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【CSRWG】日比谷アメニス「つなげる・つながる 現場CSR」

2015年1月29日開催

造園建設の仕事と、聞きなれない "現場CSR"って何!?

1月29日、「CSRイノベーションワーキング」が3×3Laboで開かれました。今回は、造園建設業の日比谷アメニスの現場からの報告で、テーマは「つなげる・つながる 現場CSR」。「現場CSR」という耳慣れない言葉に始まる前から参加者は興味津々。いつにない熱気でワークショップは始まりました。

イイね!カード本日の進行役・ファシリテーターを務めるのは臼井清氏(志事創造社)。参加者には「イイね!」カードが配布されています。プレゼンテーションの途中で「イイね!」と思ったときにスピーカーに示すもので、プレゼンを盛り上げるとともに、参加者の意識も高めてくれます。日比谷アメニスの発表に加え、本日もテーマに迫るためのワークショップも行われ、熱の入ったトークセッションが行われました。

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「イイね!」連発の地域密着型の造園建設業&現場CSR

「イイね!」連発の地域密着型の造園建設業&現場CSR

大手町川端緑道の路面下にはこんなコードが張り巡らされている(プレゼン資料より抜粋 ※日比谷アメニス提供)

日比谷アメニスは日比谷花壇グループに属しており、造園施工を生業としている会社です。設立は1971年、当時の社名は「株式会社日比谷花壇造園土木」だったそう。今から24年ほど前にCI(Corporate Identity)の一環で現在の「日比谷アメニス」と社名変更が行われ、現在に至っています。その日比谷アメニスのCSRプロジェクトは2009年に立ち上がり、発足時から現在に至るまで若手中心に活動が行われているということです。この日の発表もプロジェクトメンバーを中心に3人。あまり知られていない造園建設業の仕事と、その現場で行われている地域活動の実際が紹介されました。

プレゼンは3部構成でした。冒頭の会社紹介と造園建設業の実際の仕事についての解説は、工事三部部長の落合氏です。

落合氏日比谷アメニスの"アメニス"は、Amenity Scape Creation(=快適空間の創造」」」」を略したもの。ここに会社の理念があり、造園という仕事を通して、実現しているという説明では、参加者からは、「イイね!」カードが挙がりました。「イイね!」カードは、左右10cm、縦15cmほどの大きさで、細い木の柄がついています。口を開かなくても意思を伝えられるので、発表の席では効果を発揮します。造園という仕事は、植物だけを相手にしていると思われがちですが、景観づくりに取り組む仕事であるという説明では、参加者の注視を集め、会場のあちこちで「イイね!」が連続で挙がります。

施工例として紹介されたのは、「大手町川端緑道」。緑道のメイン構成要素である石張舗装の下には網の目のように電気配線が施され、夜間には目地に設置されたライトが路面をライトアップする仕組み。この仕組みが映像で示されると、参加者から「すごい!」の声とともに、再び「イイね!」カードがたくさん挙げられました。

皇居周辺の施工では、ときに地中から歴史的な遺構が出土することもあり、その苦労話では、施工業者の揺れる思いも。大手町の緑道施工のときも地中から江戸期の石垣が出土しました。当然行政に届け、その調査に現場を委ねたということですが、施工する立場からすると、こうした遺物の出土は工事を遅らせる原因になるので、少々困るという本音も。笑いを誘うような説明には、参加者からは思わず「イイね!」が飛び出していました。

こうした具体例をもとに、発表はまとめに入ります。造園建設業の仕事のなかで同社が目指すものとは、"トータル・ランドスケープ"、つまり街づくりのなかで建物や道路はゼネコンの仕事になりますが、その周囲を取り巻く空間全体を快適にするのが「造園の仕事」なのです。公園であったり、緑地であったり、さまざまな場所で、快適空間をつくり出しているという説明には、さらに「イイね!」が挙がりました。

そして、その空間は残るもの。自分の子どもたちにも「ここは、お父さんがつくったんだよ」と自慢できる場所。そのときの子どもの反応を見るのも楽しいそうです。大手ゼネコンがキャッチフレーズにしている「地図に残る仕事」や「子どもたちに誇れる仕事」に匹敵する仕事。胸を張る落合氏の発表には、最高潮の「イイね!」が挙がりました。

参加者も驚嘆!! 認識を改めた造園建設の役割と現場CSR

近隣住民と交流を持つ「現場CSR」ではこんな心温まる風景も。(プレゼン資料より抜粋 ※日比谷アメニス提供)

続いて、具体的な造園施工の事例とそこで行われた「現場CSR」の発表がありました。

三間氏「現場CSR」というのは、「現場における社会貢献」であり、「地域住民との交流など人と人とのつながりを醸成する活動」と話すのは、2人目のプレゼンターの三間氏。具体的には、施工現場での見学会や交流会を行うのが現場CSRの主な中身です。三間氏は地域の人に「工事現場を見てほしい」といつも思っているそうです。実は、施工現場近くに住む人たちも「現場を見たい」と思う人が多いのだそう。日ごろ壁で遮られた工事現場では何が行われているのか、誰しもが気になるところではないでしょうか。こうした地域住民の好奇心も手伝って、三間氏らが催す施工現場のイベントには多くの人が集まり、現場見学会は大人気なのだとか。

