第4回環境経営サロンが11月29日に開催され、44名が参加されました。
「ソニー・ピクチャーズ:環境への取り組み」と「ヤクルトの事業特性を活かした社会貢献活動 ~ヤクルトで人も地球も健康に~」について、両社よりのプレゼンテーションとディスカッションが展開されました。
【プレゼンテーション】
・ 『ソニー・ピクチャーズ:環境への取り組み』
平林美枝子氏(株式会社ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント コーポレート広報 バイス・プレジデント)
・ 『ヤクルトの事業特性を活かした社会貢献活動 ~ヤクルトで人も地球も健康に~』
木村一雅氏(株式会社ヤクルト本社 中央研究所副主席研究員(元研究所分析センター部長))
はじめに、田口真司氏(エコッツェリア協会)より「この場では、これまで29の事例発表によりかなり知見が高まってきていますが、今後は実践の部分が重要なテーマと捉えています。本日の後半も参加者の皆さまとのディスカッション時間を設けておりますが、アイディアを集約させ、新しい価値を創造していただきたいと考えています」と挨拶がありました。つづいて、小林光氏(慶応義塾大学教授・元環境事務次官)、竹ケ原啓介氏(株式会社日本政策投資銀行 環境・CSR部長)、水上武彦氏(株式会社クレアン コンサルタント)の挨拶で始まりました。
つぎに、ソニー・ピクチャーズ平林氏によるプレゼンテーション。エンタテインメント会社による、環境への取り組み事例です。
親会社のソニー・ピクチャーズでは、環境活動をサステナビリティ活動と置き換え、「世界をより良くして、次世代に引き継ぐ責任を担っていく」というミッションを持って、1990年より活動を展開しています。
まずは外部のNPO団体と共に、木を植えたり、映画で使ったセットを再利用したり、というところから始め、2001年にはハリウッドスタジオとして初めて、ISOを取得。現在は2020年に向けて目標を立て、取り組んでいます。
映画・番組製作の部分では、「グリーンフィルムメイキング」というものを義務づけ、具体的に活動しています。その内容は
1. 政策にあたり、カーボンフットプリントの計算結果の提出
2. 会社作成のエコチェックリストの提出
3. 車両アイドリング禁止
といったルール共有等です。
環境に対してこれだけ気を配っていることで、映像制作業界ならではのビジネスサイドのメリットもあるとか。取り組みに共感する優秀な監督、人気のある俳優が、このスタジオで仕事をしたいと思ってもらえ、作品づくりに活きているそうです。
一番力を入れているサステナビリティ活動は、「社員を巻き込む」こと。社員が自発的にエコ活動をするようになることで、会社が先導するより大きなインパクトが生めるという考えから。
コンテンツを通じて、社会へのメッセージを届ける取り組みもあります。映画・番組の小道具や台詞の中に、環境に配慮するメッセージを入れ込むことです。
ソニーグループとして2050年までに、環境負荷を0にするという目標があり、ソニー・ピクチャーズとしては、視聴者と一緒に、環境を考える機会を提示する、実践しようというモチベーションを関係者に与えることが、エンタテインメント会社として、ひとつの環境貢献になるのではないかとの哲学を、実践に反映しています。
日本でもグリーンプロジェクトを立ち上げ、社員にアイディアを募集し、実践しています。
「早く成果を出そうとするよりは、継続していくことを一番のプライオリティにして、定着した企業活動に持っていきたい。楽しくやることをスローガンに、よりグリーンな世界を目指して続けていきたい」と話されました。
そして、ヤクルト木村氏によるプレゼンテーション。
ヤクルトの企業理念は、「私たちは、生命科学の追究を基盤として、世界の人々の健康で楽しい生活作りに貢献します」というもので、その原点にはヤクルト創業者の「代田イズム」があります。
代田稔博士は、感染症が流行っていた当時、「予防医学」が重要であり、「健腸長寿」のために、「誰もが手に入れられる価格で」、腸を守る乳酸菌シロタ株を提供しよう、と考えていました。この考え方を「代田イズム」と呼び、今も受け継がれています。
ヤクルトでは生命科学の追究を基本に、さまざまな研究がされています。国内の多くの研究者との共同研究もされており、単に何かを作り出すということだけではなく、その意味を考えることを忘れずやられているそうです。
東京・国立にあるヤクルト中央研究所で行われている腸内細菌の研究は、腸の内容物の研究。腸内容物=「うんち」です。うんちの成分は、ほとんどが腸内細菌。食べ物のカスはほとんどないため、細菌の種類や働きを調べることが、腸を考えるには重要です。また、シンバイオティクス療法の研究も進められており、病院における手術後の感染症対策にも役立っています。
うんちと言えば、最近とくに学校ではトイレに行かないという、小学生が増えています。出前授業を小学校の総合学習としてされ、腸内の乳酸菌の働き、うんちの模型などを使い説明をしています。食べたら出る、出ることはとても大事なんだよ、と伝える。そしてそれが正しいことだと認知され、子どものころから腸内環境の重要性を認識できるよう、活動しています。
また、立体商標になっているヤクルトの容器は、浄化槽にも使われています。底を切り抜き筒状にした容器に微生物が住み着き、水をきれいにする。世界各国で使われており、東日本大震災の復興支援にも、この技術が活用された仮設診療所を作った際、診療所では屎尿処理が大変なため、浄化槽を寄贈して現地の方々に大変喜ばれました。
ヤクルトの宅配システムは、ヤクルトレディが届けてくれるわけですが、毎日お届けしていくことが、結果として一人暮らしの年配者の健康状態の確認にもつながる、「愛の訪問活動」を続ています。飲む価値だけでなく、売り方の価値を、企業として大事にしています。これも「代田イズム」の実践の一つであり、予防医学・健腸長寿の考え普及することで、自社なりの社会貢献をしていこうという事例になっています。
プレゼンテーション後のディスカッションでは、初めて参加された企業様を中心に発言され、新しい価値創造に繋がる議論が展開されました。
・ 参加企業、団体(50音順)エコッツェリアに集う企業の経営者層が集い、環境まちづくりを支える「環境経営」について、工夫や苦労を本音で語り合い、環境・CSRを経営戦略に組み込むヒントを共有する研究会です。議論後のワイガヤも大事にしています。