ワーキンググループCSRイノベーションワーキング・レポート

【CSRイノベーション】東北復興支援から見える課題と解決に向けて

2014年5月30日(金)開催

エコッツェリア会員企業を中心に、CSRについて学び、CSVを目指し、学びから実践に向けたアクションづくりを行うCSRイノベーションワーキンググループ(以下CSRIWG)。2014年度第1回フィールドワークが、5月30日(金)NEC本社ビルで開催され、18名が参加しました。NECグループの社会貢献の取り組みや東北支援の活動、そしてNECから復興庁へ出向された山本啓一朗氏(日本電気株式会社 コーポレートコミュニケーション部 CSR・社会貢献室)に協力いただき、東北復興の課題と解決に向けた示唆に富んだ講演が行われました。

東北復興支援活動「TOMONIプロジェクト」

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はじめに池田俊一氏(日本電気株式会社コーポレートコミュニケーション部  CSR・社会貢献室 マネージャー)による講演です。東北復興支援活動TOMONIプロジェクトについて、基本方針から実証段階に至っている活動まで、紹介がありました。

NECグループでは、東北復興支援活動を「TOMONIプロジェクト」とし、2011年7月にスタート。復興支援推進室を2011年11月に設置し活動しています。
東北復興支援活動における基本方針は、被災地の方と思いをひとつに、被災地の方の視点に立って、復興支援を継続的に行っていくことです。
これは、経営資源の有効活用をし、社会的弱者にフォーカスした活動を目指し、グループ300社で連携。さらに、早くから被災地に入って活動しているNPO・NGOとタイアップすることで、より有効な活動が出来ています。

CSRとして、若い起業家を支援する社会起業塾の実施、他にもプロボノ活動(業務で培ったスキルをNPO支援に繋げていく活動)による被災地復興に取り組む団体の支援や、子ども向けのプログラムを被災地の学校で実施。NECの持つ玉川吹奏楽団によるチャリティーコンサートやスポーツチーム、将棋部による教室も開催しています。
昨年6月にCSRIWGで訪問したNECネッツエスアイが設置した、ひまわりハウス(岩手県陸前高田市竹駒町にある、復興の主役となる地元の方と共に、新しいビジネスモデルを創造するコワーキングスペース)で実施した、子育てママのためのIT講習も活動のひとつです。 そして社員による被災地でのボランティア活動も展開し、これまでに1,300名以上の社員が参加しています。当初は瓦礫撤去からはじまり、そこから産業復興、雇用の創出がニーズになり、現在は青空テント市の支援を中心に、ハーブガーデン作りや三井住友海上火災保険株式会社と連携した田んぼ作りも行っています。

ビジネス面では、実証段階に至っている活動を紹介されました。
ひとつは、地上デジタルテレビ活用のコミュニティ形成支援システムです。仮設住宅の方に情報がなかなか届かないという現状を、コミュニティFMのテレビ版として、空きチャンネルを活用した地域密着型のチャンネルを開設しています。
また株式会社GRAと共に先駆的な技術を使い、イチゴの栽培を通じて東北の農業活性化への貢献もしています。イチゴの栽培は東北に限らず、インドにも波及し、インドでのBOPプロジェクトとしても行っています。就労支援、雇用の創出にも繋がり、富裕層に販売していくことでお金の循環が生まれ、スマートビレッジをつくっていくことができる。NECはその過程で技術、ITの部分で協力しており、社会課題に対しソーシャルビジネスを通じて解決する、CSVモデルへの足がかり的取り組みをしています。

企業だからできるコト〜地域復興マッチング「結の場」

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つづいて山本氏による講演です。
2011年5月、できることをやれるだけやるという想いで復興支援の団体「プロジェクト結コンソーシアム」を仲間とプロボノで立ち上げ、石巻を中心に遊びと学びを通じた子どもの心のケアを展開した山本氏。その後、NECの復興支援推進室の立ち上げに参画し、2012年3月に復興庁宮城復興局へ出向。その動きの中で、「復興とは元に戻すのではなく、まちを創ること」という考えに行き着きます。

