ワーキンググループ地球大学 Committee・レポート

【地球大学Eating Design Committee】住空間から考える Eating Design〜リビングの未来を考えるワーキンググループ

2014年2月24日(月)開催

2013年度第4回地球大学Eating Design Committeeが、2月24日(月)に3×3Laboで開催されました。今回は、住空間から考えるEating Designをテーマに、ファシリテーターに竹村真一氏(京都造形芸術大学教授)、ゲストに三浦正嗣氏(株式会社LIXIL)、能重正規氏(キリン株式会社 キリン食生活文化研究所)、浦はつみ氏(パナソニック株式会社)、金子孝幸氏(企業間フューチャーセンター)を迎え行われました。

はじめに、竹村氏(京都造形芸術大学教授)より、「Eating Designとは、食べ物、食べる側の文化、キッチンや住空間の在り方、身体の中のデザインも含まれます。3年以内にEating Design Museumを実現するため、来年度から本格的な稼働を踏まえた地球大学がスタートしていきますが、今回は、キッチン、住空間の在り方という視点からEating Designを考え、共有し議論していきたい」と話されました。

新しい企業間コラボレーションとは〜金子孝幸氏(企業間フューチャーセンター)

パーソナルデバイスの普及、通信の常時接続の影響で、個人化、孤独化が進み社会環境が劇的に変化。それに伴い、人との関わり方、ライフスタイル、価値観も変化していると言います。食、キッチン、リビング、家などのあるべき未来を検討し、製品やサービスを変化・向上させいく必要があると話されました。
従来、特許や技術などをベースとして目的が合う場合に、企業間でのコラボレーションを進めていました。ただ、これは難易度が高く実現するのが難しいと言います。従来の企業間コラボレーションとは違い、"食"という共通の関心事を中心に、各方面のプロフェッショナルが集まるワークショップを展開することが、世の中で抱えている課題の理解、そして新たな気づきに繋がる実現性の高いものとしてとても意味のあるものだと話されました。

住むこと・暮らすことを考える〜三浦正嗣氏(株式会社LIXIL)

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地球大学Eating Design Committeeでは、新しい切り口で考えさせられる機会を得られたと言います。企業間ワークショップでの気づきを通じて、「住宅」は「住むこと」、「家」は「暮らすこと」と、思考プロセスを転換するまでに変化。「喰らう、教える、環境」などを重要な視点とし、新しい価値創造を視野に入れた商品技術開発に動き出しているそうです。お客様へ提供する価値を研究者自身が確信を持てるようになったことも大きな変化のひとつだと言います。その結果、「暮らしを育てる」ことへのアプローチに至っています。
また、変化は個人にも起こりました。手にとる本が研究、技術の専門書から今では、デザインや人との繋がり、シェアなどをキーワードに持つ本へも関心が向くようになったそうです。

わくわくの食体験をデザインする〜能重正規氏(キリン株式会社 キリン食生活文化研究所)

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「『飲みもの』を進化させることで、『みんなの日常』をあたらしくしていく」をブランドの約束とされています。この中の「みんなの日常」を明らかにしていく役割を担っているのが食文化研究所。大きく分けて2つ、「飲食をとりまく生活文化に関する多面的な調査・研究を通して、生活者や社会の変化を捉える」「食の未来に向けたライフスタイルやキリングループの貢献のあり方をお客様や従業員と共に考え創る」を行われています。また、Eating Design Museumのメンバーと「リビングの未来研究会」を発足し、「リビング=生活」と捉えたことで、多くの共通する関心事があることに気づきを得たそうです。そこから抽出した食の価値には「味を堪能する」「食事の時間と空間を楽しむ」「身近な人とのコミュニケーションを楽しむ」の3つがあります。これらは、社内で抽出した価値と比べても、同等のものであると感じ、人の飲食に対する本質を突いていたのだろうという気づきにもなったそうです。
食の価値をリデザインすることで、「お客様の『わくわく』の食体験をデザイン」していきたいと話されました。

