省エネ、節電という言葉を耳にしない日はないこのご時世にあって、家庭部門においてはCO2排出量が増加傾向にあることはご存じですか?
家庭部門とは、私たちが日常生活のなかで照明や冷暖房、電化製品の使用により排出するもの。ほぼすべての用途で増加傾向にあるとされています。
そんななか、その打開策として熱い注目を集めているのが、エコ住宅。リーディングプロジェクトとして、国土交通省の住宅・建築物 省CO2推進モデル事業にも選ばれた、パークハウス吉祥寺OIKOS(オイコス)を取材しました。
OIKOSとは、古代ギリシア語でecoの語源であり、集落や町、住む人のつながり、社会活動を意味します。一見すると1軒の大きなお屋敷のよう。一般的なマンションのイメージからはほど遠いこの物件の特徴は、その外観だけではありません。"足るを知る"をコンセプトとして掲げるこのマンションには、たくさんの最新省CO2技術を取り込みながら、マンション建設の定説を覆す、実験的なポイントが盛りだくさんなのでした。
マンションのチェックポイントとして必ず挙げられるのが、日当たり。当然南向きである、南側に窓やベランダがあることが重要視されるわけです。
通常のマンションは上下に同じ間取りが続くので、住宅の密集する東京では、たとえ南向きであっても、階数や向きによって、日照を十分に得ることができなかったり、周辺住宅からの視線が気になる部屋が生まれてしまいます。
そこで、この物件では、南向きに固執せず、部屋一つひとつに関して、日当たりや眺望、周辺環境との関係性に十分に考慮して、窓の配置や大きさを決めました。結果、外から見ると、広い壁面に対して不規則にポツポツと配置された窓。建築の世界では俗に「ポツ窓」と呼ばれるものですが、この全部で48個の「ポツ窓」をそれぞれ計算して配置することで、各住戸で十分な採光と眺めを確保したのです。
さらに、バルコニーに関しては、一番の目的を「洗濯物を干すこと」に絞りました。風とおしの良いバルコニーは洗濯機置き場のすぐそばに配置され、洗濯・物干しが効率的に出来るようにしてあるだけでなく、洗濯機置き場には部屋干しの出来るスペースも取ってあり、特に忙しい方々には嬉しい空間になっています。
この不規則に配置された「ポツ窓」とバルコニーが、この物件を1軒の大きなお屋敷に見せているのですね。
全9戸の物件なので、住民のニーズを考慮して、1つくらいは駐車場をつくっても良いのでは?という意見も設計の初期段階にはあったそうです。しかし、吉祥寺は自転車の街、街路を楽しむ生活を提案したいと、あえて駐車場を持たないという選択をしました。
武蔵野市にはコミュニティバス「ムーバス」など、車のない生活を支えるまちぐるみのしくみがあります。なるほどまちを歩いていても、本当に自転車だらけ。自家用車に頼らないライフスタイルを提案しやすい下地がこのまちにあったことも、この選択の大きな後押しとなったようです。
さて、通常であれば駐車場にあてられるこのスペースには、物件をぐるっと囲むようにウッドデッキを配置しました。このウッドデッキには、1F住戸用の専用庭、1戸2台という十分な駐輪場の機能のほか、住民同士の交流をはかる場として活用して欲しいとの想いも込められているそうです。
販売を開始してからこれまでのところ、駐車場がないということが購入のハードルになったお客様はいらっしゃらなかったとのこと。そもそも駐車場を住宅選びのうえで重要視される方はこの物件に初めから興味を持たないようです。また、現在入居されている方には、1人で複数台所有するほどの、自転車愛用者が多いのだとか。マンションが提案したライフスタイルは、多くのお客様に共感いただけたのですね。
そして、なにも外観だけが1軒の大きなお屋敷に見えるというわけではありません。空調に関しても1軒の家として捉えることで効率化をはかりました。
まず、外断熱工法。断熱材により建物全体を覆うことで、外気の影響を低減。外気に躯体がさらされることがないので、内断熱に比べて、夏でも冬でも快適な温度で安定するというメリットがあります。
結露から居室を守り、外的な要因による躯体の膨張収縮が抑えられるため、建物の高寿命化をも可能にしました。
一方で、躯体が断熱材の内側にあるということで、長期間留守にした際にはデメリットもあります。たとえば夏長期で留守にした場合、帰宅時には室温はかなり上がることになりますが、その時クーラーをつけても、躯体そのものが熱を帯びているためなかなか涼しくなりません。
このデメリットを解消してくれるのが、分譲物件で初めての採用となった、前田建設工業と東京電力が独自に開発した住戸セントラル式『床チャンバー型空調システム』。これは、住戸毎に床先行工法により生まれた床下空間へ冷気・暖気を吹きこみ、これが各部屋の床面のVAV(可変風量コントロールシステム)ユニットから放出されることで、一年を通じ安定した室温が可能となります。
実は内覧させていただいたのは、東京都は32.7℃と関東内陸を中心に記録的な猛暑に襲われた日。
しかもこの建物の共用部には空調設備がないにもかかわらず、建物のエントランスに入った途端、涼しいこと涼しいこと。更に住戸に入れば、どの部屋の床もひんやりとして本当に気持ちがいい。外は猛暑の中、一年を通して建物全体が快適な環境であることの素晴らしさを身をもって体験してきました。
このほか、太陽光発電システム、太陽熱利用給湯システム、断熱木製サッシュ(キマド株式会社製「スマートエコウィンドウ」)などなど、こだわりの省CO2技術を満載した結果、マンション全体で通常の一般的なマンションに比べて、年間13.3tのCO2削減を見込めるほか、各住戸の負担する水光熱費を大幅に削減できる見込みとのこと。
この物件を担当する三菱地所レジデンス株式会社の明嵐二朗さんは、「今後も住民の皆さんと協力して、省CO2効果だけであく、その住み心地といった数字では評価できない点まで、モニタリングしていきたい」と語ってくれました。
設計だけでなんと2年がかり!ということで、採算だけを考えれば実現できなかったこの意欲的な物件は、今年3月から入居がはじまったばかり。省CO2効果はもちろん、住宅からライフスタイルを提案するという試みの行方はどうなるのでしょう?ここから始まる集合住宅の未来に注目です。
所在地 :東京都武蔵野市中町2丁目2931-16(地番)・24番6号(住居表示)
交通 :JR中央線・総武線・京王井の頭線「吉祥寺」駅(改札口)より徒歩16分、
JR中央線・総武線「三鷹」駅(改札口)より徒歩11分
問い合わせ先 :「パークハウス吉祥寺OIKOS」
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