山本氏は復興庁に出向中、被災地域の復興を加速するため、地元経済の課題の深堀とそれを解決するための支援、シーズの発掘、及び具体的な支援活動のマッチングを行う場として地域復興マッチング「結の場」事業を立案。2012年に立ち上げ、現在は108社の企業が参加、プロジェクトの創出は50件以上に成長しています。

震災後、グループ化補助金という柔軟な制度の活用により、ハード面での復興が進む環境は整っていたものの、現実には、被災地の企業が営業を再開するまでの間、各産業は輸入に頼ったり、他の地方に分散していく現象が起こります。
新たに販路を確保する為には、被災企業と共に何をするか考え、共に活動してくれる人材が必要です。そこで首都圏企業のリソースを活かそうと、企業の復興支援部署やCSR部門を束ねる胴元として始めたのが「結の場」だそうです。

山本氏はまず、結の場で企業内資源を活用した被災企業の経営力・競争力の強化を目指すため、参加企業には、豊富な経営資源を活用してもらい、机上の空論ではなく、OJT(On the Job T raining)で被災企業とプロジェクトが共に走る仕組みにしました。

つぎは、地域復興を牽引するコミュニティの形成と拡大を目指します。第一陣には、周りにも目を向けられるトップダウン型の牽引者になってもらい、二陣、三陣が続き、持続的に発展し続ける地域経済の実現を目指します。経営力の強化をひとつの目的としているので、業種は関係ありません。お互いの役割を見出して行くことを主に活動しています。
これらを行う方法として結の場では、対話の場を設け、ニーズとシーズの仕分けを事前に行い、前提条件を作り、ワークショップ型でのダイアログを行います。整理することで課題が明確になり、被災地の方も一歩踏み込んだ話しができる環境をつくることができます。

企業が結の場に参加することで得られるメリットは、大きく分けて3つあると山本氏は言います。
1つ目は、被災地の方とプロジェクトを行うことで、復興への真の課題が見えてきます。課題解決に向け、新たなビジネスモデルやマーケットの創出に繋がる、中長期戦略となります。
2つ目は、復興という社会課題解決に向けた活動で、若手人材が経験を積める場となり、次世代を担うリーダー人材の発掘、育成に繋がります。
3つ目は、さまざまな企業と復興に向けて連携、活動することで企業の社会的責任を体現する機会になります。

例えば気仙沼は、サメの水揚げ量日本一を誇っていましたが、さまざまな問題から、サメ産業の発展が厳しい状態にあります。そこで、フカヒレ以外の低利用部位で新しい商品を生み出せないかと、各企業の得意分野で協力していただき、サメ食文化を創る取組を行っているそうです。また、サメに限らず、気仙沼や石巻の水産品を対象に、参加企業の本社ビル等(首都圏)で社内マルシェを開催し定期的に販売することで普及に努め、継続性のある活動になっています。

結の場が一定の成果を出し始めていることで山本氏は、「人の偏在化」の改善に取り組むことが、効果を生むのではないかと言います。 人材が都市部に集中し、地方で震災が起こった結果、現地で復興に取り組む人材が確保できていない。そこで如何に平時から都市部と地方を繋げるか、さまざまな取り組みによりその架け橋が出来つつあります。
都会のリソースを地方に有機的に分散させ、地方の資源や課題を企業とマッチングさせる仕組みの一つとして、「結の場」を活用することがイノベーションになり、持続的に発展する地域社会形成に繋がる。有事の時だけでなく恒常的に回せる仕組みをつくり、分散させたリソースそれぞれが機能を担えるように、地方に人材が留まれる仕組みをつくることが、有事への備えにもなるのではないかと話されました。

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講演後はテーブルごとに意見交換が行われ、まち創りや現状の企業による東北支援、人の偏在化への見解などさまざまな気づきが全体で共有されました。

山本氏の経験談から、企業間だけでなく業態を超えたつながりの大切さ、そして復興に関わることで一個人としての成長にも寄与する可能性を大きく感じられた会となりました。

CSRイノベーションワーキング

未来を想像し、次の時代のCSRを実施し、体感する

エコッツェリア会員企業を中心に、CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)について学びあいます。さらには、CSV(Creating Shared Value:共通価値の創造)をめざし、学びから実践に向けたアクションづくりを行います。

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