食生活を360°視点から考える〜浦はつみ氏(パナソニック株式会社)

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昨年、新商品の企画チームに異動したことをきっかけに、食に関する生活行為の探求の必要性を強く感じたそうです。そこで、「調理」「保存」「片付け」を含めた「食を360°俯瞰する食の曼荼羅」を考案。家電メーカーは機能競争に走る傾向があり、この「調理」「保存」「片付け」について、ワーキンググループで共有し、多くの意見を得られたそうです。異業種でも、同じような意見や違う観点からの意見が気づきに繋がったのだと言います。何よりも価値を立証できたことが、非常に大きな収穫だったと話します。
日本食の文化、出汁、発酵食品、一汁三菜などを家電と絡め、パナソニックが提案する食は、「身体に美味しく心豊かな食」であると自信を持って提案していけることが大きな変化ですと話されました。

異業種ワーキンググループの可能性〜金子孝幸氏(企業間フューチャーセンター)

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日本企業の閉塞感を感じる原因には、時代が大きく変化しているときに、企業が共に変化できなかったことがあげられると言います。そのため、迅速な判断や柔軟性、フラット化、ダイバーシティなどが今求められています。では、今後どういう未来が必要なのかを考えたとき、業界横断の協業が不可欠であり、ワークからジョブへの意識変化のもと、「価値を創出する」ところに業務のニーズがあると話されました。
生活者の価値を見つけ、それを中心にどのように価値を付けていくのか。付加価値を出す創造性のある仕事が求められてくると言います。製造メーカーとしての「モノ軸」からサービス側の「コト軸」の発想を取り入れていかなければいけないとの気づきがあったそうです。
課題を明確にする問いは簡単にはつくり出せません。その提供が行われていたのが、自由な発想ができるこの場だと言います。すべては、未来を良くするために、「人に喜んでもらいたい」、「人の役に立ちたい」という想いを対話で引き出すことが大切であると話されました。

プレゼンテーション後には、ワーキンググループの活動を通じたさまざまな気づきの共有がされました。

・参加企業の方々は、一度アイデアができてしまえば、素晴らしいスピードで形にしていけるツールがある。こういう場で、様々な制約のある環境におかれる方たちのライフスタイルを考えていけたなら、それが新しい価値の創出になり、それでこそグローバルである。
・オープンにアイデアを出し合ったわけですから、開発も共にオープンに行えたら、スムーズに素晴らしいモノができあがるのではないかと思う。
・会を重ねるごとに、ポストイットに書くアイデア量が増えていったことが、非常に印象的。 ・課題を明確化し共有することで、新しいサービスやビジネスをつくる肝になると思う。「この課題を解決するんだ」というものを掴んで、方向を決めていきたい。
・大企業というのは得てして閉塞感が付き纏い、プロジェクトの説得に、平気で1年を要する。器や仕組みをつくったとしても、最後は力強い意思と行動力をもった人なのだと思う。
・このプロセスで得た気づきや発見は、生活者にも知ってほしい。商品をリリースする時なり、背景のストーリーも伝えていくことで、価値を分かってもらえるのだと思う。

さいごに竹村氏より、まだまだ人間のポテンシャルは本番を迎えていないと、結びがありました。
「人間という地球最大の資産。その価値を高めていくことが中核になる時代が、そろそろ来ていいのではないか。この例えは抽象的であり、自分との関係性は見出しにくいが、その間を埋めるのが「食」というテーマではないか。人間の価値を高めていくことがCSV(Creating Shared Value)としても重要であり、ポテンシャルを解放するのが食であると思います。そして、リビングの未来を中核の一つにし、それを補う別の柱を考え、来年度を迎えたい」とまとめられました。

地球大学 Committee

21世紀の新たな地球観を提示

科学研究の最前線を交えながら、地球環境のさまざまな問題や解決策についてトータルに学び、21世紀の新たな地球観を提示していきます。 2013年度からは「食」をテーマにした委員会『Eating Design Committee』を立ち上げ、新たな社会デザインを目指します。

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