この日最初に紹介されたのは、東京の足立区で行われた団地の建て替え工事での催し。工事は団地住人の住むすぐそばで行なわれるので、騒音対策にはひときわ配慮がなされますが、迷惑をかけたお詫びと工事に対する協力のお礼もかねて、催しでは庭木相談や植樹体験などを行ったそう。目黒区の大橋ジャンクションの「目黒天空庭園」の施工現場では、「造園工事のすごさを世間に知ってもらいたい」「家族にすごいものを作っているんだと自慢したい」「関係者・近隣住民の知りたいと言う意欲を満たす」という3つの目的で参加型のイベントを多数開催。大橋ジャンクションは首都高速の一大プロジェクトであり、開通時には大きなニュースにもなっています。完成した庭園の上空写真がプロジェクタに映し出されると、参加者からは「イイね!」が連発。地域住民を集めて工事の途中経過を公開したのはまさに、「工事の途中を見てみたい」という住民感情に応えたものでした。最終的にきれいに整った庭園の完成図が映し出されると、その美しい景観に対し、さらに数多い「イイね!」が挙がっていました。

このほかにも工事中しか見ることのできない地中の防災施設の様子を見てもらう見学会や、作った公園の維持管理を近隣の住民のみなさんにやっていただくよう気づきを促すイベントなどの例も発表されました。

現場CSRとは、このように "工事現場"で行うCSR活動を指すものです。施工業者側にとっては近隣の住民との交流が生まれ、「みなさんの笑顔を見ること」ができ、それが「働く意欲、やりがいにつながっていく」と三間氏。近隣住民にとっても、現場の内情を知ることができ、造園という仕事をより身近に感じてもらうきっかけにもなります。「造園というのは、アチラ側とコチラ側(内と外)をつなぐ庭を作り、人と人をつなぐ場を作るということ。そしてその場は、世代を超えて受け継がれていくので、過去から現在、そして未来をつなぐ仕事なのだと思う」と三間氏は言います。

また、こうした現場CSRは、「企業としては、評価が上がり受注機会を増やすという"腹黒い"思惑もある」。しかし、それはサステナブルなCSRを行うためには必須のことであり、CSV的観点とも言えるでしょう。

こうした現場CSRのまとめとして、三間氏は「日比谷アメニスの現場CSRは、"園"を造り、"縁"を生み出し、それが"円"につながっていくもの」とキレイにまとめてプレゼンを終えました。このくだりは発表当日の朝思いついてアドリブで入れたそうですが、この一言にこの日最多の「イイね!」が挙げられました。

日比谷アメニスのCSR活動と今後のビジョン

日比谷アメニスの2014年CSRレポート「KININARU」

最後に登場したのは、進行役を務めていた環境エネルギー部の山田氏。プレゼン内容は、日比谷アメニスにおけるCSRのこれまでの活動の経緯についてです。

山田氏日比谷アメニスのCSRは2009年7月に若手中心のボトムアップで立ち上がり、部署を超えたプロジェクトの1つとして行われてきたということです。また、施工現場では、CSRという呼称をつける以前から"イメージアップ活動"と称した地域に対する活動が実施されていて、CSRの活動に位置づけられたのは、2010年10月頃。そのとき、現場で行われていたCSRということから「現場CSR」と呼ばれることになったことも紹介されました。そして、2011年12月からはCSRレポート「KININARU(キニナル)」を発行。このことで、社内外に活動の周知を図ることができるようになり、社内においては、CSR活動の共通認識が育つことに役立っているということです。

この『KININARU』の「KI」(キ)には、多くの意味が込められています。造園業での「木」「樹」とのかかわりはもとより、新しい事への気づきの「気」の意味も含まれていて、そのほかにキーワードの「key」や機会(チャンス)の「キ」など、さまざまな「KI」(キ)で活動の広がりがイメージされているようです。さらに、表紙には冊子が発行された年を代表する施工現場がイラストで描かれ、各年度の冊子を広げて表裏の表紙をつなげて見ると一つの絵になるようにデザインされています。印刷以外はすべて内部で制作しており、CSR活動に対する愛着が伝わってきます。

このほか、CSR活動がきっかけの1つとなり発足した「10年ビジョン」策定に向けたプロジェクトとその内容についても紹介されました。さらには、その「10年ビジョン」で策定されたコーポレートメッセージ『みどりと夢をみる』が現場CSRの思いと通じているということも伝えられました。

意識が変わる造園建設、地域住民の心に響く現場CSRの意味を知る参加者たち

発表の後はワークショップが行われました。発表の前後で「造園」「現場CSR」について、どのような認識の変化があったのか、気づきの共有を行いました。また、それだけでなく、日比谷アメニスが行っている現場CSRの中で、自分なら「こんなことをやりたい」「こういう視点があったほうがいい」など、新たな活動に結びつく意見を交換しあいました。
「造園業って、頭で汗かいてるんだな」
「"途中を見せる"という発想がすばらしい」
「見えないところに真実がある」
「地下にこそノウハウがある」
「社員のみなさんの夢、情熱にあふれる様子が伝わってくる」
という賛同の声。さらに、
「すばらしい取り組みですが、人だけでなく、他の生き物にも光をあててほしい」
など、発表者や参加者を唸らせる提案も飛び出しました。
最後に、発言を求められた発表者3人からは、「このプレゼンの成果を社内に還元し、私たちのCSR活動が社内でもっと認められるようにしていきたい」という決意が表明されました。

CSR活動は広まりつつあると言っても、まだまだ多くの人には認知されていないのではないでしょうか。それどころか会社の中でも、直接利益に結びつかない活動を認めようとしない人はたくさんいます。しかし、企業という組織の力を生活者のための環境整備や安心など、社会貢献に向けることは大きな意義があります。ただ、新しい取り組みはときに、大仰に考えがちで、間違った判断から失敗に終わることもあり、注意が必要です。この点で、日比谷アメニスが行っている現場CSRは、貴重なヒントを与えてくれます。施工現場という一般生活者との接点で自然に行われてきた活動が出発点。無理のないステップでCSR活動に結びついているところは、これからCSRに取り組もうと考えている企業にとっては、有益な情報となるのではないでしょうか。


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