

image_event_20250815_2.003.jpeg 左:近藤早映氏
右:向井裕人氏

「やってみる、行動する、をポイントにフィードバックしたので、抽象度が高いものについては少し厳しい意見になってしまったかもしれません。まずは一歩だけでも踏み出しましょう。また、今回の発表はみんなの意見を聞いて補い合うもの。チームとしてテーマに向き合うことができたのは良い経験です」(向井氏)

「全体的に提案が地に足がついており、皆さんの自分ごとになっているのがとても嬉しかったです。思考の変化が起きているからではないでしょうか。このまま変化を止めず、自己肯定していければ、日本も変わるはずです。また、研究者の立場からは、提案を実現するにはエビデンスが必要。ぜひリサーチにも取り組んでもらえると心強いです」(近藤氏)

初日に講演いただいた長岡氏も駆けつけ、「これからの時代は"好きだからやる"という内発的動機付けが重要になると思います。また、"与える人"になる利他性の心も大切です。まず自分の周り半径1メートルから変えていきましょう」とエールを送りました。

司会の田口も「主体が明確で、自分ごととしての提案ばかり。全員が前に出て発表したことも素晴らしい」とコメント。この場が仲間を増やし、未来をつくるきっかけになることを願って締めくくられました。

プログラム終了後も、連絡先を交換したり講師に質問をしたりと、交流は続きます。新しい価値観に触れ、自分で考え、発信するという経験を通して、参加者一人ひとりが一歩を踏み出すことができた最終日となりました。

「まず踏み出す」行動ができた学生の皆さんからは「とても貴重な経験でした」「刺激をうけました」という声が寄せられ、これからのチャレンジに向けたエネルギーを感じました。今後の活躍に期待が高まります。

image_event_20250815_2.004.jpegプログラム終了後も参加者は交流を楽しんだ

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